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あら? 意外な名前が出てきましたわ、お兄様

サンドロック伯爵子息の名前は、フランシス・バーナードですが、74話にて、ステラは「フランク」呼びの許可を頂いております。一人称ですので、地の文でも「フランシス」ではなく「フランク」と表記しております。

「ところで、話は変わりますけれど、昨夜の舞踏会はいかがでしたか?」

 アクセサリーの話も関心度は高いと思うけれど、今日のお茶会で一番聞きたい話は、これでしょう。話の区切りも悪くないし、マレーネ様やヒューズ伯爵令嬢を見て、新しい話題を振れば、

「ミス・マレフィセントに関係して反省することはあったけれど、私のようなひねくれ者でも、まるで夢の中にいるみたいだったと言えるくらい、素晴らしいものだったよ」

「リゴレット離宮に近づくにつれて、馬車のスピードが落ちてきて──そのかわり周りが騒がしくなっていったわね。皆さま、同じ方向に向かうのだから当然のことだけど」

 そうそう。御者たちが「道を譲れ」だの何だのと騒がしく、興奮した馬のいななきも聞こえてきたわ。たまに、馬が暴れてけが人が出るというような事件もあるそうよ。



「リゴレット離宮に到着して、馬車からおりると、離宮の中で奏でられている音楽がかすかに聞こえてきました。目の前には、レッドカーペット。時代がかった衣装の侍従たちが忙しそうに馬車をさばいていて、その間をペンとメモを持った記者たちが働きバチのように動き回っていましたわ」

「離宮は、花でラッピングされたようで、建物全体が誰かへの贈り物のように見えました。たくさんの花が風に揺られると、ふわりと甘い花の香りが漂ってきて……華やかさもさることながら、今年は落ち着いたトーンの花が目立っていましたわね」

 ネックス子爵令嬢とターナー子爵令嬢がうっとりと告げれば、

「ダーク・ドーンですわね。赤やピンクの花の中、深い赤紫色をした丸弁ロゼット咲きは、主役にふさわしい美しさでしたわ。さすが、今年のバラに選ばれただけはありますわね」



 ……あの、ブラックマン男爵令嬢? 色はともかく、丸弁ロゼット咲きと言われてもよく分からないのですが……? 庶民派の方はえぇと? と困惑気味。そこへ、ガヴァージュ男爵令嬢が、

「離宮を飾っていたたくさんの花の中で、メインフラワーとして使われていたのが、今、イーディスさんがおっしゃった、ダーク・ドーンという品種のバラですわ。今年のバラに選ばれたので、皆さまご存知だとばかり思っておりましたが……」

「あら、いやだ。わたくし、てっきりご存知だとばかり……失礼しました」

 クスクスというイヤな笑い方。あれだけ叩かれても、まだマウントを取りに来る、そのメンタルはすごいわね。いっそ感心しちゃうわ。あ、彼女イーディスって名前だったのね。



「──それで、離宮を飾る花の次に目についたもの、記憶に残っていらっしゃるものはなんですか?」

 そして、ミス・レイトン、華麗なスルー。ブラックマン男爵令嬢がムッとしているけれど、気づかないふり。知りたいのは飾りに使われていた花の品種じゃないのよ、という気持ちが全面に出ていますね。どころか、黙っていろというオーラすら見える気がするわ。

「馬車からおりると、誰が到着したのかと、記者たちの視線が集まるのですが……それもほんの一瞬のことですわ。社交界の名だたる花々に比べれば、私たちのようなデビュー前の小娘の注目度なんて……」

 ヒューズ伯爵令嬢が口を開けば、マレーネ様もその通りだとうなずき、

「正式なデビューであれば、注目されるかも知れないが、仮デビューではね。でも、離宮に入るまでの間、その一瞬の注目がずっと続いているような気がしていたよ。まるで女優のようにスポットライトに照らされ、世界中から注目されているような、そんな気分だった。現実は残酷だったけどね」

 残酷だとおっしゃってはいるが、表情は明るい。肩をすくめる仕草が大げさなのも、特に気にしていないからなのだろう。



 新聞の社交欄には、シール兄様とライオット様。そして、社交界に人魚姫現れると、グロリアさんが大きく取り上げられていましたからねえ。わたしのことも、ライオット様のパートナーをつとめたのはダンジェ伯爵令嬢だとちょこっと載っていました。

「私、今朝の新聞を読んでがっかりしていましたの。ディルワース公爵令嬢を記事にしないなんて、新聞記者たちはどこに目を付けているのかしら!? って──!」

「ありがとう、ミス・ハリソン。でも、デビュー前の小娘が人魚姫に勝てるはずないだろう? 母からも、性別や身分にとらわれるような考え方こそ、淑女失格だと言われてしまったよ」



「先ほどもお伺いいたしましたけれど、そんなに素敵な女性でしたの?」

「私は、ワルツを踊っている姿を拝見しただけですが……とても美しい方だと思いましたわ。女性にしては背が高くていらっしゃって──」

「えぇ、あのすらりとした手足が軽やかに大きく動く姿はとても美しくていらしたし、パートナーのダンジェ伯爵のリードも巧みでしたわね」

 ネックス子爵令嬢とターナー子爵令嬢が、両手を胸の前で組んで「はあ~っ……」と大きなため息をついた。……いいなぁ。わたしも見たかったなぁ……。

「あの、ダンジェ伯爵令嬢、つかぬ事をお伺いしますが、サンドロック伯爵令息をご存知ですか?」

「サンドロック伯爵令息ですか? えぇ、存じておりますが……」

 どうして、ミス・ランデルの口からフランク様の名前が出てくるのかしら?

100話達成! これからも頑張りますのでよろしくお願いします。


22年1月20日より、アマゾナイトノベルズ様から『悪役令嬢だけど立場が逆転しています!~助けてください、お兄様~』が電子書籍配信されております。

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― 新着の感想 ―
[一言] オウチで見せて貰ったらどうだろうか!2人がワルツを踊る様を!!……見たいな……(*´ω`*)←己の欲望がまろびでる いや~この懲りないお嬢さん達はきっと"マウントをとらなければ死んでしまう…
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