有閑マダム達のグループに放り投げられた俺、自分の仕事は言えなくて肩身が狭くてツライです。
なんでこんな事に…
目の前でオホホウフフとドラマの中でしかお目にかかれなかった様な美人で身綺麗な奥様方の集団が楽しくお喋りしている
多分全員ブランド服なんだろうなぁと、
【鯛がメデタイ】とデカデカと書かれたTシャツの鯛の絵辺りに手を当てながら思う
胃が痛ぁい…
ママ〜なんで俺をここに放り投げたかな〜?
分かっている。
私の家にみんな遊びに来てね
とお上品に微笑んだ奥様の、外観からは高級アパートなのかな?と思ってたらただの一軒家だった広々としたリビングの窓からは子供達の遊んでいる声が聞こえる。
有閑マダム改め、有閑ママ会なのである。俺がいるから有閑ママパパ会だったわ。
どこかの公園かな?と思うくらい広くて綺麗な庭でキャッキャッと無邪気に遊ぶ自分の息子が恨めしい
いや、【海老のエビデンス】ってデカデカ書かれたTシャツ着せてごめんね!!!
多分ほかの子はブランド物だよ!!!
息子もある意味ブランド物なんだけど!!!多分ここにいる人達みんな知らない作家さんのだけど!!!
「清水さん、そのお菓子、お口に合いませんでしたか?」
ニコニコとこの家の家主の奥様に声をかけられる
何も喋る事が出来ない陰キャを思いやってくれたんだろう。いい人だ。
でもいない者扱いしてくれていいんですよォ〜
などという本音は言えず
「いえ!とても美味しいです!食べるのが勿体ないくらいで」
ピャッと身体を竦ませて緊張気味に答える俺。人見知りな上にこんな場違いな所に放り投げられて、俺は頑張ってる!頑張れ!
「良かった〜。このお菓子、予約しないと買えないし、販売個数が限られてるのよね〜」
「あ、はぁい。そうなんですね〜」
知ってます。
先輩の家で仕事の時は良く出されたので。編集者をアゴで使って限定お菓子を良く買いに行かせてました。
なんて事は言わず、ササッとお菓子を口に入れて愛想笑い
「とても美味しいですね!」
語彙力ゼロな俺の返答にただニコニコとした顔を向けている家主の奥様
ワァ、ネックレス綺麗ですねー
多分ダイヤかな?ダイヤですよね〜目利きできないけど!
怖いよぉ、、、お前なんかにこの菓子は勿体ないとか思われてそう。ツライ。
「おうちも綺麗で広くてびっくりしました〜」
ちなみにうちはただの3LDKである。この家は外観見た時、6世帯アパートかな?って思ってた。何LDKなんだろうね?
「有難う〜。でもねぇ、こんなに広くても夫が帰ってこないとねぇ。社長業って嫌よねぇ〜」
あ〜これは愚痴に見せかけたマウントでしょうか。いや〜仕事の話は振らないで欲しいなぁあ
「清水さんは何のお仕事をされてるの?」
キターーー!!!
「いや〜無職…じゃない主夫ですね〜」
微妙に視線をそらしつつ答える俺
いや〜本当こんなパパに構わなくて大丈夫デスヨ〜
「まぁ!ならずっとおうちにいるのね。由香さんも嬉しいんじゃないかしら」
うちの奥さんを羨ましいと言ってホホホとお上品に笑う奥様
いや〜僕ぅ、あそこの奥様方と旦那なんて帰ってこない方が楽でいいわよね〜って話してたの聞こえてましたヨォー
言えないけど!!!
「パパー!!!」
俺が胃痛を堪えて社交していた所に息子が突撃してきた
良い子だね〜よしよし
あっ、鼻水を俺のTシャツで拭くな!高いんだぞこれ!!!場違い感半端ないけど!!!ちょっと泣きたい。。。
「ねぇー僕もブンブンのやつ欲しい〜!」
「ぶんぶん?」
奥様が首を少し傾ける。うーん自分を美しく魅せる角度を良く研究してらっしゃる。お見事。
「えー、今日の朝も放映してた車のロボットですよ」
「ああ!」
なるほど!と手を打つ奥様
「たっくんと同じの欲しい〜かっこいいの〜」
「今は無理だよ。後で探してあげるからさ、遊んできなよ」
「やだ!!!」
突然叫ぶ息子
あーこれはアレですね。眠いんですなー愚息は。眠いと普段言うことを聞いてくれる事も聞かなくなってより我儘になるのが子供というもの。
知ってても対処出来ない無駄知識だけどね!!!寝てくれないしね!!!
あ〜面倒くさいなー
「どういうやつなの?」
「あれ!」
息子が指をさしたのは、(指すんじゃありませんと指を持つ俺)奥様のご子息、たっくんが持ってるバック。中々子供向けにしてはカッコよくてセンスがいい。…お高いのでは?
「あのバック、私の好きなブランドと息子の好きなキャラクターが丁度コラボしてて、買ったんですよね〜」
にこにこと奥様が正解を言ってくださる。
限定品かな〜?パパは転売ヤー死すべしと思ってるからフリマでは買わないよー?公式に無かったら諦めるんだよー
と内心思いつつ、在庫があろうと現物を今購入してここに用意出来る訳ではないので、代わりの物を作成する事にする。
「ちょっとお借りしますね」
今この家には未就学児童が結構いるので、折り紙、色鉛筆やペンなどが豊富にある。
また、お土産が入っていた紙袋が畳んで置いてあったのでいただく。
奥様には不思議そうに見られたが、息子はキラキラした目で手元を見てくる
今は無職だが、絵を描くのは職歴的に大得意。特に若い頃は原作付きの漫画の作画でご飯を食べていた。
…主にエロな方面で。
…
…
だって仕方がないだよ!!!エロは金になるんだよ!!!
失敗したなぁと思っているのはオリジナルが認められて少年漫画に移った時に今まで作画を付けていた漫画が漫画なだけにペンネームを変えたのだが、絵柄は全く変えなかったので分かる人には直ぐにバレた。
絵柄も変えときゃ良かった…
ついでにちゃんと隠せば良かった…
あの時は思いもしなかったんだよ!
結婚するとか!娘が産まれるとか!!!娘だよ!!!今わが家にいるよ!!!
今は赤ん坊の娘だが、成長して俺が漫画家だと知ったらどうなる?検索するだろう。そして作者情報を閲覧して前のペンネームもバッチリ書いてあるサイトを見るだろう
ついでに海賊どもにあげられた昔のアングラでエロな漫画も分かってしまうだろう!!!金になるならなんでも描いたからね!!!うねうねしたやつとか、BLとかの男同士のチョメチョメとかね!!!一番好きなのは魔法少女もの…あれ消して!!!消してよお!!!
海賊◯ね!!!
パパ気持ち悪い
成長した娘から冷たい目で言われる絵がありありと俺の頭の中に浮かぶ。
想像するだけで涙出そう。ヤバい俺、我慢しろ。いきなり泣き出す変なオヤジになる。
などと俺は暗い未来を想像しつつ、今の息子のご機嫌を取る為に紙袋に今日の朝放映した車のロボットアニメの絵を描く
一発描きで素早く描く。描く早さは大事。お金になる。
ついでにちょっとハサミで切って、二重の紙袋をズラすとビームが出る様に見えるよう加工した。
こっちの方が時間かかった
息子に僕が切るーって言われた。切るの上手くなったねぇ。よしよし。なでなで。
「ごぼうぬき先生…」
…は?
今どこからかエロ漫画描いてた時のペンネーム誰か言いました?
思わずズバッと声の方を振り返ると家主の奥様とバッチリ目が合った
「…」
「…」
「わぁ!凄いですね!清水さんて〜絵を描く人なんですかぁ?」
ものすっごく家主の奥様と見つめ合っていたら他の奥様方から声がかかる
皆様褒めてくれる。有難う御座います。
息子よ。これ持って庭行ってきなさい。…なんで友達増やして戻ってきたかな?はいはい。作りますよ作りますよ!まだ紙袋あるからね!
「清水さんてぇ〜お仕事何されてるんですか〜?」
「いや〜僕は…主夫です…」
すいません、仕事の話は勘弁して下さい!!!




