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狂愛(大根)



あれは私のものだ



「ご報告します、忌水の地にて、王妃様を追い詰めました」

「そうか」



部下の言葉にそう答えれば、腕の中で、寵姫が艶然に微笑むのが分かった。




逃げ出した小鳥――




美しく頑強な檻を造ったものの、入れるべき小鳥はすんでの所で逃げ出した




その小さな翼を広げ、外の世界へと羽ばたいていった




外の世界は危険と悪意に満ちている




ひ弱で脆弱な小鳥はすぐに死んでしまうだろう




そうなれば二度とあの美しい歌声は聴けない




二度と小鳥が自分達の元に戻ってこない





だから、捕まえる





あの小鳥は自分達のもの





今度こそ用意された檻の中に入れるのだ




「――馬鹿らしい」



小さな呟きが聞こえる。



「王は甘いのだ。どうせならば、手足をもいでしまえば二度と逃げられないものを」



次の瞬間、そう呟いたヤツラの一派たる男が炎上する



悲鳴と共に肉の焼ける臭いが辺りに充満した




助ける者はなく、床を転がるそれはいつしか動かなくなり、黒い塊となるまでそう時間はかからなかった。



腕の中でクスクスと笑う寵姫に、彼女が手を下した事実を知り指で顎を捉えて上向かせれば子猫が甘えるような笑みを浮かべる。




「果竪ホシい」



見た目とは裏腹の舌っ足らずな口調で寵姫は強請る。



「ホシイ、ほしイ、そのママの果竪」

「ええ、私も欲しいです」



そう――誰が四肢などもぐか。

傷一つ、かすり傷一つさえつける事は許さない。



身体に傷を付ける事も、心を術で操る事も



もし誰かが実行したらその瞬間、その者は自分達に始末される筈




「無傷でつれて来なさい」

「御意」



自分達が造った美しい鳥籠は空のまま




だが、鳥籠に主たる小鳥が入るのはそう遠くはない




「果竪、果竪、ハヤクあいタイ」

「ええ、会いたいですね」




そして今は遥か遠くにいる妻を思い微笑む。




どこまで逃げても、結局戻って来るのは此処しかない。

鳥籠で生き、主の望むままに歌い、そして子を産む籠の鳥。




「逃がしませんよ――私の愛しい小鳥」




二度と逃がさない




その為には、どのような手段だって用いよう





狂喜に彩られた王の笑みに異議を唱える者は誰もいなかった――




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