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未知との遭遇ですわっ、お兄様 2

 孔雀たちの動きを、わたしたちは固唾を飲んで見守っている。シール兄様とライオット様、グロリアさんの3人は、見慣れているからか、ゆるゆるな感じだけど。

 10羽の孔雀たちが、定位置についたようだ。まるで、宝塚歌劇団のレビューのよう。彼らは、示し合わせたかのように、一斉に自慢の羽を広げて見せてくれた。

「すごい! すごいわ! 素敵!! 何て綺麗なの!」

「これは……っ! 見事な──!」

「キャアー! 素敵! 美しいわ!!」

 わたしたちは大騒ぎ。拍手喝采。キャッキャ、キャッキャと騒いでいると、孔雀たちが斜めにした体を揺らし始めた。まるで、ラインダンスみたい。



 日の光が、孔雀たちの大きくて立派な羽をメタリックに、キラキラと光り輝かせている。この羽が、本っっ当に綺麗なのよ! 

 そうね……孔雀の特徴的な丸い模様をはりつけた、虹を背負っているみたいなの。体を動かすたびにゆらゆら揺れて……うっとり。はぅとかほぅとか。ため息しか出てこないわ。

 そして、白雪孔雀は、本当に真っ白なの。雪のように、日の光を反射してまぶしいくらい。目玉のような模様はアイスブルーやアイスグレーで──見とれてしまう。これが、眼福ってやつね! 

 もう、ずっと見ていられるわ。虹も雪も美しすぎるっ! 無意識の内に、両手を胸の前で組んで、お祈りのようなポーズをしているわたし。口も半開きになっちゃって。

 孔雀たちの舞は、時間にして5分ほど。彼らは、わたしたちから距離を取り、その羽を畳み、森へと帰って行った。



「とても素晴らしいものを見せてもらった。ありがとう、シール。ところで、あの、人の顔を持った孔雀の魔物は……? 何者と言っていいのか、言葉選びに困るが……」

「実は、僕も良く分かりません。ただ、孔雀たちの長と言いますか、指導者のような立場にあるみたいです。王と呼ぶには顔立ちがお若いので、王子と呼ぶことにしました」

 シール兄様が、あれだけの数の孔雀たちをここで保護できているのも、孔雀の王子が自ら保護してもらいたいと申し出て来てくれたからなのだとか。

「背景は省きますが、新しい傭兵団による乱獲が原因で、年々数が減っているらしいです。このままでは、滅んでしまいかねないとお考えになられた王子が、僕をご指名下さいまして──名誉なことだと思っています」

 びっくりしましたが、とシール兄様は笑う。そりゃ、びっくりするでしょうね。兄様に保護を頼むつもりになったいきさつもちょっぴり気になるわ。機会があったら、ぜひ聞かせていただくとしましょう。



「旦那様、そろそろFランクの魔物がいる区画へ参りませんか?」

「あぁ、そうだな。行こうか」

 グロリアさんに促され、わたしたちは次の場所へ移動することに。2度目となれば、透明のどこでもドアにだって驚きませんよ。

「ところで、1つ質問をさせていただいてもよろしいかしら? とても素朴な疑問なのですけれどね? お守りの虹色孔雀の扇は、手のひらサイズで綺麗な七色だったわ。でもね、本物の虹色孔雀の羽根は1本が七色をしている訳ではなかったわ」

 手のひらサイズの扇を作れそうな大きさの羽根は、七色ではなくて、紺色だけ。あるいは紺と紫の2色。とてもじゃないけど、手のひらサイズの虹色の扇は作れそうにない。



「私が見た虹色孔雀の扇は偽物だった、ということかしら?」

「いえ、恐らくは縮小の法術をかけて羽根を小さくし、それを加工したのではないかと。ただ、中には普通の孔雀の羽根を七色に染めた物もあるようです」

 粗悪品だと、時間の経過とともに羽根の色が抜けていくこともあるらしい。

「僕の個人的な意見ではありますが、デビュタントの時に贈る孔雀の羽根扇は、虹色孔雀の羽根扇ではなく、白雪孔雀の羽根扇の方が良いかと──」



「そうか? 虹色孔雀の羽根扇の方が、好まれそうな気がするが……理由はあるのか?」

 ヴィンス兄様の言う通り、白い羽根の扇よりは、色とりどりの美しい扇の方が良いように思う。それぞれの個性を大切にって言う、メッセージが隠れているような気もするし。

 わたしがそう言うと、エル義姉様もそう思うって、頷いてくれた。個性を大切にすると同時に、お互いを尊重するように。そんなメッセージが隠れているような気がするって。

 シール兄様も、隠れたメッセージに異論はないそうだ。ただ、別の見解があるらしい。



「僕が、デビュタントのお祝いに白雪孔雀の羽根扇を勧める理由ですが、まずは余計な情報を蓄えずに、まっさらな心で社交界を歩いてほしいと思うからです」

 社交界のイメージとして浮かぶのは『華やか』『きらびやか』『洗練された』など。国内の流行が生まれる場所であり、紳士淑女が集う、独特な世界だと言って良いだろう。

「社交界も、政治や経済の裏舞台ですから、決して美しいだけの世界ではありませんが──未婚の、ましてやデビューして間もない令嬢が、そういったものを気にしすぎても良くないと思うのです。男の勝手な理想像だと言われてしまえば、それまでですけどね」

 シール兄様は苦笑いを浮かべた。でも、ヴィンス兄様とライオット様は、うんうんと頷いているので、身勝手とは思いつつも、同意したいのだということは分かった。


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― 新着の感想 ―
[一言] ブラボー!!(*’ω’ノノ゛☆パチパチ 宝○を彷彿とさせる素晴らしい舞台でございました…ほぅ(*´∀`) シール兄ちゃんをご指名とはお目が高い!保護したからにはとことんまで環境と健康に拘っ…
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