堕とされた果実⑥(完結)
これで、堕とされた果実の萩波編は完結です♪
夜が明ける。
闇は次第に色を薄め、小鳥達の囀りが聞こえてきた。
心地よい鳴声。
けれど、腕の中でクタリとする愛する少女はそれ以上に可愛らしく鳴いてくれた。
到底男を受け入れるにはほど遠い未成熟な体。
初めての痛みに泣きわめきながら、その穢れない華を散らした。
これで果竪は自分のもの
萩波は、自分の顔に狂喜の笑みが浮かぶのを感じた。
「これで私のものです」
もう誰にも渡さない
正式な婚姻も済ませた今、完全に自分のものとなった。
力のない腕をとり、その薬指に口づけをする。
この指にピッタリの指輪を贈ろう。
それもまた更なる果竪を戒める枷となる事を祈って、とびっきりの物を作らせる。
そうして首筋に顔を埋めると、果竪から呻き声が聞こえた。
構わず、たっぷりと吸い付くと、嫌がるように身をよじらせる。
嫌がってもいい
でも、絶対に逃がさない
「早く成長して下さいね」
早く大きくなって
そして
早く子供を産めるようになればいい
そうすれば、もう一つ枷が出来る
とびっきりの、とても重く頑丈な枷が
見つけたたった一つの光
失わずにすんだ唯一の光
もう二度と逃がさない
それから数時間後。
もぞもぞと自分の腕から抜け出るように起きた果竪に挨拶をすれば、泣かれてしまった。明燐が来て果竪を奪おうとしたので取り敢ず気絶させたものの、すぐに朱詩と茨戯も駆けつけて更に騒動は大きくなる。
「なるべくしてなった事です」
ふざけんな!!
そう怒鳴られ、女性陣が果竪を奪おうとする。
しかしそこで簡単に渡す自分ではない。
「果竪は私のです」
「いたいけな子供になんて事を!!」
「あんたは鬼よ!!」
「悪魔よ!!」
「顔だけでこの世の中渡ってけると思うな!!」
黄昏れるを通り越し、泣き伏す男性陣に比べればよほど根性のある女性陣。
けれど、それでも自分に敵う事はない。
その後、強引に果竪との仲を認めさせた萩波は、一つの指輪を贈る。
繊細な細工のされた指輪は、結婚指輪として果竪の指を美しく飾った。
「綺麗だね~」
「ええ、とても綺麗ですよ」
にっこりと笑い、萩波は果竪の薬指に口づける。
初夜のあけた朝にそうしたように。
「ずっと、傍に居て下さいね」
何があってもずっと――
キョトンとしながら、それでも頷く果竪に萩波は満足げに微笑む。
そう……ずっと一緒にいなければならないのだ
どんな事があっても!!
そんな……萩波の狂気じみた願いは、果竪の王妃就任という形でも果たされる。
暗黒大戦終了後。
間もなく凪国国王として任命された萩波のもとには、我が娘こそ王妃にと望む者達が多く集い、また自薦他薦問わず多くの姫君達が妃の座を望み侍る事となる。
しかそんな中、それら全てを押しのけ大戦中から連れ添った果竪を王妃へと据える。
驚き戸惑う幼い妻を必死に説得し、自分の隣に座らせた。
萩波は知っている。
自分が王になると知った時に、妻が身を退こうとした事を。
身を退き、何処か人知れず遠い場所でひっそりと暮らそうとしていた事を。
今も尚、怖々と王妃の席につく果竪に微笑みながら、萩波は幾つもの策略を張り巡らせる。
その全てが、果竪を自分のもとに留める卑怯で愚かなもの
本当の事を何一つ言わず、自分の心と愛を幾つもの嘘で囲んで作られた茨で覆うのだ
それが化け物と呼ばれ
卑怯で愚かで拒まれることを恐れる
自分の身勝手な罪と知りながら――
はい、これで萩波編は完結です♪
次は、茨戯編ですね~。こっちもあと、1,2話ほどですね。
頑張ります~。
あ、活動報告にてちょっとした企画やってるので、宜しければどうぞ♪