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桃花の午睡と遥かなる願い(大根)

萩波×果竪のお話です♪

一応、本編――第二部途中のお話です。


ハラハラと舞う桃の花



青空に生える桃色の花弁に思わず足を止めた




ハラハラ



ハラハラ




桃色の花弁は風にクルクルと舞ながら地面へと降り注ぐ





なんて綺麗なんだろう





手を伸ばし得た桃色の花弁に思わず眼を細める



見ているだけでも綺麗だったが、触って匂いを嗅げばもっともっと綺麗に思えてくる



そうして――雪のように空から降ってくる桃の花弁を眩しげに見上げ続けた








――どれほどそうしていただろうか




大根掘りで疲れ果てた体は眠りを必要とし、いつしか桃の木の根元に寝そべってしまった



桃の香りを肺一杯吸い込み、その香りに酔いしれる



柔らかな花弁に触れながら瞼が閉じていく



その上をハラハラと桃の花弁が降り注ぎ小さな体は次第に見えなくなっていった










「全くこの子ってば……何処でも寝るんだから」

「まあ今日は良い天気だから仕方ないさ」


桃の木の下ですやすやと眠る果竪を見下ろしながら茨戯が溜息をつき、明睡が困ったように微笑んだ。



「良い天気でも、王妃がこんなところで寝てるなんてバレたら恥よ。萩波、さっさとそこの馬鹿娘を連れて帰るわよ」


果竪の隣に腰を下ろしその寝顔を見つめる主に茨戯が声を掛ける。


いつものように長い吹き抜けの回廊を執務室に向かって歩いていた萩波。

それに従うように後ろから付いて歩いていた茨戯と宰相こと明睡は、突然足を止めて溜息をつく萩波の後ろ姿を訝しげに見つめた。


苦笑を浮かべる萩波に何事かと回廊に隣接する庭を見れば、何やら桃の木の下に見覚えのある黒いものが見えた。



あの色を持つのはこの王宮では唯一人



萩波に続いて慌てて桃の木の下に来てみれば、思ったとおり果竪がそこで寝転んでいた。

幸せそうな笑みを浮かべてすやすやと眠る姿は本当に可愛らしかったが、無防備に寝顔を晒す様に腹立たしさも覚える。


いくら王宮内は安全だとはいえ、王妃がこんなところで寝ていて大丈夫だなんて事はない。

それに、こんな風に大勢に寝顔を見せてしまうなんて……。


まるで自分達だけが知る宝物を一般公開されてしまったような気分だった。


「萩波」

「先に行ってて下さい」

「は?」

「もう少ししたら行きますから」


萩波を促せば逆に自分達が促される。

その事態に目を丸くするが、後ろから明睡に服を引っ張られる。

見ればクイっと指を後方に向け付いてくるように言っていた。


「でも……」

「馬に蹴られるぞ」

「……仕方ないわね」


そう言い、茨戯は明睡と共にその場を立ち去った。


「ん………萩波?」

「起こしましたか?」


まだぼんやりとした様子の果竪が隣に寝そべる萩波を眠そうな眼で見つめる。


「………お仕事……」

「今は休憩中なんですよ」

「そっか……」


そう言いながら再び襲う睡魔に抵抗する果竪に萩波は微笑んだ。


「寝てても大丈夫ですよ」

「……明燐…怒る……」

「その時は一緒に謝りましょう」

「……そうだね……」


そして再び眠ってしまった果竪の頭の下にソッと自分の腕を置き腕枕とする。



安らかな寝息


幸せそうな寝顔


もう二度と戻らないと思ったものが此処にはある



「卒業するまであと少し……」



市立天桜学園の高等部だけは卒業したい


そう願う果竪に自分は頷いた


今すぐ王宮深くに閉じ込めてしまいたいほどに独占欲は強く


傍に留める為ならばどんな手段だって厭わない


けれどそれはしない


自分の隣に立つに相応しくなろうとする果竪を支えると決めたのだから



「もう少しだけ……」



最初と比べて【箱庭の世界】で果竪の傍に居られる時間は少なくなってきた


色々と焦臭くなってくる情勢


直接この国には被害は及ばないが、炎水界の列強五カ国の一つとして采配を振るわなければならなくなる日は近いだろう


保健医として果竪の傍に留まれるのもあと少し



「本当に……王なんて面倒ですね」



身分と地位が邪魔して愛する者の傍にすら自由に行けない



明後日は週始め


週の始まりとともに果竪は再びこの手から離れていく


だから



「少しぐらい仕事サボって此処に居てもバチはあたりませんね」



いつまでも一緒に居たい


いつまでもこの寝顔を見ていたい


あと少し


そう思っても待ちきれず、早くこの手に愛しい存在が戻る事を今か今かと待ち望む


まるで望めば望むほど早く果竪が戻ってくるとでも言うように……



柔らかな風が果竪の髪を揺らす


その風に果竪が眠りながらも嬉しそうな声を上げる



「愛してますよ……果竪」



昔言えなかった言葉



言わなかった言葉を惜しみなく呟く



愛してる



だから




「ずっと傍に居て下さいね」





それが昔諦め、そして今ようやく叶いかけている




遥かなる時を越えた願い






え~~、甘い話頑張って見ました(汗)

って言っても、果竪は殆ど眠ってばかりいましたが……。


ど、どうでしょう?甘かったですか?(ドキドキ)


甘い話は読むのは好きですが、自分で書くのは苦手なのでコメント頂ければ嬉しいです♪


それでは、またvv

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