表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/13

8.配信

「み、皆さんこんにちは~。初めまして。セーバチャンネルのセーバーです。よろしくお願いします!……………あ、あの、こんな感じで良いのかな?」


「良いだろ。というか、こういう配信は若くてかわいい女の子だけが映って活躍するのが人気あるんだから男の俺に話しかけないでよ。映ってなくて声も入ってなければユニコーン共は怒らないんだから」


「よ、よくわかんないけど何かよくないこと言ってない?大丈夫それ?この部分聞いた人、多分即行でブラウザバックすると思うんだけど?」


俺たちは話していた通り実際に配信というものを始めてみた。

ダンジョン配信者なんてゴロゴロいるから残念ながら最初から大量の視聴者がいるというわけではないが、さすがにそこを俺も心配はしていない。

好井はまず強いし、それに加えてビジュアルもいい。

一応小さい仮面で目の周りは覆うつもりのようだが、それだとしても顔立ちが整っていたりスタイルの良さなんて言うのは見えているのだからそういう面でもファンは獲得できるだろう。


逆に言うと、邪魔なのは俺なんだよな。

好井は撮影とかよく分からないということを言っていたので俺がカメラマンをすることとなったのだが、こういう「かわいい女の子が実は強くて活躍するぜ!」みたいなタイプの配信で男が映り込むのは非常によろしくない。

本当は俺が撮影すること自体避けた方がいいのだが、そこは致し方ないとしか言えないだろう。

一応できるだけ緊急でない限りはカンペなんかで会話とか指示とかは行なっていくつもりだ。


ということで早速カンペにマジックペンで指示の内容を書いて、


『このダンジョンの紹介』


「え?あっ。今日来てる場所ね?今回はこの、魔工学ダンジョンに来てます!皆さんも1回くらいは名前聞いたことがあるんじゃないかと思うんですけど、魔法関係で有名なダンジョンですね!魔力を保管して置ける魔結晶とかコアとかの供給源になりま~す!」


好井が俺の指示通り元気よく紹介してくれたように、今回来ているダンジョンは魔法関係に特化したダンジョンとなっている。

俺も一応そういうコンセプトで作っており、中にいるモンスターはほぼ魔法で攻撃を仕掛けてくるものが多いな。


逆に、攻略者側の魔法の技術も必須となっているため挑戦できる人も限られる場所とはなってしまっているが。


「それじゃあ、さっそく入っていきましょう!」


ある程度ダンジョンの紹介を終えたところで早速ダンジョンへと入っていく。

中は今までのダンジョンとはまた全く違う景色となっていて、辺りにキラキラと輝くものが多く存在している。

それらは大半が石のようなものなのだが、


「これが魔結晶だね。綺麗でしょ~」


正式名称は魔結晶。

中に多く魔力を含んでいて、魔力をためておくタンクにもなるし、魔力がなくなっても素材的に魔力の操作などが便利になるようなものなので、魔法使いが魔法を使う際の触媒なんかにすることも多い。

ちなみに、好井は話によるとこれがあってもなくても制御はばっちりであるため必要はないのだとか。


「この小さいのだとあんまり高くは売れないけど、もうちょっと奥で大きい部分とかがあると思うからそういうのを採掘すれば結構なお金になるんじゃないかな?」


ダンジョンの中、その非日常的な景色を視聴者に見せるためにあえてゆっくりと進む間、好井が値段の話を始める。

まだまだこういった魔法関連の素材は不足しているから高く売れるものが多く、この魔結晶もまた工学での買取が行なわれている、

特に大きい物となると工業用などいろいろな面で使えるということで、下手をすれば数十万から数百万は1つで稼げてしまうかもしれなく来には価値がある。

もちろんそういったものを手に入れるためにはかなり奥の方まで進んでいかなければならないのだが。


そんなことをしつつ進んでいけばさすがにダンジョンであるため、


「あっ、さっそく第一村人ならぬ第一モンスター発見しました。それじゃあ早速戦ってみましょう!」


モンスターと遭遇する。

出てきたのは雑魚モンスターの代表格であるゴブリン。ただ通常の個体とは違って杖を持っていたり帽子をかぶっていたりして、魔法使いらしい雰囲気が出ていた。

所謂ゴブリンメイジと呼ばれるモンスターだ。


好井が大声で元気よく解説したため向こうもこちらの存在に気づいたみたいで、視線と杖を向けてくる。

そのまま、


「おっ。出ました!これはファイアボールですね!」


魔法がこちらに向かって放たれる。

使われたのは初歩的な魔法で、火の玉を飛ばすだけというものになる。とはいっても攻撃であるためこんなに普通は悠長に構えてはいられないのだが、流石は我らが好井なだけあって、


「ほいっ。まあ、そんなに強い魔法じゃないですし剣を魔力流して強化すれば簡単に斬れますね」


使うのは、いつもの光の剣ではなく市販の安っちい剣。

それこそ少し強めの敵と斬りあえば簡単にかけて折れてしまうようなその剣で、綺麗に魔法を消滅させてしまったのだ。本人は斬るなんていう言葉を使っているが、実際は完全消滅だ。

俺にも多くの有名な冒険者にもできない芸当だろう。


さすがにそんなものを見せられれば、今までは普通のダンジョン配信だと思っていただろう反応の薄かったコメント欄もざわつき始めて、


 :え?何今の?

 :何やったの?

 :合成?すごいリアル(本物の魔法見たことないけど


「いやいや。合成じゃないですよ?……………ほら、ほらほら。何回きても同じことできますし。やろうと思えば、こんなことだってできますよ?」


跳んでくるファイアーボールを次々と消滅させていく好井。

その異様な光景に、合成にしても技術が高いとコメント欄が加速していく。

全く理解が追い付いていないというものも多いようで、困惑の声が多いな。だが、あえて俺はそのコメント欄を無視するように指示して、


「じゃあ、そろそろこれだけやるのも飽きてきたし倒しちゃいますね!『ライトアロー』」


とどめを刺させる。

光の矢が飛んでいき、綺麗にゴブリンの頭部を貫通して倒すことに成功した。


 :え?何今の魔法?

 :ライトって言ってたし光属性?

 :光属性て滅茶苦茶レアなやつじゃん!?

 :というか、一撃!?


ただその光景がまたインパクトのあるもので、コメント欄のざわつきはさらに激しくなっていく。

拡散でもされてるのか少しずつだが人も増えてきてるし、これは間違いなく配信成功しそうだ。


勝ったな。風呂入ってくる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ