第14話 冒険者マックスの話
一話限定のキャラクターの描写が個人的に一番キツいです。違和感など有りましたら後学の為にも感想よろしくお願いします。
※※※side マックス※※※
オレの名はマックス。もう40を過ぎた冒険者よぅ。ロックブーケの町で生まれ育ち、若い頃は名声欲しさに様々な所に行き、D級冒険者の魔法使いにまでなったんだが、30代半ばにカミさんに逃げられたくらいからロックブーケの町で最低限稼いで、後は飲んだくれる変わらぬ日々を送っているどこにでもいるダメ人間さ。
けど一ヶ月くらい前かな。いつものように飲んだくれてたら珍しくこの町の外から冒険者登録しにきたんだよ。全身を隠すような鎧とヘルムで身を隠した男がよぅ。
その男のヘルムの隙間から見えた目が強い力を持っていて、それが何故か妙に腹が立っちまって大人げなく挑発しちまったんだ。そしたらアイツ、ヘルムを脱いでよぅ、事情を話し始めたんだよ。その事情って奴が全部本当かわからねぇが、オレらはその話を聞いてアイツを気に入っちまってさ、奢ってやって一緒に酒を飲んでたんだよ。
そんで飲んでた時にアイツが人を探しているって言ったんだが、オレはその時の顔は今でも忘れられねえ。あんな力のこもった顔を見たのは久しぶりだった。気づいたら、オレぁアイツの手伝いをしてやろうって気になっていて、まるで若い時のように気力に満ちあふれてたんだよ。信じられるか?
そしてそれから俺は昔のツテをもとにメルキオール教国に行って、レナとかいう子の情報を集めに行ったんだ。けど入ってくるのは帝国に勇者が来たらしいとか、まだ勇者の職業について間もないため、修行の旅をしているのだとか、そういう情報ばかりでレナという女の情報はまったく入ってこなかったんだよ。
だが、一つだけ、勇者はマルグリッドという女性だと言うのだが、名前が出てき始めた頃、別の名前で呼んでいる人が居たという情報が手に入った。
それがアイツの探して居るレナって奴かわからないが、メルキオールでこれ以上の情報が入らなかったので一度戻る事にしたんだ。
そしたら戻ってからリース嬢が言うにはつい先日勇者一行が来ていたと言うじゃねえか!?丁度すれ違いになったらしく、今はいなかったが、ちょうどアイツが来た時に居て、会ったらしいんだが、あからさまに二人の様子が変だったそうだ。
その時何があったかはわからねぇが、アイツーーファウストの小僧がその日以来ここに来ていないらしく、問いただしたり、情報を教えてやったりする事が出来ない。何となくむずかゆい感じを感じながら数日を過ごしていると、ちょうど3人が同じような情報を持って帰ってきた。
そいつらもリース嬢から話を聞いて同じように感情を持て余していたので、俺は4人で受けるちょうど良い依頼はないかリース嬢に尋ねた。
ーーー
「捜索依頼だと!?」
「ええ。最近この近くで極秘任務中のガスパールの人間が行方不明になっているそうです。その人達を探して欲しいという依頼です」
「帝国が極秘任務中だとばらしているのか?」
「ちょっと前までは隠していたのですが、余りにも行方不明が多いため、公開しました。何でも勇者のレベルアップのために強欲の魔王領を偵察する任務だったそうなのですが、結局勇者様直々にこちらにいらして捜索しています。でも未だに手がかりが無いそうです。ただ・・・」
リースは歯切れの悪そうに言う。
「勇者様達からの情報によりますと、最近近くの森で青い光を見たそうです。それで、勇者様は初心者ダンジョンは既に攻略されていたのでこちらに探索依頼が来たのですが、その依頼を受けたベノア家の六男が現在行方不明になってしまっているのです」
「ベノア家って言うとあの豪農の?確か昔冒険者になるといって、飛び出したバカがいた気がしたのだが?」
「ええ、どうもお兄さんに触発されて冒険者になったそうなのですが、親も懲りたのか金にあかして装備を整えさせて、遠距離から攻撃できる弓を武器にすることで冒険者になることを了承したので私達も依頼を頼んだのですが、未だに行方不明なのです」
「・・・ふむ、それであんたらは行方不明者の全てがそのダンジョンに関わっていると?」
「そうギルドマスターは考えているようです。それに私はあの日以来姿を見せないファウストさんも関わっているのではないかと。ですから当ギルドはあなた方にダンジョン攻略の依頼を出したいのですがよろしいでしょうか?」
「そのダンジョンは初心者ダンジョンなんだろ?Dランクのオレが攻略しちゃ不味いんじゃないか?」
「この町の冒険者の少なさや50年前のような事を起こさないために特例を出していいとギルドマスターが協会の上層部にかけあって許可をもらっています」
「・・・・成る程、お膳立ては完璧というわけか。・・・丁度いい、なんとなく気持ちをもて余していた所だしな、いいだろう、その依頼うけよう。手続きを頼む。あとオレらが出ている内にあのファウストの小僧が帰ってきたらさっきの情報伝えといてくれ。・・・・・さてっと、お~い野郎共!!久しぶりのダンジョン攻略だ。暇な奴はついてきやがれ~!!」
ーーー
「・・・いつの間に出来たんだこりゃ」
酒場で依頼を受けた後、オレは3人の野郎とパーティーを組んで森を2日程進み、今洞窟の前にいる。パーティーは近接系二人と回復役一人と魔法使いのオレで構成されており、盗賊の職業持ちがいないのは痛いが、なかなかいい組み合わせである。
「まぁ入り口でぐちぐち言っていても何も始まらないしとっとと入るか」
そういってオレ達はダンジョンに入る。ダンジョンの中は洞窟の中とは思えないほどしっかりとしており、奥へと真っ直ぐ道が出来ている。
「見た感じ普通のダンジョンだーーー」
オレがしゃべりながら進むと不意に視界が歪み、どこかへ移動させられる感覚を味わう。
「・・・っと、あいつ等がいねぇな。オレが跳ばされたのか」
見ると、小部屋の中にオレは居て、足下から水が流れている。どうやら隠し扉で区切られた部屋らしい。密室になっているらしく、空気が薄い。
「・・・ふむ、どうやら魔物が隠れているか、隠しスイッチがある部屋のようだな。もしオレが普通の冒険者なら水による窒息死を狙うといったところか。ならオレが普通の冒険者じゃないということを見せてやるかねぇ」
そう言ってオレは精神を集中させ、魔法を使う。〈水魔法の使い手Lv2〉で使える魔法、水分子分解を。
この魔法は、どの属性も持っている自分の属性に対する対抗魔法の一つで、水に属するものを元素まで分解、無効化する魔法であり、オレはこれにより足下から流れてくる水を分解していった。
「どうも、この足下の鉄格子が怪しぃんだよねぇ。・・・・っとビンゴだな」
鉄格子の中を覗くと丸い核のようなモノが2つ見える。オレはそれに持っていたナイフを投げた。すると、叫び声とともに核が壊れ、それと同時に後ろの壁に人が通れる大きさの穴が開く。
「まぁ伊達に冒険者歴が長いってわけじゃないんだよ。さて早くあいつ等と合流しなくちゃーーーーーぐあぁぁぁぁぁ!?!?」
オレは独り言を呟きながら隠し扉の先に行こうとする。
その時、オレの足下がいきなり電気を発した。そしてその電気が火花を発したと同時にーーーーー
ーーー巨大な爆発が起こったーーー
ーーー
「う・・・」
意識が朦朧とし、手足の感覚と、全身の触感が感じられない。
瞼がどんどん重くなっていき、不意に脳裏に今までの出来事が思い浮かんでいく。
両親との思い出、冒険者としての日々、仲間達、そして居なくなった女房との思い出を思い出していた時、誰かがオレの上に立っていた。
影が出来ていて、意識も朦朧なオレには目では判別出来なかったが、それでもオレの上でしきりにすまないと言って謝っているのが誰かは直感的にわかった。だから、オレは最後の力を振り絞って言葉を紡ぐ。
「・・・・お前・・・は・・・絶対・・・幸せになれよ・・・・・小僧・・・・いや、ファウス・・・ト」
そしてオレの意識は消えたーーー
※※※sideマックス end※※※




