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ティーズ・デイですって、お兄様 2

誤字脱字報告、ありがとうございます。……なんと見落としの多いことか……。

「それで、朝早くからお見えになられるなんて、何かございましたか?」

 今日のグロリアさんは、チャイナ風のジャケットとネイビーのフレアスカート。スカートと同色のジャケットには、胸元に蓮の花の刺繍があって、袖口はやや大きめのデザイン。

「貴方もスーも、ティーズ・デイを知らないでしょう? それに女学院社交界のことも。だから、情報の開示とこれからを見据えて戦略を練らなくちゃ、と思って……」

 わたしの場合、ティーズ・デイとは何ぞや? というところから始まる。



 昨夜、マレーネ様から「急ですまないが、明日のお茶会に参加してもらえないだろうか?」 とお誘いをいただいたわけだけども……。

「ティーズ・デイは、女学院の社交行事ね。女学院に通う生徒は、裕福な庶民が多数派で、春の舞踏会には行けない方が多いの」

 そこで、舞踏会に参加した貴族の生徒たちが、あぁだった、こうだったと舞踏会の様子をレポートするのだそうだ。このレポートの出来によって、女学院という小さな社交界のランク付けが変動するらしい。



「ということはつまり、女学院の中では庶民の令嬢たちの方が強い?」

「ええ、そうよ。家の力を使われたら、確実に負けてしまいますから、そのあたりは上手く取り繕っていらっしゃるけれど、女学院社交界で一番強いのは庶民の令嬢たちなの」

 女学院社交界における、大きな派閥は、庶民派、一代貴族派、世襲貴族派の三つ。一代貴族派というのは、領地を持たない貴族で構成されている派閥だ。

「庶民派の筆頭は、ミス・レイトンとミス・ランデルの共同サロンね。ミス・レイトンのお父様は、レイトニー出版を経営していらっしゃるの」

「レイトニーって、あの⁉」

 思わず腰を浮かせてしまう。レイトニー出版と言えば、知らない乙女はいないのではないかと思うくらい、有名な出版社。女性誌ピアレスハートを出版し、ロマンチック・プリンセスというレーベル名で、たくさんのロマンス小説を世に送り出している。



「……有名なんですか?」

 知らない乙女がいたーっ! ご自分でお茶を淹れ、席に座ったグロリアさんは、目を丸くして、首をかしげている。ピアレスハートやロマンチック・プリンセスのことを言うと、

「あぁ、あの……。そう言えば、ヴィリヨ商会に取材の申し込みが来ていましたね……」

 そういうことなら、取材は受けた方が良さそうです、とドライなつぶやき。

 グロリアさん、ピアレスハートから取材を申し込まれるって、すごいことですからね?



「ミス・ランデルは、もしかして、ランデル商会とかかわりが?」

「ええ、そうよ。商会長のご令嬢なの。お互いに良い関係が築けているみたい」

 ミス・レイトンは、お茶会や雑誌などでランデル商会の商品を宣伝する機会を提供する。お茶会には新商品や話題の商品を提供することで、ミス・レイトンのサロンの株があがる。

 また、サロンという場で集められたおしゃべりの内容は、現役の女子学生たちの生の声ということで、雑誌や小説づくりにも反映される──かもしれない。



「これで人気にならないはずがないわよね。と、いうわけでこのサロンを目の敵にしているのが、一代貴族派のブラックマン男爵令嬢とガヴァージュ男爵令嬢のサロンね」

 特にブラックマン男爵令嬢は、商売をしていらっしゃることもあって、ミス・レイトンとミス・ランデルのサロンをにらんで、バチバチやっているらしい。

 ──男爵令嬢たちが、一方的に。庶民のくせに生意気よ、といった感じかしら?



「お母様方の影響もあるのでしょうけど、あまり評判は良くないみたい。自慢話が大好きで、自分たち以外の女性や、一部の男性を下に見るのも大好きな方々のようよ」

「そういう方なら、お付き合いは必要最小限でかまいませんね?」

「ええ、もちろん」

 わたしが聞けば、エル義姉様も即答してくださった。エル義姉様も、ブラックマン男爵夫人たちとは面識がないらしい。そういう人達なので、わたしとの繋がりをきっかけに近づいてこられても困るそうだ。では、本当に必要最低限のお付き合いで。何ならスルーしてもよさそうだ。さて、女学院社交界の勢力図に関する話はまだ続く。マレーネ様のことだ。



「世襲貴族派のサロンは、ディルワース公爵令嬢のサロンが一番大きいのだけど……実はあまり勢いがないのよ。昨夜も言った通り、コミュニケーションがね……」

 はあ、とエル義姉様がため息をつく。マレーネ様、ツンデレですからねえ。ツンデレ語を理解するのには、コツがいりますから……。

 女学院で一番勢いのあるミス・レイトンたちのサロンが、マレーネ様のサロンを支えてくださっていることもあり、女学院ではそれなりの発言力を持つことができているらしい。



 庶民派の生徒たちは、社交界というものに憧れを持っている。だから、自分たちでも真似ができるお茶会を頻繁に開き、社交界の情報を集めて、素敵ねえとうっとりしているそうだ。

 その一方で、一代貴族派、世襲貴族派の一部の生徒は「社交なんて、自立した女には不要な習慣」であると考えているらしい。それは……何ともコメントに困る意見ですね……。

「浅はかですねえ……。自立した女にこそ社交界は必要だと言うのに……」

 くくっと笑うグロリアさんは、めっちゃカッコいいです。花ではなく、華。憧れるわ~。


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― 新着の感想 ―
[一言] グロリアさん…カッコいいなぁ…姐さんとお呼びすること、確定ですねっ!…ていうかむしろアニキとお呼びしたいかもしれない…( ̄▽ ̄;) 社交って大事だと思うんだけどなぁ…特に手に職持ってるヒト…
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