第5話 スライムって弱いんだな…… 修正済
評価感想等々よろしくお願いします。
ダンジョンコアルームの液晶に冒険者が死んでいく様が映される。俺は事切れる最後の瞬間まで目を離さず見続けたあと、急激に襲ってきた立ちくらみのような感覚に思わずしゃがみ込む。
「大丈夫ですかマスター!?」
部屋にヒェンの心配する声が響く。
「ああ……、すまない……覚悟はしていたのだけどな。情けないな俺……」
「いえ、マスターは最後まで目を背けませんでした。相手の思いを真摯に喰らっていくというその思いは十分な覚悟だと思います」
「そうですよぅ~主様は典型的な現代っ子のモヤシ野郎の上に神からヘタレの称号を授かった御方。そんな方が最初から平然としてたら逆にドン引きですよぅ。あ、でもでも主様今の行為で結構有能な〈特性〉を付与する称号を手に入れたみたいですよぉ??」
何時戻ってきたのかわからないが悪魔な黒猫が会話に混じってくる。そしてふと気づくと気持ち悪さが消えていた。何処か精神的に安定を感じるのは新たに増えたと言う称号のおかげかと思い、俺は簡易ステータスを開ける。
○●○
N;ファウスト
R;スライム
C;一般悪魔(見習い)
Lv92
浸食率;16%
残DP;294
new<特性>なし
newスキル 擬態
new(称号)
・(覚悟を決めしモノ)
ーーー〈特性〉〈揺るがぬ心〉習得ーーー
※擬態・・・自らが想像した姿に色形を合わせることが可能
※〈揺るがぬ心〉・・・覚悟を決めて行動した時、精神異常耐性大幅上昇
○●○
「気持ち悪さが消えたのはこの称号のおかげか……」
「ええ、主様がきちんと向き合ったから与えられた称号でございますよ」
「そうか……それにしても一度に随分レベルとDPが上がったな。普通こんなに上がるものなのか??」
「いやどうもカモだけれどそこそこの実力だったみたいですよぅ? なんか寄生プレイ中にレアアイテムドロップしてヒャッハーしてたらフルボッコみたいなことになってこの森に逃げてきたらしいですけどぉ」
「……後半の意味が分からんがそこそこの奴にもこれが効くなら安心かもな。」
俺はそう言って冒険者の命を絶った部屋を液晶で見る。そこにはもう、さっきの冒険者が身に着けていた装備しか残されて居なかった。
ーーーさて、ここで先程の冒険者が引っかかったことについて説明しておこう。
まず俺はダンジョン1階層の2フロア目に落とし床を作った。
そして、丁度そのフロアの下の2階層に新たにフロアを作り、隣のフロアとの扉を魔物殲滅により開くことが出来る隠し扉にしておいた。
その後そのフロアを改装して一つの壁の下の端に小さな穴を開け、そこに水流トラップ発生装置とスライムを2匹入れ、鉄格子で穴に蓋をし、冒険者が落ちてくると自動で水が流れ始め貯まっていくように設定した。
その結果、水流によってスライムの身体は核を残して水に溶けていくが、川と違って水が貯まっていくので水はスライムの身体の一部として扱われる。そのためスライムの核を倒されない限り扉が開くことはなく、その水の中で窒息死した冒険者達はスライムに倒されたと認識され経験値はスライムのものとなり、また〈特性〉〈捕食吸収〉により死体も吸収され後始末も必要ないという極めて効率的な事になっているのだった。
「この罠は前に言った通り魔法で部屋全体を攻撃されたり、熟練の冒険者のような目敏い者達との相性は悪いかも知れませんが、初心者用ダンジョンの罠としてはかなり良いと思われます」
「そうか。まぁ上手くいって良かったよ」
ヒェンの説明を聞きながらふと、罠としておいたスライム2匹のことが気になり、ステータスを閲覧してみる。
○●○
race;スライム
Lv56
力 ;G+
タフネス;F-
敏捷性;G
魔力;無し
〈特性〉〈自己再生〉〈捕食吸収〉
スキル 硬化 体液噴出
○●○
目の前に現れたステータスを見て、俺は思ったことをそのまま口にする。
「スライムって弱いんだな……」
「何を今更。主様だって称号の補正と〈器用〉の特性がなければそんなものですよぅ?スライムと言えば弱い。これ、世界の常識です。ですから主様のような使い方は今まで誰も考えませんでしたし、これからも考える方はいないでしょう。だから主様は最高なのです」
まるで自分のことのように胸を張るメフィストフェレス。それに少しの恥ずかしさを感じながら俺はさらに疑問を投げかける。
「このスライム達は育てても強くならないのか??」
「スライムを育てる人は滅多にいませんから強さはなんとも言えませんが、一段階進化するだけでも、属性攻撃に対する耐性が上がったり、状態異常を引き起こすスキルを身につけたりするのでこの罠には結構向いてるかもしれませんよ??」
ふむ、仮にこのままスライム達を育てていったら、この罠に毒や麻痺といった効果が働いて冒険者たちを効率的にに倒せるかもしれない。そう思い俺は、ヒェンに罠部屋にもう一つ同じ仕組みを作るのとスライムを追加で2匹作るように頼み、それから一息をつきながらステータスを見ていると自分が新たなスキルを手に入れてたのを思い出した。
「擬態か。試しに元の姿意識してやってみるから見ててくれないか?」
メフィストに頼み、俺は自分が人間だった頃の肌の色や血管を思い出しながらスキルを使用する。
「……あぁ、やはり主様は元が人間ですので自分の姿のイメージが上手ですねぇ。けどなんか色がつくと主様の平凡なお顔がより平凡に見えるというか…………って冗談ですよぅ。えぇ、どこからどう見てもちゃんとした人間に見えますって、ですから主様落ち着いて、落ち着いて」
俺の殺気を感じたのかメフィストが宥めてくる。
「もともと私が主様との契約の際に人間の姿を形状記憶する機能と会話が出来るような発声機能を契約の魔法でつけておきましたし、今の主様レベルの擬態ならよっぽどのことが無いかぎり人間として生活していてもばれませんよぅ」
人間として生活できる。その言葉に心が揺れ動いたがそれを振り切り俺は尋ねた。
「俺自身が冒険者となってこのダンジョンへの侵入者を見繕ったり、レナの情報を集めたいと思うんだがどう思う?」
「……それは面白いです。私も極力主様の力だけでなんとかしていただきたいと思っていましたし、この世界を知ると言う意味ではそれが最適かもしれませんね」
「私も賛成です、マスター。もしマスターがいない時に侵入者があった場合でも今の罠ならなんとか対応出来ますので是非行ってくるのがよろしいかと」
「わかった。ならば俺はとりあえずロックブーケの町まで行ってくる。俺のいない間のことは二人に任せていいか??」
了解です。という返事を聞き、俺は先程の冒険者の装備を回収し、ダンジョンから旅だつのだったーー。
罠の説明がわかりにくいかも知れませんので、簡潔に表現するならば、普通そんなところに魔物がいないだろってとこに魔物がいましたって感じです。




