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あら? 意外な名前が出てきましたわ、お兄様 2

サンドロック伯爵子息の名前は、フランシス・バーナードですが、74話にて、ステラは「フランク」呼びの許可を頂いております。一人称ですので、地の文でも「フランシス」ではなく「フランク」と表記しております。

「サンドロック伯爵令息がなにか?」

 女学院の生徒たちは、男性を下に見がちだと聞いていたから、男性の話題が出てきたことにちょっと驚いた。それが、フランク様の名前だったから驚きも大きい。

 これが、リチャード殿下の名前だったら、まだ分かるのだけれども。

 お茶を一口いただいて、彼の名前を口にしたミス・ランデルの顔を見る。彼女は、恐縮した様子ながら、実は……とフランク様の名前を出した理由を教えてくれた。



「……ラント男爵令嬢とフランク様が想い合った仲……」

 なんなの、そのデマ。あり得ないでしょう。

「お伺いしていいものか分かりかねますが、なぜ、ミス・ランデルがそのようなことをお尋ねに? 男爵令嬢と伯爵令息がどのような仲であれ、貴方は無関係なのでは?」

 ミス・ペリングが恐る恐る問いかければ、聞き役に徹している庶民派の方々から「ですわよねえ」と同調する声もあれば「ゴシップには関心を示されないと思っておりましたのに」と残念そうにしている声もある。



「ラント男爵令嬢、ウルリカ・ドロテア・ラントは、私の従妹なのです」

 あ、それは関係があるような、ないような……。聞けば、最近は聞かなくなったものの、以前は彼女からたびたびフランク様との仲を聞かされていたのだとか。

「なんですか、それ……」

 ミス・ランデルから語られる、ラント男爵令嬢とフランク様が両想いだという話。まるで三流ロマンス小説……。第三者から見れば、中二病にり患しているとしか思えない。



 でも、フランク様に想いを寄せる経緯は分からなくもないのよ。

 ラント男爵令嬢は、お母様が魔族だそうで、容姿が変わっているのだ。肌は雪のように白くて、宝石のように美しいマリンブルーの瞳をお持ちだ。ただ、この瞳が蛇のようで気味が悪いという人がいるのも事実。あと、犬歯が発達していて牙みたいに見えるのよね。

 何がコンプレックスになるかは人それぞれで、ラント男爵令嬢はご自分の目が嫌いみたい。前髪を長く伸ばして、俯きがち。猫背で姿勢が悪く、小声でボソボソ喋る。



 カサンドラの取り巻きのひとりだったけど、そんな様子だったから冷たく当たられていたのよね。なのに、カサンドラの側から離れようとしなかったの。どうして? って不思議だったのだけど……フランク様に優しくされて好きになったのね。だから、カサンドラの側にいて、彼と話すチャンスをつかもうとしていたってことね。なるほど。謎は解けた。

 でもねえ……両想いではないでしょう。フランク様としては、同病相憐れむ、という心境だったのではないかしら? わたしへの気持ちがそうだったみたいにね。



「ダンジェ伯爵令嬢は、ふたりが相思相愛だとは思っていらっしゃらない?」

「えぇ。サンドロック伯爵令息には、つい先日まで婚約者がいらっしゃいましたから……。優しくて誠実な方ですから、婚約者がいるのに他の方に気持ちを寄せたりするようなことはなさらないかと思います」

「でもでもでも、ですよ? 人を好きになる気持ちは、コントロールできるようなものではありませんわっ。婚約者がいたとしても、政略なのでしょう? でしたら──!」

 恋バナがお好きなのですか? ミス・ハリソン。



「そうですわね。ですが、政略と申しましてもその内容は千差万別ですわ。それこそ、家の存続にかかわるようなものから、結婚してもいいし、しなくてもいいけど、した方がお互い気持ちよく協力し合えるよねというような、言い方は悪いですが気楽なものまで──」

 フランク様とカサンドラの婚約は、後者に近い。どうしても、カサンドラと結婚しなくてはならないのだ、というほどの事情はないのよねえ。

「本当に想い合っていらしたら、婚約を解消なさるでしょう。婚約のお相手とは、あまり仲が良いわけでもなかったので……。何より、正式に発表していないようでしたし……」

 正式に発表していなかったと断言しても良かったけれど、どうして断言できるの? と聞かれたら困るので、ちょっとぼかしておく。



「ウルリカは、伯爵令息から『君の淹れたお茶を毎日飲みたい』と言われたって、はしゃいでいましたけど……」

 どこかで聞いたことのあるようなフレーズ。でも、それはないでしょう。

 フランク様が淹れるお茶は、とても美味しいもの。わたしの乏しい語彙では、その美味しさを的確に表現できず、ただ美味しかったとしか言えない、あのお茶の味。もし、本当にフランク様がそんなことをおっしゃったのなら、今頃ラント男爵令嬢は、あちこちのお茶会で引っ張りだこになっているでしょうね。



 わたしの思っていることはそのまま顔に出ていたのか、

「……従妹の勘違い……ですか?」

「わたしは、そう思います。ですが、先ほども言いましたように、サンドロック伯爵令息は先日婚約を解消されたので……もしかしたら……? 可能性はあるかもしれませんね」

 どちらにしろ、貴族の子女の婚約は父親が整えるものだ。うまく交渉できれば、婚約が成立するかも知れないけれど……どうかしらねえ……。


22年1月20日より、アマゾナイトノベルズ様から『悪役令嬢だけど立場が逆転しています!~助けてください、お兄様~』が電子書籍配信されております。

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― 新着の感想 ―
[一言] もしかしたら?あるかも??…ふっ…たらればかもねとは"イコールありません"という意味ですね解ります! 思い込みとか勘違いとかって良くあるコトですもの!←想い合うを完全否定(笑) 恋バナ…好…
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