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織田ホールディングス

桶狭間の熱狂がようやく落ち着き始めた頃、俺は清洲城の大広間に、織田家の主だった顔ぶれを全て集めていた。

論功行賞。そして、俺の会社の、最初の本格的な「組織改編」を発表するためだ。

これまでの織田家は、良くも悪くも俺というCEOのトップダウンで動く、巨大なベンチャー企業だった。だが、尾張・三河・美濃の一部、そして金山という巨大な資産を手に入れた今、もはやその経営体制では限界だ。

各分野に権限を委譲し、専門家集団による機能的な組織へと会社を作り変える。天下獲りという壮大なプロジェクトを動かすには、それが必要不可欠だった。

俺は、居並ぶ家臣たちを見渡した。

山本勘助、島左近、内藤昌豊、柴田権六、藤林長門守…俺がヘッドハンティングし、あるいは屈服させた、癖のある、しかし超一流の役員たち。

そして、彼らだけではない。この会社には、まだ俺が本格的に活用していない、優秀な人材が眠っている。

「まず、丹羽五郎左(長秀)!」

「はっ!」

俺が名を呼ぶと、古くからの譜代である、実直そうな男が進み出た。俺がまだ吉法師と呼ばれていた頃からの付き合いだ。

「五郎左。お前を、我が社のCOO…いや、**『普請総奉行』**に任ずる」

「ふ、普請総奉行…?」

「そうだ。領国全ての城の改修、街道整備、治水事業、そして新設する金山のインフラ管理まで、全てをお前に一任する。お前は数字に明るく、仕事が丁寧で、そして何より、俺の無茶な要求を形にする粘り強さがある。お前こそが、この織田家の屋台骨だ。頼んだぞ」

丹羽長秀は、感極まったように深々と頭を下げた。彼のような実務能力の高い男には、具体的な権限と責任を与えるのが一番だ。

「次に、滝川左近(一益)!」

次に進み出たのは、どこか影のある、鋭い目つきの男だった。元は忍びとも噂される、出自不明の実力者だ。

「左近。お前には、新設する**『遊撃鉄砲衆』**を預ける。月影衆が諜報と破壊工作を担う『静』の部隊なら、お前の部隊は、鉄砲の火力と忍びの機動力を組み合わせ、戦場のルールそのものを破壊する『動』の部隊だ。敵の後方を荒らし、補給を断ち、奇襲をかける。お前の才は、そういうダーティな戦場でこそ輝く」

滝川一益は、口元に獰猛な笑みを浮かべ、静かに頷いた。彼のような野心家には、新しい挑戦の場を与えるのが効果的だ。

「森三左衛門(可成)!」

「ははっ!」

槍働きで知られる、美濃出身の猛将が進み出る。

「三左。お前を、犬山城の城主とし、対美濃戦線の総司令官とする。美濃の地理も、国衆どもの気質も、お前が一番よく知っているはずだ。お前の槍で、斎藤義龍の喉元に刃を突きつけろ」

故郷への凱旋。これほど、武士の士気を高揚させるものはない。

そして、俺は最後に、あの涼やかな目をした男に視線を向けた。

「明智十兵衛(光秀)」

「御前に」

「お前は、俺の側近として、**『京師けいし担当奉行』**とする。幕府や朝廷との交渉、全国の情勢分析、そしてこの会社のブランドイメージ戦略。全てを統括しろ。お前の持つ知性と教養は、戦場よりも、そういう盤上のゲームでこそ生きる」

明智光秀は、優雅な所作で頭を下げた。その瞳の奥で、野心と才能の炎が揺らめいているのを、俺は見逃さなかった。

こうして、俺の会社の新しい組織図が完成した。

• 戦略顧問(軍師): 山本勘助

• 最高財務責任者(CFO): 内藤昌豊

• 最高執行責任者(COO)兼 普請総奉行: 丹羽長秀

• 営業本部長(軍団長):

• 第一軍団(正面戦力担当): 柴田勝家

• 第二軍団(奇襲・遊撃担当): 島清興

• 高速機動部隊長: 滝川一益

• 対美濃方面軍司令官: 森可成

• 諜報・特殊作戦室長: 藤林長門守

• 渉外・広報担当役員: 明智光秀

まさに、ドリームチーム。それぞれが異なる分野の天才であり、俺というCEOの下で、一つの巨大なプロジェクト…天下統一へと邁進する。

俺は、生まれ変わった役員たちの顔を見渡し、満足げに頷いた。

「さて、諸君。新生・織田ホールディングスの、最初の事業目標を発表する」

俺は、広間の壁に掲げた日本地図の、尾張のすぐ北を、刀の鞘でトンと突いた。

「目標は、美濃の完全なる買収だ。斎藤義龍という、時代遅れの経営者を市場から退場させ、その豊かな土地と人材を、全て我々の資産とする。期間は、三年。これより、美濃攻略作戦を開始する!」

俺の号令に、綺羅星のごとき家臣たちが、一斉に鬨の声を上げた。

桶狭間の奇跡は、もはや過去の伝説だ。

俺たちは、これから、計算され尽くした必然の勝利を、積み重ねていくだけだ。

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