第4話 女勇者の話その2
この話は第17話の裏、ファウストが〈我が身我が心は貴方と共に〉発動直後からの話になります。
目の前に男達の汚い手が迫る。動けない私に男達が殺到する。
ーーそんなとき、恐怖と驚愕の入り交じった男の叫びが聞こえ、私に群がっていた男達は一斉に振り返った。そして、それによって出来た隙間から私は奥に立つ一人の男をみる。
そこで私の目に映ったのはーー
「・・・・・××??」
執事服を着て、紅い眼をしているものの、この世界にいるはずのない彼だった。あり得ないことだけど、直感的にそう感じることが出来る。
そして、彼は突如姿を消したかと思うと私の前に現れ、しゃがみ込み囁いた。ーーーもう大丈夫だよーーーと。
それから彼は私を守るように背を向けて立ち上がったのだった。
ーーー
今、私の前ではハイレベルな闘いが繰り広げられている。
彼とヴァランタインが戦っているのだ。
ヴァランタインは今まで見せたことがない表情のまま叫びちらしながら攻めている。
対する彼は終始押される展開に見えるが、攻防の動きが互いに速すぎて私の目ではついて行くことができない。
すると、彼がこちらに突然転移して、倒れている男達を飛び越えながら後ろに手をまわし、何かをしているのがなんとか目に入る。
その彼を追うようにヴァランタインが駆け出し、あと一歩で彼に迫るという時、不意にヴァランタインの身体中に武器が刺さった。だがヴァランタインは一度動きを止められただけで刺さっているモノに気にも止めず再び攻め立てようとする。
ーーしかし、その時彼等を中心とした大爆発が起こった。
爆発によって巻き起こる風に吹き飛ばされそうになるも、私の目の前に執事服の彼が出現し、何らかの力で私を守ってくれていた。
そして、嵐が収まったものの、爆心地は未だに煙に覆われている中、私の元にコロコロと何かが転がってくる。見ると、おそらくウェイバーが隠し持ち、使ったであろう解麻痺の薬の残りだった。
急いで私はそれを飲む。そして麻痺が取れたのを確認して彼の方を見ると、右上半身が無くなりつつも生きているヴァランタインが倒れている彼に向けて、剣を振り下ろそうとする瞬間だった。
「やめてぇぇぇぇぇ!!」
反射的に叫びながら私は彼とヴァランタインの間に割り込む。彼を殺されたくない、その一心で身体が勝手に動いたのだ。
そこに振り下ろされる剣。斬られる!!そう思い、目を強くつぶり、口を噛みしめる。だが、いつまでたっても衝撃が来ない。おそるおそる目を開けると、そこには剣の軌道を必死に止めている男の姿が映る。
その時、私の横から二本の腕が突き出され、男を掴む。すると男の後ろの空間が歪み、男は叫びながら歪みへと消えていく。そして男は完全に飲み込まれ、歪みは消えていった。
ーーー
「・・・彼は・・死んだの??」
静寂な森の中私は彼に訪ねる。すると、彼は2年か1年後に再びヴァランタインが戻ってくると告げ、さらに何かを私に言おうとした瞬間、急に倒れた。
「どうしたの!?ねぇ、××、起きてよ!××ってばぁ!!」
倒れていく彼に叫ぶも反応がない。そしてそのまま黒い光が彼の身体から溢れだし、気が着くと、彼のいた場所には執事服を着たスケルトンが横たわっていた。
突然の事に呆然とする私。すると段々スケルトンの胸から影のようなものが溢れだしスケルトンを覆っていく。後少しで身体全部を覆いそうな時、私を飛び越す様に小さな黒いモノがスケルトンの胸に飛び込んだ。
「貴方は死なせません!!間に合わせます!!」
叫びながら、何かをスケルトンの胸にしているのは紅い目の黒い猫だった。猫が何かをした瞬間、今度は眩しい白い光が襲う。そして、光が収まった後、猫の下に居たのはスケルトンではなく私の良く知る彼の姿だった。しかし、先程と違い目が紅くない代わりに、妙に毛深くなっている。
「これでなんとか・・・」
そういって安堵の表情を浮かべている猫に私は尋ねた。
「貴方は誰??彼は××よね??どうなっているの?」
そこで初めて私の存在に気づいた様に顔を向け、猫は話し出した。
「ああ、すいません私としたことが。少しばかり焦ってしまいました。・・・はじめましてレナ様。私は貴方の彼氏である××様と契約を結んだ悪魔、メフィストフェレスと言います。以後お見知りおき下さいませ」
そう言って悪魔ーーメフィは今までのことを話し出した。彼がどんな思いで契約し、必死になっていたか。こっちの世界に来てどのような経験をし、望みを得たか。などの全てをーー
そしてそれを聞いた私は未だに意識のない彼の頭を撫でながら話し出す。
「そっかぁ・・・そんなことがあったんだぁ・・私なんかのためにこの人は・・・」
自然と瞳から涙があふれてくる。
「悲しいんですか??」
「ううん、嬉しいんだよ。私なんかのために命懸けに頑張って、自分と向き合うようになってくれてさ。」
だからーーと私は続ける。
「だから私はこの人を助けたい。折角変わり始めたこの人を死なせたくない。このままではこの人は死んでしまうのでしょう?」
「ええ、恐らく今の侵食率ならあと2週間は持たないでしょう・・・・ッ!まさか!?貴方は!?」
「うん、そのまさかだよ!・・・だから悪魔メフィストフェレスよ。契約をしましょう。この人を侵食する貴方の力の一部を寄越しなさい!!対価は私の命。この人が貴方に喰われ、元の姿を取り戻した時、私の命を貴方に捧げるわ!!!」
「バカな!?貴方は助かったのですよ?なんでそんなすぐに他人のために命をかけると言えるのですか?なんで・・・なんで・・」
困惑するメフィに私は問いかける。
「・・・・メフィちゃんは彼が何故契約を受けたか理解しているの?」
「・・・彼は貴方に依存していた。だからどうしても会いたいと願ったのでは?」
「ん~、おそらく違うと思うよ?彼は私に依存なんてしていないよ。だって私はただ背中を押していただけだからね。でも彼は貴方と契約した。それはたぶん今の私と同じ理由だよ。嬉しいことに。」
その言葉にメフィはうつむきながら叫ぶ。
「・・・・・・ません、わかりません!私には、心を理解できない私には!!貴方のいうその想いどんなものなのかがわからないのです!!!!」
「じゃあさ、なおさら契約しようよメフィ。そうすればこの人は助かり君はまた心を知ることが出来る。デメリットなんてないじゃない。」
私の言葉に返す言葉をなくすメフィ。
「・・・主様は絶対に悲しみますよ。貴方には幸せになって欲しかったと。」
「ふふ、ざーんねーん。私は今幸せだよ??」
「・・・私はヴァランタインさんの大切な人の命を奪った心を持つ資格のないような悪魔ですよ?」
「確かに貴方は悪魔だね。だからいつか贖罪をしなきゃいけない。けど、けどさ、それが貴方の心を持っちゃいけない理由にはならないよね??だからさ、貴方はこの人に喰われるにしろ、ヴァランタインに殺されるにしろ、どうせ死ぬ運命なら精一杯満足して死のうよ。心を持って満ち足りた気持ちでさ!」
「・・・・貴方は愚か者だ・・・」
「そうだね。私は悪魔にも呆れられるほどの愚か者だよ。ーーだから契約しようメフィストフェレス。愛する悪魔であるこの人を救うために、そして誰もが幸せに終われるハッピーエンドにするために」
そう言って私は彼の胸辺りに手を延ばす。黒猫がため息をつきながら、彼の胸に乗り、何かをする。すると、服を貫通して黒い球体から楔が出現し、私の手を辿り胸元に刺さる。その刺さった胸元から黒い光が輝き、周りを照らした。
そして、光が消えた時、私の胸元には黒い球体が埋まっていた。
△▲△
name;レナ
race;人間
class;人間
Job;勇者(見習い)
Lv45
HP380/380
MP200/200
力 B
タフネス B-
敏捷性 B+
知力 B
〈特性〉〈二足歩行〉〈転職〉〈勇者式戦闘術Lv3〉〈光魔法の使い手Lv2〉〈光の加護〉〈剣の心得〉〈カリスマ〉
スキル 守護方陣 魔法剣
(称号)
・(ディメンジョン・トラベラー)
・(勇者の資格を持つ者)
・(運命に翻弄されし者)
・(初級ダンジョン攻略者)
・(中級ダンジョン攻略者)
・(悪魔を救いし者)
▽▼▽
レナは見習いなのでそこまでオーバースペックではないです。まぁ一般人が4ヶ月でなる的な意味では十分チートですが。




