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大根と胸(大根)



とびっきりの逞しい大根の収穫にウキウキ気分。


食べればさぞや美味しい事この上なし。

しかし、その前に宮廷絵師にお願いし、この大根の見事な肢体を後世に伝えるべくその手腕を振るって貰おうとしていた果竪の前に現れたどこぞの貴族の姫君達は言った。



――え~、そんな寸胴でまな板な胸で16歳って信じられない



彼女達の悪意ある言葉は果竪の真っ平らな胸に突き刺さった。



姫君達のそれぞれに美しく豊満な肢体に、果竪の女性としてのプライドはズタボロとなったのである。





「王妃様はどうされたのか?」

「さあ?帰って来られてからずっとあの様子で」

「大根の収穫が上手く行かなかったのか?」

「それだったら今頃よりよい収穫に向けて力を尽くされてる筈よ」



侍女や侍従達が心配する中、自室の床に転がる果竪は大根のクッションを抱き締めながらぶつぶつと呟いていた。



「私だって……私だって好きでぺっちゃんこじゃないもん」



明燐には自分にない豊満な胸がある。


あの艶と張りも完璧。

弾力も見事で大きさ、形、質感、柔らかさ、色、全てが黄金比のもとに計算し尽くされた完璧な胸。


果竪は無意識に自分の胸に両手を当て、するんと断崖絶壁のように上空下へと何のとっかかりもなく落ちた感触に、その場に突っ伏した。



明燐の胸だったら(血涙)



果竪の脳裏に、明燐の見事なまでの肢体が蘇る。



大振りの白桃を思わせる――正にたわわに実った乳房は一目目にすれば例えようもない渇きを覚え、触れてしまえば最後、まるで麻薬のような強力さで相手の欲望をかき立てるだろう。


それはもう、見ただけで簡単に想像が出来る。


その白い乳房が掌の形につぶれ、また元の形に戻ろうと押し返す様を。

力を込めて揉みしだけば、なすがままに様々な形へと変化する白く柔らかな乳房を。


ぷるんと揺れる豊かな胸。

一見すれば、細身の身体に不釣り合いなほどの代物。


しかし、それは一つ一つを個々に見たからであって、全体で見ればそれぞれに完璧なパーツが寄り集まり見事な肢体を造りあげている。


そう――豊満な胸、括れた細腰、柔らかな白い肌にしなやかに伸びる四肢からなる芸術と言うべき女性美の極地に達する完璧な肢体、それが明燐の妖艶な肉体なのである。



なのに自分は



スカ



スカスカスカ



明燐の胸の真ん中に実る果実の位置を自分の胸の前で再現し、スカスカと宙をさ迷う感触を感じる。



「………………………」



ていっ!と近くにあった枕を床へと投げつける。


それは見事なまでに弾み壁へとぶつかった。

その様が、余計に腹立たしい。



自分だったら弾むどころか地面にめり込むし!!



だが、果竪はすぐにハッと我に返る。



いや、まてまて

落ち着け自分

物にあたったところで何の解決にもなりはしない



胸が大きくなるわけではないのだ――



グスンと果竪は鼻をすする。




別にいいし



真っ平らで問題ないし



大根は胸なんて気にしないし



果竪は悲しみをこらえる。

だが、脳裏に余計な記憶が込み上げてくる。


その明燐を除いても、他の旧友達(女性陣)が皆、形も大きさも質感も完璧な素晴らしい美乳の持ち主達であると言う事を。




胸が邪魔なのよね~



胸が重くて肩がこるわ



ってか、可愛い下着ないし



足下が見にくいのよね



by友人達の言い分




プツンと何かが自分の中で切れる音がした。



一度で良いから言ってみたいよそんな台詞っ!




「私だって……私だっていつかは大きくなるもんっ」



そして腰だって括れるもんと喚く。

だが、すぐにその台詞を言い続けてウン十年、いや、ウン百年が経過している事に気付き涙する。



くっ!こうなったら!




果竪は決意した。
















ショリショリショリ




ショリショリショリ





凄まじい気迫と共に彫刻刀で何かを削る果竪。



「あの子は一体何をしているのかしら?」


「私達にもさっぱりーー突然彫刻刀を持ち出してこられて」



そう言いながら困り果てる侍女&侍従達。

明燐は果竪の方へと歩いていく。



「果竪、一体何を」

「よっしゃっ!出来たぁぁ!」



ガッツポーズ片手に叫ぶ果竪に明燐は後ずさる。



「果竪?!」

「これで、これで念願のものがっ」

「果竪、それは何ですの?」



明燐の質問に、果竪は力強く答えた。




「胸を大きくするパットよ!」

「パット……」

「モデルは勿論明燐よ!大きさも形も質感もねっ」

「そうですか、私のーー」



パンっ!と次の瞬間果竪の手から造り上げたばかりの二つのパットが奪い去られる。



「私の胸は大根かぁぁぁぁ?!」



明燐の叫びに、遠くでハラハラとその状況を見守っていた侍女と侍従達がブッと噴出す。



大根



そう、果竪がよりにもよってパットの材料にしたのは大根。

それを綺麗な乳房の形にくりぬいたのだ。



モデルの胸は勿論明燐である。




が、ここで色々と突っ込みどころがあるだろう。




形と大きさはいい。

だが質感ってなんだ。


それだと、どう考えても明燐の胸が大根と同じ硬さだと言っているようなもの。



いや、言っているなんて問題ではなく



「明燐みたいな胸が欲しくて何が悪いのっ」

「だからって大根で作らないで下さいなっ」

「明燐の乳房の滑らかさ、張り、柔らかさを実現するには大根でしか得られないんだから仕方ないじゃん!」

「-----っ!」



次の瞬間、王宮を揺るがすような轟音が響き渡ったのは言うまでもない。


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