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女学院デビュー前哨戦ですわ、お兄様 3

「まぁ! ディルワース公爵令嬢に反論を? はじめての社交界で?」

 信じられないと目を丸くするのは、ミス・エイヴォリーだった。他の方々も驚いている。

「本当だとも。あぁ、いつまでもここにいては、ゆっくりと話もできないな。そろそろ、テラスの方へ行くとしようか」

 マレーネ様に促され、わたしたちはお茶会の会場となるテラスへ移動することになった。

 ブラックマン男爵令嬢とガヴァージュ男爵令嬢は、まだいらしてませんけどね。



 彼女たち、失敗したわね~。ネックス子爵令嬢とターナー子爵令嬢は、笑顔で見つめ合っていた。ヒューズ伯爵令嬢は、ぼそっと一言「馬鹿な人たち」

 女学院社交界のランクが変動した瞬間だったわね。

 招待された時刻よりも少し遅れて訪ねるのが、社交界のルール。でも、中には少しどころかずいぶん遅れて来る人たちもいるらしい。そういう人達は、主催者を待たせることで自分のステータスをはかろうとしているのだそうよ。

 男爵令嬢たちも、そんな魂胆があるのではないかしら。結果は、この通り。



「さあ、どうぞ」

 通されたテラスは、涼しげな雰囲気でまとめられていた。

 テーブルを飾るお花は、白とグリーン系でまとめられている。白い花は、昨夜の舞踏会を思い出させてくれた。テーブルクロスは鮮やかなネイビーで、シルバーのティーポットやスプーンが良く映え、用意されたお菓子も色鮮やかで美味しそう。

 席についたら、すぐにお茶が運ばれてきた。う~ん、いい香り。ベリー系だけじゃなくて、バニラの甘い香りもするわ。マレーネ様が口をつけたのを見て、わたしもいただく。

「美味しいですね。とてもいい香り」

 ミス・ランデルがほぅっと息を吐きながらつぶやいた。皆さん、「ええ、本当に」とうなずいていらっしゃる。



「それで、そのぅ……先ほどのお話の続きなのですけれど……ミス・マレフィセントは、ディルワース公爵令嬢にどのような反論を?」

 続きが聞きたくてしょうがないといった雰囲気で、ミス・ペリングがそっとマレーネ様のお顔をうかがっている。

「さっきも言った通り、私は伯爵が自己満足で彼女を舞踏会に連れて来たと思い込んでいた。人魚姫のような美しい人だったから、伯爵家の権力を振りかざして逆らわせず、自分の見栄のためだけに彼女を着飾らせたのではないか。それでは、まるで見世物として連れてこられた動物か何かのようではないかと──」

「それは違うと、ミス・マレフィセントは、おっしゃった?」

 ミス・ペリングがぐぐっと身を乗り出して期待に満ちた視線を送る。



「ああ、その通りだ。それは視野の狭い発言だと言い、私の言葉は、ダンジェ伯爵への侮辱でしかなく、強い憤りを感じていると。自分はドレスやアクセサリーのマネキンではない。ドレスもアクセサリーも、自分を引き立てる脇役でしかないと、はっきりおっしゃったよ」

 そのような言い回しをしたわけではないですが、そうですね。主役は私だと、超一流モデルも気後れしそうなポージングで、主張していましたね。ええ。めちゃ格好よかったです。あの人が、将来の義理の姉──! 鼻が高いです。めちゃくちゃ自慢したいです。

「彼女だけじゃない。ステラからも怒られてしまったよ。的外れな心配は、不愉快だとね。時間がたてばたつほど、自分の言葉が恥ずかしくてたまらなくなってくるよ」



「だって、わたしはちゃんと、アゲート卿にエスコートをさせてほしいって、マーガレットの花と共にお願いされましたもの」

「まぁ! あ、それで昨夜の髪飾りはマーガレットが?」

「髪飾りだけではなくて、レースもマーガレットだったように記憶していますわ」

 みなさん、よく見ていらっしゃいますね。ネックス子爵令嬢とターナー子爵令嬢が、嬉しそうにはしゃぎながらおっしゃる。それが、他の皆さんにも移って、素敵! と大はしゃぎ。

「こんなことを申し上げたら失礼かも知れないけれど、意外ね。アゲート男爵閣下は、傭兵でしょう? 無骨者の集まりのような傭兵の男性が、マーガレットと一緒に?」

 ヒューズ伯爵令嬢が、パチリパチリと瞬きをする。



 マレーネ様もこの話は初めて聞くので、

「本当に意外だ。きちんとエスコートを申し込まれていたのか……」

「ええ。マーガレットを選んだことに深い意味はなかったようですが……」

 あの時のくすぐったいような感動を思い出してしまって、頬が緩むわ。そんなわたしを皆さん、ニマニマとした顔で見ていらっしゃる。

「ちょ……い、いやですわ。そのように見ないでください……っ」

 恥ずかしいじゃないですかっ! 羨ましいですわ~とニヤニヤされる。ちょっ、ちょっと。何か、流れを変える何かがほしいわっ。一人内心であたふたしていると、メイドがひとり、そっとマレーネ様に近づいて、何かをささやいた。マレーネ様がうなずくと、メイドもうなずき返し、その場を離れていく。何ごとかと思えば、マレーネ様が席を立ち、

「ブラックマン男爵令嬢とガヴァージュ男爵令嬢がいらしたそうだ」

 指定された時刻から、優に三十分以上経っているわよ。は~、すごいメンタル。

22年1月20日より、アマゾナイトノベルズ様から『悪役令嬢だけど立場が逆転しています!~助けてください、お兄様~』が電子書籍配信していただけることになりました。

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― 新着の感想 ―
[一言] ちょっと遅れて来ると大遅刻は違うと思うん…王宮でのパーティーで王族が最後に…とは違うんだしねぃ? ワタクシ(達)スゴいのよー!←頭の中が ワタクシ(達)エライのよー!←頭の中が なんてい…
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