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愚者と悪魔の物語  作者: らいった
第1章前編  誰にも負けないダンジョンを
10/50

第4話  ある冒険者の話 修正済

※※※side???※※※




「はっ!!」


 今、僕はロックケーブ近郊の森で悪しき魔物達と戦っている。


「ピギィィィィ!?!!」


 この僕の素晴らしい槍捌きにピグは何も出来ないまま倒されていく。


 うん、やっぱり僕はすごいんじゃないか!! それなのにあいつらときたらーーー








    ※




 僕はもともとロックケーブに住む豪農の次男坊として産まれ育った。


 畑をいじるしか能のない兄なんかと違って僕は昔から冒険者に憧れていたし、自分には冒険者としての才能があると信じていた。それなのに両親はやれ身の程を知れだの、そんなあぶないことはやめなさいと言って僕を拘束しようとする。だから僕は15歳の時金を拝借して家を飛び出した。


 そして、それから10年間を僕はザミエル王国の王都で冒険者として過ごす。駆け出しのころは恥も外聞も捨てて経験値を稼ぐためにある有名なA級パーティーに荷物持ちとして入れてもらっていた。奴らは人のことを使えないだのクズだのいつも言ってきたが僕は耐えた。耐え続けた。


 その甲斐あって、奴らがあるダンジョンでドラゴンと相打ちになったとき、離れてみていた僕にドラゴンを倒した経験値とパーティーの財産の全てが入ってきた。おかげで僕は急激にレベルが上がり、〈転職〉の〈特性〉を手に入れ誰もが羨む騎士の職業に就くことが出来、C級冒険者の資格を得る。そして僕はそれから数年間、他人の成功を羨む奴らを見下しながらギルドの酒場で飲んだくれ、依頼を受けにきた新人をイビるという生活を送ってきたのだった。




 しかし1ヶ月前、その生活が不意に終わりを告げる。その日、いつものように飲んでいると、やけに豪華な装備をした何人かの男達を連れた女が依頼を探していた。冒険者の女にしては線が細く、後ろ姿を見るだけでも上玉と思えたので、この僕自身が力を貸してやろうと思い近づいた所、周りの男達が僕を止め女に外に出ているように言って追い出し集団で身の程をしれと殴りかかってきた。あの時酒さえ入ってなければ、集団でさえなければ勝てたのに、僕は結局負けてボコボコにされてしまう。


 ……それからが地獄だった。今まで決して絡んで来なかった連中が僕に襲いかかって来るようになったのだ。どうやら前にたまたま僕が負けたのを見て弱いと判断したらしい。さすがに集団は分が悪く、僕は逃げ回るしかなかった。正体がバレない様にフルフェイスヘルムとフルプレートアーマーを着込み王都を出たのは良いが行く宛もなく、ふらふらと故郷の近くまで来たものの今更どの様な顔で町に戻ればいいのか分からず、近くの森の中をさまよっているのだった。







    ※



「やっぱり王都の奴らは人を見る目がなかったんだよ」


「ニャ~~オ」


「おお、やっぱりそう思ってくれるか?本当にお前はいい猫だなぁ。よし、もう少し肉を分けてやろう」


 夜、薪を火にくべながら向かい側にいる黒猫に話しかける。この猫は昼間ピグを狩り終わった時から何故かついて来ており、ちょうど一人が寂しかったため僕も無理に追い払う気にならなかった。


「大体僕はあんな奴らに本気なんか出せるわけないじゃないか。僕は魔物相手になら本気を出して簡単に倒せるんだ。そうさ、僕はダンジョン攻略なら誰にも負けないんだ!!」


「ナ~~~」


 肯定か否定かわからない鳴き声をあげた後、猫は立ち上がり歩き始めた。


「あ、おい、どこ行くんだよ!!」


 歩き始めた猫に言葉をかけると猫はまるでこっちに来いと言わんばかりに尻尾を降りながら見つめてくる。


 しょうがないので荷物をまとめ松明を手に追いかける僕を見て、猫は再び歩き始める。


 そうしてしばらく進んでいると目の前に開けた場所が見えてきた。奥の方で薄ぼんやりと青い光が光っているのが見えた。


「あれは……ダンジョン??」


「ニャア!!」


 肯定の鳴き声をあげて猫は目の前に流れる川の上にかかった橋を通り、ダンジョンの方へ向かっていった。


 ダンジョンは青く光っており、初級者用ダンジョンであることを証明している。


 ここでふと冒険者達のルールとして初級者用ダンジョンに入れるのはE級までというのがあるのを思い出した。これは中級者達がダンジョンを攻略したときに与えられる称号を得るために初級ダンジョンを乱獲したため設けられたもので、仮に中級者がいた場合ギルドに報告され、最悪その町での依頼が受けられなくなる可能性があるのである。


 だが、この森にダンジョンがあると聞いたことがないし、橋の足跡などを見る限り、先客がいる可能性は限りなく低いだろう。


 だから僕は迷っていた。今からダンジョンに挑むべきかどうかと。


 初級ダンジョンごとき僕の敵ではないが万が一のことがある。しっかり休んでから行くのが賢明だと思うが、その間に初心者達が来ないとは限らない。今まさにロックブーケのギルドにダンジョン発見の報告が行っているかもしれないと思うと、気が気でなかった。


「しょうがない、行くとしよう。ダンジョン攻略の称号はおいしいしな」


 僕は自分に檄を入れ、ダンジョンの入り口へと進む。その時にはもう黒猫が何処に行ったかなどは頭から抜けていた。






 ダンジョンに入ると外見が洞窟のくせに内部がきちんとした部屋になっていた。


「初心者用にしてはしっかりとした作りだよな」


 ぼやきながら罠を確認し、1部屋目を通過する。罠らしい罠もなく、降りる階段も真っ直ぐ行った先に見えているのをみて、安堵の表情を浮かべる。 ーーーすなわち、このダンジョンは内装ばっかり気にする素人が作ったものであり、やはり自分は入って正解だったと。


 そう思いながら二部屋目を通過しようとした時、不意に身体が宙に浮かぶ感覚に囚われたーーー。









   ※



「いてて……」


 僕は痛みで飛びかけた意識がだんだんはっきりしてくる感覚を味わう。


 それと同時に上の方でなにやら天井が閉まっていく。どうやら僕は落とし穴か何かに落とされていたようだった。


 落ち着いて見てみるとそこは小部屋だった。一つの壁の下の端に鉄格子があり、先程からそこから水が流れてきている。それ以外の場所は一面壁でありとりたてて変わったところが見えない。


 ダンジョンにおいて出口の無い部屋はあり得ないと昔僕が荷物持ちをやらされていた冒険者から聞いていたので、隠し扉があるのだろうと推測した。見たところ魔物は居ないので、どこかにスイッチがあるのだろうと思い、僕は壁をさわりスイッチの有無を確かめて行った。










    ※




「何故だ!?何故スイッチが見つからない!?」



 部屋に響く僕の声。この部屋に落ちてからもう随分な時間が経過して、水がもう口元まできている。



「あぁ、くそ、それになんでこんな脱ぎにくい鎧を着ているんだ!!」



 もはや平常の思考能力を保つのも難しくなっていく。



「僕はこんなところで死ぬような人間じゃない!!そうさ、僕は…ゲェホ、ゴホ……ガボォ」



 とうとう気管に水が入ってくる。なんとか浮き上がりたくても身に纏った鎧が重すぎて浮き上がれない。


 息も続かず、もはやこれまでかというとき、上の天井が突如開き上から何か黒いモノがのぞき込んでいる姿が見えた。


 その時、僕は聞いた。その黒いモノが言葉を紡いだのを。そう、「ご愁傷様」と言う言葉を。


 その言葉を聞きながら僕は意識を無くし、水の中に沈んでいく。


 そうして死にゆく僕が最後に目にしたのは、壁の下の端の鉄格子の先にある丸い2つの核のようなものだった。




※※※side??? end※※※



正直モブキャラで1話分使い切るとは思いませんでしたわ。というか無茶苦茶難産でした。駄文で申し訳ありません。

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