第五章 歪みの始まり
前回のあらすじ
王国に王国騎士として集められた村人達だったが…
僕は馬車に乗りながら周りを見る。正直村から出るのは初めてのことだ。見たことがない建物や人が大勢いる。王国の門をくぐると見たことがない店が増えた。しばらく経って馬車が一つの建物の前で止まる。馬車から降りると騎士のような人が挨拶をした。白い鎧に包まれた男性や白いローブを身に着けている女性が複数人いた。降りてから僕らは自分の場所を聞き荷物を置く。思っていたよりも中はきれいで一安心だ。あの国王なら汚い部屋に閉じ込めそうな気がする……。
その日から僕らは王国騎士として毎日鍛錬をした。年齢別で分かれて剣術を学ぶ、何人かついてきた女の子たちは白いローブを身に着けている女性のところに行った。僕は担当してくれると言う男性に尋ねた。「なんで男性で魔法を使う人はいないんですか?」すると担当してくれると言う男性は目をまん丸くして大笑いした。「魔法なんてそんな物…一言で言うと魔法って言ったってリスクがでかい、それに強いわけでもない。そんな仕事は女共にやらしておけばいいんだよw」そう返された。正直、分かってはいたがこの人たちとは合わない、これから地獄かもしれない…そう思った。その日から、文字通り地獄が始まった。まず基礎体力をつけるために永遠と走らされる、その後はただひたすらに素振りをし続ける。昼の食事は30分だけ、朝太陽が登る前か始まり夜は太陽が沈むまで続く。そんなサイクルを大人から子供までする。当然倒れる人が続出した。それなのに担当者は一旦止めて休憩というわけでもなく、ただ僕たち暴言を言い続けた。そんなことがあり、12歳だった僕は気がつけば15歳になっていた。とは言っても一度も戦場に出たことはない。お父さん達は何度か行ったらしいが見回りをするだけで終わりだったそうだ。
そんなある日、とある村に化け物が出たと通報があったらしい。お父さん達は先に行き、僕たちもその後に続く予定だった。ただ僕たちの方は少し遅れてしまい、急いで通報があった村に行った。周りを見ながら恐る恐る進むと突然お父さんと同じ団の人の声が響いた。まるで全身から出した悲鳴のような……僕たちは急いで悲鳴が聞こえた方へ行く。僕は途中でコケてしまい、自分の止血をして向かった。やっとついた、そう思い周りを見渡すと驚きの光景広がっていた。それはお父さんたちの団員の人達がバラバラになってしまったり、原型をとどめていなかったり。僕は驚きそのまま座り込んでしまった。すると奥の方で何か黒い影のようなものが動いた気がした。たまたま僕がいる所が茂みになっていて相手からは見えなさそうな位置だった。僕は恐る恐る茂みから黒い影のようなものの方を見る。するとその黒い影のようなものの手にはナイフのようなものを持っていて黒い液体のようなものがついていた。視線を上に向けると羊のような被り物をした男性のようなものが立っていた。それを見た瞬間僕はあの時メリーを連れて行った連中だと一瞬で分かった。周りの様子を疑っているようにも見える。すると羊の被り物をような物をした人の周りに何人か同じような人が集まって何か話をしているようにも見える。耳を澄ましても何も聞こえない、テレパシーとかでの会話なのだろうか?そう考えているとナイフのような物を持った人が前に掲げた瞬間当たり一面の人達は一瞬で消えてしまった。僕はそれを見て、もし僕がここにいることがバレたら僕も殺されてしまうかもしれない。そう思うと体が固まってしまい自然と息を潜めた。羊の被り物をようなものを被っている人達は一瞬でどこかへ消えてしまった。恐怖のあまりどうやっていなくなったのかはわからない。僕はこそっと茂みから、出た。すると足元に誰かの体の一部が落ちていた。これが誰のものなのか、どこの部分かは分からない。ただ分かることは圧倒的な力の前で僕は大切な家族がいたのにも関わらず動けずにいた。僕は前に出るどころか戦いから逃げた愚か者だ。僕は自分の弱さを突きつけられたような気がした。僕は自分の弱さを噛み締めながら長い帰路についた。足がいつもより重いせいでいつもよりも時間がかかるような気がする。なんとか王国に戻った。そのまま僕は王国騎士のいる所に行った。