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社交なるものをいたしましょう、お兄様 2

 国や諸外国の偉い方々と、シール兄様たちが顔合わせをした後は、わたしの番。エル義姉様に、イツィンゲール女学院の生徒を紹介してもらうのだ。今度から、同じ学院に通いますので、仲良くしてくださいね~、というアピールである。

 これは何もわたしに限ったことではない。今年の新入生が先輩とそのご家族へ挨拶する、あるいは家族が子供も通っているのでご挨拶に、というのはよくあるパターン。

 もちろん、他校の生徒に優秀なんですってね? と話しかけることもある。副音声をつければ、ウチの娘(息子)を結婚相手として考えてくれませんか? という場合が多い。

 貴族の社交は、この副音声を正しく聞きとることも重要である。統一されたパターンがあるわけではないので、読み取るのは慣れるしかないそうだ。



「絶対に、スーを紹介しておきたい方がいらっしゃるの」

 いつになく力強い言葉で、エル義姉様が言う。

「どなたですか?」

「ディルワース公爵令嬢、マレーネ・カリヨン様よ」

「ディルワース公爵家と言えば、わが国きっての名家ではないですか」

 でも、先ほどご挨拶させていただいた、陛下のグループにはいらっしゃらなかった。確か、法術に関しては一家言をお持ちの家柄だったと思うが……

「名家には違いないけど、問題がないわけではないのよ」

 はぁとエル義姉様がため息をつく。ヴィンス兄様は、苦い顔。

大きな家であれば、問題の1つや2つ、抱えていたところで不思議ではないですよね。我が家のような例もありますし。



「社交界にデビューしたら嫌でも耳に入ってくるでしょうから、今は問題の背景を濁すけれど、マレーネ・カリヨン様の問題は男嫌いだということよ」

「それは……確かに問題でしょうね」

 グロリアさんが目を丸くする。社交界においてダンスは重要なコミュニケーションの1つ。ただ、ダンスは男性と女性がペアになって踊るものだ。同性で踊ることがいけないわけではないけれど、そこはお遊びのレベルを超えられない。

「ダンスを踊らずにいることもできなくはないけど……もう1つ問題があって、この方、同性のお友達も少ないらしいの」

「……あの……いきなりそんなハードルの高い方を紹介されても困るのですが……」

 女学院に通っていながら、女友達もいないなんて性格悪いとか、そういう?



「悪い方ではないのよ。そこは私が保証するわ。ただね、言い方がキツイのよ」

 要はわたしに通訳のようなことをしてもらって、女友達を増やす協力をしてもらえないかと、公爵夫人から打診があったらしい。公爵夫人のお願いなら、断れませんねえ……。

 ダメならダメで良いからと、エル義姉様に「お願いっ」と拝み倒されてしまう。

 この件に関してはヴィンス兄様もノータッチ。シール兄様たちにいたっては、そんな令嬢がいるのか、というレベルなので、「挨拶だけでもしておくといい」としか言われなかった。

 あまり気乗りはしないけれど、エル義姉様にはとっても、とっってもお世話になっているので、断ることはできない。「ダメ元だと思っていてくださいねっ」と念押しをしておく。



「あぁ、あそこにいらっしゃる」

 ヴィンス兄様が教えてくださった先には、ワインレッドのドレスをお召しになった女性と背の高い白いドレスをお召しになった方がいらっしゃった。

 アップにまとめた髪には、小ぶりの白バラの蕾をあしらった髪飾り。トップスはワンショルダーで、スカートは透け感がある。

 蕾の髪飾りと白いドレスで、この方がマレーネ・カリヨン様なのだと分かった。

 ワインレッドのドレスの女性は、エル義姉様に気づくとパッと表情を輝かせる。声には出ていないけれど、待っていたのよ! と全身で表現していらした。



 たぶん、この方が公爵夫人ね。エル義姉様に促され、側に近づく。まずは公爵夫人から、ヴィンス兄様とエル義姉様へ「娘さんがお生まれになったのですってね。おめでとう」と、お祝いの言葉があった。その後、2、3言葉を交わしてから、わたしの方へ視線が向き、

「紹介するわ。娘のマレーネ・カリヨンよ」

 ヴィンス兄様とエル義姉様に視線が戻って、公爵夫人はご息女を2人に紹介した。

「初めまして。リーブス男爵、リーブス男爵夫人」

 カーテシーで兄夫婦に挨拶をしたマレーネ・カリヨン様。彼女がお召しになっているドレスを正面から見て、びっくりしたわ。だって、パンツスタイルだったのよ! 素敵だわ。



「あなたが、リーブス男爵夫人ご自慢の義妹君ね」

「さようでございます。ステラ=フロル・エデアですわ」

「お初にお目にかかります。ディルワース公爵夫人」

 わたしもカーテシーでご挨拶。公爵夫人はワクワクする気持ちを隠せないようで、

「今度、女学院へ編入していらっしゃるのよね」

 ご自分の娘へ、さっそくアピール開始。でも、マレーネ・カリヨン様は、わたしの隣にいるライオット様や一歩下がったところにいるシール兄様たちを見て、ふんと鼻を鳴らす。


勢いで書いた短編「婚約破棄の現場は凍りつく(物理的に)」https://ncode.syosetu.com/n7838gx/も投稿しております。よろしければ、そちらもお付き合いください。

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― 新着の感想 ―
[一言] お?おお?ヅカテイストなご令嬢登場??うむ良し!←好物(笑) いやでもしかし、パンツスタイルだとダンスは……??誰とも踊らぬ!という意思表示、なのかしら? スーちゃんとお友達になってくれた…
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