プロローグその2 悪魔との出会い 修正済
振り返った先にいたのは執事服を纏い不思議な雰囲気を纏った男か女かわからないーーそもそも人かどうかすら怪しく思える血の色に染まり、服に映った夕日に負けないくらい妖しく輝く深紅の目を細めの合間から覗かせているモノだった。
それはこちらが目を向けるのに合わせてもう一度言葉を発する。
「釣れますか?」と。
そして間髪入れずに、
「まぁ釣れるわけ無いですよねぇ。そんな餌もなにも刺さってもいなければそもそも真っ直ぐになっている針なんか垂らしてそんなんで釣れる魚がいたら私悪魔辞めますもん。
っていうかじゃあ君何したいんだって話なんだけど、何もしかして釣りでもしていたら捜してる人釣れるかもって~? いやいやそんなので釣れたら捜してる人って魚以下じゃん。何? 君の彼女魚以下なの?ウミウシにでも恋しちゃった?あ、それだとウミウシに失礼かアハハ~」
あからさまに人を小馬鹿にしたように息つくことなく発せられる傍若無人な言葉。だが、そんな言葉に対して俺の心はほとんど動揺しなかった。
「……あんたに何がわかる?」
「ああわからないねぇ。これだけ言ってもその程度しか揺れ動かない君の感情を理解する事なんか理解出来ないね。そんななのに彼女のことに関しての執念は何よりも深く、自分すら度外視するその心アレ? そもそも私自己紹介しましたっけ? まぁいいか~とにかくそのいびつになっている心は本当に最高ですと私は思うんですけどどう思います?」
ハイテンションな様子でいきなり話題転換を行ったりしながら語り続ける紅きモノ。その様子に呆れながらも俺は無気力に答える。
「……自己紹介はまだしてない」
「まぁいいか~とか言ってたところに突っ込むんですか!? いや他に言うこと幾らでもあるでしょ!? ああほら君の内面性のこととかさぁ~ 結構私つついているんですけど何でノーコメント?? ほらなんかリアクションプリーズ!!」
あくまでも人をおちょくるように紅きモノはからかう。だが、そんな挑発は今の俺には然したる意味を成さなかった。
「……あんたに何がわかる?」
「あれ~さっきも同じ返しをしてませんでしたかぁ~? あんま頭使わない会話してると馬鹿になっちゃいますよ? まぁ君は自分がどうなろうと興味はないんだろうけどさ。……んで自己紹介でしたっけ? じゃあ改めましてどうもはじめまして。私異世界で悪魔やってますメフィストフェレス言います~。短い付き合いになるか長い付き合いになるかは君次第なんだけど、取りあえず契約してみませんか?」
夕日の中、メフィストフェレスと名乗ったモノは笑顔を崩さないまま言葉を紡ぐ。
そして、その言葉に初めて俺は心の何処かが揺れ動くのを感じた。