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11.時間稼ぎ

好井が目の色を変えた理由。

それは、スマホに表字があったからだ。

『ダンジョンからモンスター大量発生』と。


「悪いけど配信切っといて!というか、安全なところにいて!すぐに終わらせるから!コアを破壊したらすぐ迎えに戻るね!!」


「え?……………は?え?」


俺に一方的に言いたいことだけ告げて、走り去っていく好井。その向かう先は、このダンジョンのダンジョンコアがある方向。つまり、さらに深い階層である。

予想はしていたが、それでも事前に起きることを知っていたということを隠すために困惑するふりをしておく。

ついでにと言うわけではないが、


「ここに、俺1人でいろと?……………無理では?」


思わず独り言をと言った雰囲気で、視聴者に好井へ悪印象を抱くような印象操作を。

今のところ好井は大事な情報を見たかと思うと突然カメラマンをダンジョンに置き去りにしたような形だからな。しかも、そこそこ進んでるから絶対に1人じゃ脱出できないような階層に。


ただ、そうして視聴者に印象操作を行ったところでそれ以上何かできるようになるわけでもないので俺は指示通りに隠れて過ごす。

とはいってもダンジョンのモンスターに対して俺は襲わないように指示してあるから全く隠れる必要はないんだけどな。雰囲気だ。雰囲気。

あと、隠れる指示には従ったが配信を切る方には従ってない。いつ何があるか分からないし、できれば残しておいた方がいいと思ったしな。


「何が、起こってんだ?」


視聴者に俺が何をしているのか伝えるという意味も込めて独り言をつぶやきつつ、スマホを使って情報を集めていく。

やはり今入ってくる各種情報は、ダンジョンから次々とモンスターが湧き出てきて人々を襲っているという物。そしてとくに、ドラゴンとかの飛翔できるタイプのモンスターたちが一気に飛んで行って発電所とか変電所とかダムとかを次々に破壊して回っているというニュースが取り上げられてるな。

まさに俺の計画通り、と言うべきか。


俺が今回やったのは、所謂スタンピードと言われるやつだ。今回起きたことから分かるように、ダンジョンからモンスターを外に出して人を襲わせたり暴れさせたりできるというものになっている。

一応俺の方から支持も出せて、重要なインフラ施設とかを破壊出来てるのは俺の指示があったからだ。


「うわぁ。被害ひどい。何だよこれ……………あいつ、何か知ってんのか?」


すぐに好井が動いたことから考えて、そしてダンジョンコアを最初に見た時破壊しようとしたことから考えて、好井がこのスタンピードという物を知っていたのは間違いない。

そこの部分をもし事前に知っていたとなればなぜ言わなかったのかと騒いで攻撃的になるやつも出てくると思うから、一応匂わせをしておく。

今まできっと言ったところで信じられなかったし逆に妄言を口にするなとか批判が殺到してただろうけど、そんなことは忘れて批判できるんだから人ってすごいよな。いろんな意味で。


で。今回こうしてスタンピードを引き起こしたわけだが、さすがに俺も無差別に殺人と蹂躙がしたわけでもない。俺とて、消す人間は選んでいるんだ。

攻撃対象は、好戦の意思を示す者、他者を押しのけて盾にするなり何なりして逃げようとするもの。そして、この機に乗じて色々と悪さをしようとするものだ。

反撃もできないし他の人も蹴落とさないし犯罪に手を染めることもない、そんな人間を俺はい生き残らせたい。

もしそういう人間だけを残せば、きっとこの世界から争いは消えるから。


「う、嘘だろ。あの人がやられてる?しかも、あの人も?え?あの人も?」


人的被害は、有名人にもかなり及んでいるみたいだ。ついでに言うと、ここでの有名人と言うのは冒険者が多いな。

とはいえそれも当然。基本的に今まで冒険者をしてきたのだから武器は取って攻撃をしてくるだろうし、攻撃対象になる。しかも、冒険者とは言っても好井と違って最高でもドラゴンに傷一つ付けられないくらいの強さしかないから、対処は楽、非常に楽。

それこそ、ゴブリン100匹で囲んで数で攻めれば倒せる。


軍の方から色々と対処もしようとしてるみたいだが、当然そんなことを俺が許すはずもなく基地の類も発電所と同じくらいの優先順位で破壊させてる。滑走路も塞いで火薬庫に火をつけて爆破して。

隠されているだろう基地も今まで頑張ってダンジョン関連の力も使いながら探したから、そういったものももちろん破壊している。

ちなみに発電所を破壊しているのは割と防衛設備に電力を使うものが多いからだな。

予備電源とかもあるんだろうけど、できるだけ数を減らしたい俺としては優先したかった。これによて電気がないと生きられない人などに影響は出てしまっただろうが、そこはこれから俺がその命を背負って生きていくしかないだろう。


「国がもう滅びそうなレベルじゃん」


攻撃対象が無差別じゃないから圧倒的な殲滅力とまではさすがに言ってないが、それでも今までダンジョンが大切にされてきたからこそその数は多いし問題はないくらいのペースになってる。

いくつかすでに都市は人口を1割以下にできてるし、小さい国でも同じような状況にできてそう。

俺が望む人達だけが順調に生き残ってくれているのを感じる。


このままあと1日あれば完全にこの世界を俺の理想とする世界にできる。

いや、場合によってはもっと早く、それこそ数時間で達成できるかもしれない。

が、


「ごめん、待った!?」


流石にこれで終わるなら俺もここまで準備を重ねずもっと早い段階で計画を実行していた。

俺がここまで面倒な手段をとる羽目になったのは、この目の前のあまりにも強すぎる絶対者がいたからだ。


「いや、待ってないけど……………何なんだ?これ」


「これは……………いや、今はそんなこと言ってる場合じゃないね。後で話すから今は移動しよう。ダンジョンコアは壊したし、ここはもう崩壊するよ」


「え?は?」


「ほらっ!早く!行くよ!!」


「……………あ、うん」


このダンジョン、相当長くて強いモンスターもいたはずだというのに、ものの数分で片づけられてしまった。しかもダンジョンコアを破壊されてしまったため、もうこのダンジョンは終わり。

全てのモンスターが消え、二度と現れる事はなくなる。

それどころか崩壊と言って、最下層から少しずつダンジョンが崩れていくんだ。

そして最終的に。ここは完全につぶれて何もなくなる。


「本当に、何なんだよぉ」


かなりの速度で走る好井と、それを追いかける俺。

しかし、この数分だけの好井の拘束しか考えていないわけではない。

俺は新しい仕掛けを起動させ、


「ん?……………う、うわあああぁぁぁぁぁ!!!????」


「っ!?危ない!」


突然現れた、新しいダンジョンへと俺は落ちていった。

そして俺を助けようと手を伸ばした好井も俺と同じように、しかし全く別のダンジョンへと落ちていくのであった。

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