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ご教授ください、お兄様

「魔物を飼うことはできませんの? シュナルフォでは、飼っていらっしゃる方もいるというのに? 犬や猫を飼うよりも躾が簡単だとも聞きましたわ?」

 シール兄様の呆れの中にも若干の怒りを含ませた態度に、エル義姉様はむくれ顔。

「エル、流行りに乗りたい気持ちは分かるが、我が家には赤ん坊がいることも忘れないでくれないか? 一番の優先は娘の安心と安全だ」

「それは、分かっております。ですが、魔物は護衛としても使えるという話も耳にしておりますの。ですからね、私はソフィアの護衛としても期待しておりますのよ」

 ヴィンス兄様とエル義姉様の間には、もうすぐ3か月になろうかという、赤ちゃんがいる。名前をソフィアといって、明るい茶色の髪と目のかわいい女の子だ。



「リーブス男爵夫人、それはちょっと無理がありますよ。ペットとして飼うとは言っても、魔物は魔物です。ご自分がマウントを取れるランクの魔物でないと、危険です」

 可愛らしくて従順。それでいて、強い魔物を飼いたいのだと夢を語るエル義姉様に、意見をしたのはライオット様だった。

「もしも、飼っている魔物が暴れた時、自分で仕留める覚悟を持たなければなりません。ですから、魔族も必ず勝てる魔物しか飼いませんよ」

 この『必ず勝てる』というところが重要なんだそうだ。



 魔物は、SS・S・A・B・C・D・E・Fの8段階でランキングされている。エル義姉様が、ペットとして飼うのなら、Fランクから選ぶべきだとライオット様は言う。

「分かりやすく言えば、子供でもやっつけることができるレベルの魔物ということですね。後で、関係ギルドを通じて国へ提言しておきますが──」

 参ったなと頭をかくのは、シール兄様だ。

「少し自慢しすぎてしまいましたね、旦那様」

「どういう……って……いや、分かった。お前がブームの火付け役なんだな?」

「恐らくは。どういう流れでそうなったのかは覚えていませんが、求められるままに魔物の話をしていたのがいつの間にか──」

「研究の為に飼育している魔物の中には、愛らしい姿をしているものもおりますので、こんなことがあった、あんなことがあったと……」

 親馬鹿ならぬ飼い主馬鹿っていうヤツでしょうか。



「護衛を兼ねて、魔物を飼うことはできませんか?」

「どうしても、とおっしゃるなら、Cランクの魔物と契約をしているテイマーを雇うことですが……馬鹿にしているのかと怒られるのが関の山かと──」

「後は調教系のタレントを持っている人間を雇うことですかね? 馬丁の魔物版です」

 馬丁は、馬の世話係のことだから、魔物の世話係を雇えばいい、ということらしい。ただし、これにも問題があるらしく、

「職業としてはまだ成立していませんから、まずは魔物の勉強をしてもらって、その上で調教の仕方を試行錯誤する必要がありますね。当然、Cランクの魔物を飼うというのであれば、最低でもCランクの魔物と戦って余裕で勝てるくらいのレベルが必要ですから──」

「……給金の相場が想像できねえな」



「旦那様? 施設面での投資を忘れていますよ。それにCランクともなれば、食費もバカにできません。排泄量もそれなりの量になりますし──大きさの問題だってあります」

「そもそも、どうやって魔物を手に入れるおつもりでいらっしゃるんです? 指定の魔物にもよりますが、Cランクの生け捕りともなれば、依頼料もかなり高額になるかと──」

 なるよな? とシール兄様が、目線でライオット様に問いかける。ライオット様は「なるな」と頷いた。



 以前、レオン・バッハでDランクの魔物の輸送依頼を請け負ったことがあるのだそうだ。

「この時の依頼料が大体、金貨50枚くらいだったはずです。日程は、5日でしたね」

 必要経費は別料金。Cランクの魔物を生け捕りにしてなおかつ輸送するともなれば、最低でもその10倍の値はつくだろうとのこと。さらに、施設投資に食費などもかかる訳で、エル義姉様は、護衛ができる魔物は諦めることを宣言したのだった。



 ちょうど話に一区切りがついたこともあって、全員がテーブルの上の茶器に手を伸ばした。だいぶ冷めてしまったけれど、お茶そのものは美味しい。それから、お茶菓子も。

「美味しいわね、このクッキー。素朴な甘さだからかしら? いくらでも食べられそうだわ」

「エル義姉様、これは危険ですよ。止まらないお菓子はっ……!」おデブの素……。

「我が家自慢のコックが作ったクッキーなんだ」

 シール兄様の表情筋は、あまり仕事をしていないというのに、それでもドヤ顔してるのが分かるっ。我が兄ながらっ……萌える……っ。



「うちのコックは、スコーンが美味いんだ。今度持ってくるから、ぜひ食べてみてくれ」

「ウチはパンも美味いですよ。焼きたてのバゲットは、最高です」

 シール兄様がコック自慢をしたからか、ヴィンス兄様もコック自慢を披露し、ライオット様も加わった。お料理上手なコックは、どこのご家庭も欲しがる人気者ですからね。自慢したくなるのも分かります。ホーネスト伯爵家? 雇っているのは、普通のコックだと思うわ。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白いです [気になる点] >魔物は、SS・S・A・B・C・D・Fの7段階でランキングされている。 Eが抜けてる…
[一言] ペットを飼うなら ウサギはどうかな? 可愛いし モフモフだよ!!!
[一言] ペットは自分で躾が出来るコを選ぶべし!お世話もしないといけません!ペットのお世話係雇うとペットの信頼はお世話係に行ってしまいますよ! というわけでエル義姉様のお宅で飼うなら、お嬢様の相手が…
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