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愚者と悪魔の物語  作者: らいった
第2章後編  嫉妬と強欲
43/50

第12話  血の繋がり

「ウイングキャット・変異種ミュータントだと!?」


 マルトの腕の中で眠る翼が生えたオレンジ色の猫を見ながら俺は尋ねる。


「そうだよ。魂の磨耗のせいでケットシーから退化してしまったけど、君の血と混じりあい生まれ変わったあの時のケットシーさ」


 言いながら、腕の中の猫を撫でるマルト。それによりゆっくりと猫の目が開いていく。


「・・・・うにゃ?」


 まだ寝ぼけているのか瞼を瞬き小首を傾げながら、声をあげる猫。それを見てレナが叫びながらマルトに駆け寄り、腕から猫をひったくる。


「かわいすぎるでしょこの子!?何これ!?もう離したくないんだけど!?」


「にゃっ!?うにゃ~!?」


 レナが抱きしめ頬擦りをするせいで苦しそうにわめく猫。目は完璧に開いたようだが身動きが取れずに必死にもがいている。だが、レナががっちり捕まえているため一向に抜ける気配はない。


 そのまま5分ほどレナが堪能した後、ようやく解放された時には猫は疲れきりながら全力でレナから離れ、俺の後ろに隠れて威嚇していた。


「はは、どうやらレナさんは嫌われたようだね」


「えぇ~そんなことないよ!ね?猫ちゃん?」


 マルトの言葉を否定するように腕を猫に伸ばすレナ。だが、猫は威嚇し、何故か俺の頭によじ登る。耐えられない重さじゃないが、首が痛い。


「なんで私じゃなくてファウストの方に行くのよ~」


 ふくれながら捕まえようとするレナを俺の頭の上で逃げ回る猫。その光景にニーズヘッグが呟く。


『その猫はファウストと同じ血を持っているんだろう?ならファウストを仲間と認識してるのではないか?』


「そうだね。まぁレナさんへの態度は最初の接し方の問題だろうけど、ファウスト君になつくのは同じ血を持つからだと思うよ?実際〈特性〉〈血の繋がりブラッドリンク〉持ちだしね」


「〈血の繋がりブラッドリンク〉?」


 マルトが口にした聞き慣れない〈特性〉を聞き、俺は頭の上にいる猫のステータスを開く。まだ仲間になった訳ではないから開けないかと思ったが、すんなり開く。どうやら確かに仲間としてすでに認識されているらしい。




△▲△



race;ウイングキャット・変異種



Lv1

HP;30/30

MP;20/20



力 F

タフネス G

敏捷性 F

知力 G+(F+)



〈特性〉〈飛行〉〈血の繋がりブラッドリンク〉〈変異種の証〉



スキル ウイングエッジ



(称号)



・(血を継ぎしモノ)


ーーー〈特性〉〈血の繋がりブラッドリンク〉取得ーーー


(コメント)血は水よりも濃いんです。



・(変異せしモノ)


ーーー〈特性〉〈変異種の証〉取得ーーー


(コメント)普通の中でハブられる代わりに強くなるのは定番ですよね。




※ウイングエッジ・・・MP5消費で翼から衝撃波を放つ


※〈血の繋がり〉・・・同じ血を持つモノとの行動時、対象のステータス変化、取得経験値を同様に受ける


※〈変異種の証〉・・・レベルアップに必要な経験値20%減少、同種族との連携が出来なくなる




▽▼▽



 ケットシーから退化しただけあって、スライム並みに弱い。だが、2つの称号による〈特性〉は魅力的だった。これは俺の側にいる限り、称号による補正効果を常に受けることが出来る。つまり、異世界人の称号である(ディメンジョン・トラベラー)や〈翼龍化〉のステータス変化により、通常種より遥かに強くなると言うことだ。そして、早く進化出来るということはそれだけすぐ戦力になる。つまり、俺はこいつと行動した方が良いのだろう。


「なぁ、危険なことも多いがそれでもお前は俺と共に行動するか?」


「にゃあ!!」


 頭の上の猫に尋ねると元気の良い返事が帰ってくる。どうやら異存はないらしい。そんな様子を見ながらマルトがさらに空間から何かを取り出す。


「じゃあその子にレナさんのと同じ擬態効果を与える魔道具をあげよう。翼と体色をそれで隠せばただの猫として町に出るときも困らないしね」


 猫の首にレナと同じ首飾りをつけるマルト。それを見てレナは喜ぶ。


「わ~お揃いだ~!ありがとうマルトさん!!」


「いえいえ、これくらい容易いことだよ。・・・っとそうそう、それよりレナさん、フィーア君の使い勝手はどうだい?」


 思い出したようにマルトが尋ねる。


「いいよ!私にはピッタリだね!」


 そう言ってレナは背中に差してある二本の剣の内の一本を取り出し、鞘を抜く。そこには水で出来た剣があった。


「じゃあさ、昨日フィーア君の本体に新しい〈形態変化〉パターンSを覚えさせて見たんだけど試して見てくれないかい?」


 メフィから聞いた話だとマルトは(魔物博士プロフェッサー)の称号で得られた〈特性〉で話せないような魔物とでも思考による情報の伝達が出来るため、フィーアの〈形態変化〉のパターン作りに一役買っているらしい。


 そのマルトの言葉にレナは頷き、手に持つ剣に話しかける。


「フィーアちゃん、〈形態変化〉パターンS」


 レナの言葉に反応して水の剣が生き物のように動く。剣の形になっていたモノが一度圧縮され、それから大きく円を描いた形ーーまるで円形の盾のように姿を変える。


 そんなフィーアの変形した姿を見て、マルトは満足そうな表情を浮かべ、話し始めた。


「うん、うまくいったね。そのパターンSはフィーア君の〈火耐性〉と〈風耐性〉を生かした対魔法用の盾を意識してある。もちろん物理攻撃も硬化を用いて防げるけど、強度とHPに限度があるから頼りにはしすぎないでくれよ?」


「うん!物理攻撃は私が守護方陣が使えるから大丈夫!!それより剣、鞭ときて盾かぁ。ほんとにこの子は便利だね」


 レナの言う通り、フィーアの便利さは予想以上だった。状態異常効果を与える武器として有能な近距離用のパターンB、中遠距離用のパターンW、そして、今回の防御用のパターンSと攻防一体の武器として役にたっている。また、レナはそれとは別に勇者時代から使っている光属性魔法を増幅させる名剣を持っている。それにより今の彼女に隙となるレンジはほとんど存在しなかった。


「そこに目をつけた僕のことも褒めて欲しいね。今も新たな〈形態変化〉を考え中だしさ」


 確かにマルトのおかげで助かることが多い。というよりベリト達がこうしていられるのも全部マルトのおかげである。だから俺は素直に感謝の気持ちを口にする。


「本当にあんたには助けられているよ。いくら感謝しても足りないくらいだ。いつもありがとうな」


 そう言って頭を下げる俺。


 するとマルトはポカンとして珍しく反応が遅れた。そして早口で話し出す。


「・・・・・・素直に感謝されると逆にこっちが恥ずかしいなぁ、もう。・・・うん、僕の用件はこれでおしまい。カプセルが空いたから、ダンジョンで死にそうな魔物が出たら連れてきてよ。それじゃまたね」


 言葉を言い終わるかどうかのタイミングでマルトは空間の穴に消える。それを見届けた俺達は一斉に言う。


「照れてたな」

「照れてたね」

『照れておったな』

「照れてるよな、あれ」

「照れてましたね」

「・・・照れてる」

「にゃあ」


 その場に居た全員が同じことを言う中、穴が閉じ、再び元に戻る。


 そのいつもと違う光景に遅れてこみあげてきた笑いを抑えることなく大爆笑をした後、荷物をまとめ、俺達はダンジョンへと帰って行くのだったーー。




・・・ちなみに戻った後、メフィがただでさえ出番減っている私から猫キャラの地位まで奪うつもりですか!? とかなんとか言ってウイングキャットに喧嘩を売っていたのは完全に余談である。




△▲△


N;ファウスト

R;バードマン・龍血混種

C;上級悪魔



Lv43

H;650/650

M;240/240

侵食率;44%

残DP;1450



new〈特性〉〈時空間魔法の使い手Lv3〉


new スキル カマイタチ 龍の叫びドラゴンズ・ロアー


new(称号)


・(我流の槍術使い)


ーーー〈特性〉〈槍術Lv1〉取得ーーー


(コメント)人間には流派があったりするそうですね。悪魔にはありませんが。




※〈時空間魔法の使い手Lv3〉・・・魔法 空間固定ディメンジョンスタビリティ取得



※カマイタチ・・・MP15消費で翼から風の刃を生成



龍の叫びドラゴンズロアー・・・翼龍時、MP20消費で雄叫びによる音波攻撃。範囲指定可能



※〈槍術Lv1〉・・・スキル 三段突き取得




▽▼▽

 ストーリーがまったく進まなくてすみません。次回はダンジョン完成回の予定です。

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