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堕とされた果実(果竪編)①

出そうかな~どうしようかな~と迷っていた果竪編。

ゴールデンウィークにあわせようかと思いましたが、フライングで出してしまおうと思います。



暗いので、注意して下さい!!




 家が焼けた

 村が焼けた

 村人が焼けた



 友達が死んだ

 村のみんなが死んだ

 両親が死んだ




 ミンナコロサレタ




 自分がようやく隠れ場所から抜け出し後、全てが無くなっていた。

 何もない。

 家も物も人も。

 肉の焼けた匂いが辺りに立ちこめていた。

 崩れた建物は完全に炭となり、既に炭化した村人達の遺体と混ざって何処に何があるかも分からない。



 お父さんは何処?

 お母さんは何処?

 友達は?

 村のみんなは?



 髪も服もぼろぼろ。

 肌も傷だらけで、顔も煤で真っ黒だった。

 煙が目に染みたのか、それとも悲しいのか涙がボロボロとあふれ出す。

 火は鎮火したのに、異様な熱気はまだ残っていて肌を傷めるが、それすらも気にならない。



 そうして夜になり、再び朝が来て


 風に吹かれ雨に打たれ


 何日経ったか分からない


 でも、ずっとその場に立ち尽くしていた


 何も無い、誰もいない、みんな無くなった



 無くなるって何?


 どうして誰もいないの?



 もはや涙さえ零れない。

 ただ、ぼんやりと何も無くなった村を見続ける。

 食べ物を摂取しない体はやせ細り、排泄すら訴えなくなった体。

 それにすら気付かず、ひたすら村を見続けた。

 いや――見ているはずなのに、何もミエナカッタ。



 心が凍り付き、感覚が麻痺した。



 ああ、私はおかしくなってしまったんだ


 誰も見えないなんてありえない


 誰の声も聞こえないなんてありえない


 いつもは騒がしいくらいの賑わいは何処にいったの?


 家畜や動物達の鳴声すらも聞こえないなんておかしいよ



 気付けば真っ暗な世界が何処までも広がっていた。



 どうして誰もいないの?


 ねえ何処にいったの?


 優しい笑顔

 優しい声

 優しい掌


 忘れる暇がないほど向けられてきたそれら


 けれど、何故か記憶から薄れていく



 一人残された悲しみすら凍り付き



 連れて行ってくれなかった恨みすらも消えていく



 怒りも悲しみも……そして自分の存在すらも深淵の闇へと消えていった






 最初に動き出したのは耳だった



「果竪、果竪!!」


 名を呼ぶ声は酷く懐かしい。

 続いて、体を揺さぶられる感覚があった。

 そして――真っ暗だった視界に一気に色が戻り、目の前に涙が出るほど懐かしい人が居た。


 カサカサに乾いた唇がその名を紡ぐ。

 けれど、カラカラに乾いた喉が音をつくる事が出来ず、結局声にはならなかった。


 しかし相手はそれに気付いてくれたのだろう。

 それまでの強ばった表情がみるみるうちに和らぎ、泣きそうな笑顔を浮かべて自分を抱き締めてくれた。



「果竪、貴方だけでも無事で良かった」



 果竪……それは私の名前



 抱き締められ、名を呼ばれる度に果竪は少しずつ思い出していく。



 大切なものの事を


 そして自分が受けた地獄のような苦しみを


 そんな中で、果竪はその名を再び呟いた



 自分の名前すらも忘れてしまった中で一番最初に思い出した名前




 萩波



 私の初恋の人の名を



暗いですね~(汗)

あまりにも暗すぎてお蔵入りにしようかと悩みましたが、とある方が果竪視点もというアドバイスを下さり、思い切って掲載してみました♪

感想とか頂けると嬉しいですvv――返信遅いですが(汗)


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