ケドノミーグラシ症候群
あまり噛み合わない。
修学旅行。
同じ班。
同じ部屋。
だけど仲がいいわけではない。
余りものに近い感じ。
喋ったこともない。
その女子が喋った瞬間、沼が見えた。
深い深い、ぬかるんだ沼が。
「今日は、色んな場所に寄れて、すごくすごく楽しかったけど、
今、足がパンパンで、歩きすぎて、もう歩けないって感じなんだけど、
美味しいものたくさん食べて、たこ焼きが特に美味しくて、本当に充実してたけど、
上顎は火傷して、皮めくれ半端なかったんだけど」
「そうね」
語尾に【けど】を多用して、長々と喋ってくれた言葉たちを、たった三文字で、まとめあしらってしまった。
まだ、語尾に【けど】以外を使ったのを聞いていない。
たぶん、語尾を【けど】のみで暮らしているのだろう。
明日は二日目。
先が思いやられる。