自由をかけた鬼ごっこ②
自由をかけた鬼ごっこ①にあたる話は、五月六日の活動報告にあります。但し、題名は違いますが。
とりあえず、今回の話は、果竪が逃げた事がばれた所まで。
誰が追いかけるのかは、皆様の一票で決まります♪
詳しい企画内容は、五月六日の活動方向にて!!
機嫌は、五月七日一杯までです。
果竪が居なくなった
その報せを受けたのは果竪が逃げる事を決意してから三十分もしない頃だった。
暗闇の中、あちこちからクスクスと笑う声が聞こえる。
楽しげに、困ったように、それでいて何処か面白そうに。
「どうする?」
「誰が捕まえる?」
「どうやって捕まえる?」
「誰が逃がしたの?」
「どんな風にして逃げたの?」
「鬼ごっこだね」
ケラケラと笑う彼らは、狂気を瞳に宿しながら楽しそうに計画を立てる。
だが、そんな彼らも宰相がスッと手で合図するとサッと笑い声を収めた。
「誰が逃がしたのか、どうやって逃げたのかは問題ではない」
その通りだ。
「大切なのは果竪を連れ戻す事。それ以外にはない」
「その役目、私がやるわ」
傍に居た侍女の一人が立候補をすれば、あちこちから声が上がる。
私が
俺が
自分が
僕が
あたしが
皆大戦を生き抜いた者達だ。
しかも唯生き抜いただけではない。
前線に立ち、死と隣り合わせの戦場を駆け巡った。
それでいて、酷く狡猾で冷酷非道な本性を持つ者達。
だからこそ、萩波に付き従う事が出来たとも言える彼らは、皆それぞれに自分こそが果竪を連れ戻すと言う。
「ふむ……俺としては誰でもいいんだが」
「明睡、アンタは動かないの?」
「動いてもいいのか?」
笑いながら向ける流し目は、ゾクリとするほど凶悪な色香を漂わせる。
それを軽く受け流す茨戯。
「まあ、無理よね。陛下が出かけている今、あんたがここの中心だし」
「そうだな。まあ、……少し時間がかかってもいいのなら、別にいいが」
別に必ずしも無理と言う事ではない。
きちんと、代わりを用意すれば良いだけのこと。
それに――
「是非とも、俺もその鬼ごっこに参加したいからな」
「鬼ごっこなんて酷い言い方ね。あの子からしたら死に物狂いで逃げてるのに」
「それがおかしいのさ。どうして逃げる?俺達は酷い事なんてしないのに」
すると、あちこちからクスクスという笑い声が聞こえてきた。
よく言うよ――そんな声も聞こえてくる。
「でも、今から考えれば、陛下が出かけていて良かったというか」
もし此処に萩波がいれば、怒り狂い周辺国を滅ぼしかねなかったかもしれないと明睡が楽しげに言う。
「案外、面白がって果竪を追いかけ回すかもね~」
朱詩がケラケラと笑う。
「ねぇ、どうせだからくじ引きしようよ~」
「くじ引き?」
「そうそう。それなら公平だよ~」
「私もそれで構いませんわ」
兄の隣で黙っていた明燐が、滴り落ちる様な紅く濡れた唇をペロリと舌で舐めながら呟く。
以前よりも艶やかな美貌に、昔なじみである仲間達もゴクリと唾を飲み込む。
そんな明燐の傍では、輝くばかりの美貌と妖艶な色香を讃えた寵姫が静かに立つ。
相変わらずぼんやりとした眼差しを浮かべているが、その心中は果竪の事しかないのだろう。
「カジュ」
ふっくらとした唇が果竪の名を紡ぐ。
「捕まえる」
「玉瑛、違いますわ。捕まえるのではなく、連れ戻すのです」
「ツレ戻ス」
「そう。だって、果竪がいる場所はもともと此処ですもの。だから、戻すのですわ」
そういうと、玉瑛はその言葉を噛み締めるように何度か呟き、ニコォと笑った。
男ならば抗いがたい魅惑の笑みだったが、明燐はふわりと笑ってその頭を撫でた。
「つれモドス、連れ戻ス」
そう言ってクルクルと回り出す玉瑛に微笑みながら、明睡は他の仲間達を見る。
「で、クジという案が出たが……他の者達もそれでいいのか?」
皆が同意するように頷く。
「なら、それに決定だな」
そうして明睡は簡易のクジを造り、それを皆にひかせる。
さあ……最初の鬼はだ~れだ?
さて、誰が追いかけるのでしょうか?