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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

全てを壊す

作者: 佐藤なつ

<命題>

“乙女ゲー異世界転生に気づいた悪役令嬢の役割はざまぁする事である。

但し、気づいた時期はゲーム終了一週間前とす。”


<解>

“真で有り偽である”


してもしなくても、本人の心構え次第だものね。


と、言うことで、私は考えた。


前世の価値観からすれば身分制度も、お姫様願望も馬鹿馬鹿しい。

重たいドレス。

窮屈なコルセット。

足が痛いハイヒール。

お貴族言葉での腹の探り合いも、全て全て馬鹿馬鹿しい。

王子様達のキラキラした微笑みも、気づいた今となっては胡散臭い物です。

何であんな男好きだったか、わっからんわぁ。

ってな感じです。

もうね。

めんどい。

全て、面倒くさい。

あと一週間で愛されに改変することは不可能だし、逃亡先準備するのも面倒だし、っていうか何で私が逃げなきゃいけないのかって感じだし、虐めた罪で断罪っていっても貴族社会では通常儀式だし、なんなら私の方が子供の頃から大人に囲まれてもっと辛辣な嫌みとか嫌がらせに晒されてきましたけど。

子供時代、平民として伸び伸び暮らした挙げ句、王妃に上り詰めるなんて良いとこ取りだし、もっと早い時点で親の権力に物言わせて退学させることだって、刺客を放って抹殺する手だってあったけどしなかったから私優しいと思うんだけど。

考えれば考えるほど、馬鹿馬鹿しくて面倒で、出た結論が私にとって、「この国不要ですわ。」って事だった。


更に突き詰めて「全て壊してしまえ。」って思って、

最終結論。

“破壊”

これが私の答え。


採点者のいない答えは、全ての解答が正解です。

異論は認めない。


だけど、ちゃんと役割を全うしようっていう気概もあって。

最後にどっかん花火打ち上げてやろう。

悪役令嬢はよく悪辣な演出を考えてみました。

だって、私、破滅しても良いんだもの。

どうでも良いの。

だって、何したって破滅するんだもの。

だったら私だけが破滅するんじゃなくて、全部、道連れじゃないと不公平よね。


だから、考えました。

素敵な終幕を。


一週間しかないので、下準備考えると即断即決、待った無し。

考えるの面倒になって、破滅って国自体を壊してしまえば良いんじゃないって思って。

そんな破滅衝動に酔って、この国を壊してくれる人を探してみました。

同志ってどこかにはいるものですね。

案外さっくさく進んでびっくりです。


一週間、唄のようにゴロ良く切りよく過ごせました。


月の日は貴族名鑑を見て。

火の日は隣国大使名鑑を見る。

水の日に密会をして、

木の日は計画作り。

金の日に密偵放ち。

土の日に最終打ち合わせ

日の日は決行日。



って事で決行日です


この一週間の歌は、また月曜日には戻りません。

ループ無し。

今日で終わり、おしまいです。


私は悪役令嬢らしいドレスを身につけ、家を出ました。

エスコートに婚約者の王子は現れません。

家の者が動揺してます。

横目に一人で馬車に乗り込み、御者に王都をゆっくりと進むように指示を出します。

どちらにしろ、人出が凄くて早くは進めません。

王都は浮かれたお祝いムードです。

祝砲が鳴り、国旗がはためいています。

そう思うと見慣れた街も何だか感慨深いです。


今日は学園卒業式と言うだけではありません。

王子始め、この国主要職に就く者の息子達が成人の儀を受けるのです。

国を挙げてのお祝いにしちゃってます。

どんだけ親馬鹿かと、何かちょっと鼻で笑っちゃいます。

この場で悪の権化の私を断罪し婚約破棄し、光の巫女と婚約する予定なんです。

そして、私の家を始めとした悪徳貴族を一掃し、今後はクリーンな国を目指すぞ。

王子殿下達、新世代。


素晴らしい、有望な王子殿下。

その手腕によってこの国は安泰。

慈愛の心をもった光の巫女と共に進む我が国は神に愛されている。

国民が喜びそうな文言です。


だけど、よく考えて、光だけでは世の中回っていかないわ。

光と背中合わせに闇があるのです。

闇があるから、皆休めるのです。

光の勝利はありがちですし、

たまにはね。

闇が勝ってもよろしいんじゃなくて?


って事で、颯爽と会場入りです。

めっちゃ皆様、私を見てコソコソ話しています。

扇で口元隠して体を傾けて、こちらを見て、コソコソ、クスクス、ウフフフ。

悪意があるのがよくわかります。

遅刻ですわ~。

なんて言っています。

多分、私には開始時間遅く教えてくれたんじゃないかな。

まさかのイジメ返し。

卒パで遅刻させるなんて、授業遅刻させるよりたち悪いでしょう?

まぁ、五十歩百歩でしょうか。


そこから素敵な予定調和の開始です。

まるで物語を見ているような物。

善の塊である登場人物達が私を取り囲みます。

後ろには光の巫女様がいらっしゃいます。

この配置は、印籠でも出す、時代劇と同じ感じです。

戦隊ヒーローでも良いです。

それぞれが、名乗りを上げるかのように順番に私に断罪の言葉を投げかけます。

私が一週間画策している間に、彼らも誰がどの順番で何を言うか打ち合わせていたんでしょうか?

打ち合わせの内容が違いすぎてウケる。

口元がにやけるのを隠すために私も扇子で口元を隠しました。

扇子の模様を見て、気を逸らしたりもします。

うっかり高笑いしちゃうといけませんから。

頬の内側噛んで耐えました。

耐えましたよ私。

それで、ようやく元婚約者の王太子殿下様が高らかに私との婚約破棄を宣言してくれました。


破棄、すぐさま光の巫女様との婚約宣言。

冷静に見ると節操無しですわ。

後、おまけのお家断絶宣言。

奥の一段高い所にいる貴賓席の一団がウンウン頷いています。

自分の息子達の勇姿に目頭押さえている感じです。

続けて王子は、私の身分を平民に落とすと言われました。

その姿にも皆うっとりしています。

「最下層に落ちて、自分の所業を思い返すと良い。そこで、ドロに塗れ真実の愛を見つけ、愛されるように祈っている。それが私にできる最後の事だ。」

なんて言われて、訳わかんないこと言う王太子が跡継ぎで

本当、この国終わってるなぁ。終わらせて良いよなぁ。

って改めて思いながら

「謹んでお受け致します。」

と、お辞儀しました。

カーテシーってヤツです。

これする為だけにこの衣装着てきましたからね。

綺麗にお辞儀を披露して元の姿勢に戻ります。

すると、衛兵が寄ってきて両腕を取られました。

くるりと回れ右。からの

まさしく連行です。

素敵な花道。

会場まで皆の視線一斉に頂きました。

よぉく見てて下さいな。

私の退場。

笑ってても良いですよ。

得意げになっていれば居るほどそこからの、転落は一入でしょうから。

ってことで、会場の正面扉にたどり着き、開けられるのをドキドキわくわくしながら待ちました。

外の光が差し込みます。

光を後ろに背負った武装兵団が見えました。

その中心人物と視線が合い、私は頷きました。

両腕を拘束していた衛兵が私を外に出さずに扉の脇にと移動します。

そして、手を離すと私を守るように前に立ちました。

と、同時にダダダッと兵団が一斉に扉から会場に入ってきました。

そして、高らかに剣を掲げて名乗りました。

「私はマストイド帝国が将軍バイセプスだ。この会場は包囲した。抵抗すれば容赦なく切る。」

格好いい。

先ほどの、貴族社会のイジメから守ってあげるなんて、青臭く、スケール小さい宣言じゃ無くほんまもんの宣言です。

「お前は誰だっ?」

「どういうことだっ。」

「皆、巫女を守るんだ。」

気丈に王太子殿下たちが光の巫女を守ろうと命令したりします。

だけど、一般生徒は我先に逃げようとします。

正面以外の入り口を開けて、そこにも兵団がいるのを見て、“きゃあ”なんて叫んでいます。

王も隠し扉から逃れようとして、そこにも控えていた兵に捕まりました。

他の皆も簡単に捕まってどんどん捕縛されていきます。

皆ここぞとばかりに着飾っているからね。

身動き取れませんよね。

それに対して、帝国軍の皆様は機敏に動いて仕事をしていきます。

キビキビしてる職業人って素敵です。

一時間もしない内に、あらかた皆さん捕縛されて、その場でしゃがみ込まされていました。

センター、皆様がクルクル踊っていたダンスホール真ん中で皆の視線に囲まれて国王と、将軍の面会が行われます。

「何故・・こんな。」

国王は呆けています。

その後ろに捕縛されている王太子達も唖然としています。

本当、君たち完全なる平和ぼけしてると思います。

まぁね。正直に考えて、こんな学校の講堂に国王始め国の重鎮一斉に集めてしまっている時点で、危機感低すぎだし、警備も甘かったし、警備員すり替えるの簡単だったし、夜の内に都民に紛らわせて帝国兵士潜入させるのも苦無く行えたし、手応えなさ過ぎでした。

ハイ。

って事で悪役令嬢、この場を締めます。

「将軍。お疲れ様です。」

私はずずっと真ん中に入りました。

「ご令嬢、このたびのご支援に感謝します。」

将軍は私に騎士としての礼を示します。

「いえいえ、私は何もしていませんわ。」

ただ、話しただけ。

この時期にこの会場に国の全ての重鎮が集まり、どんちゃん騒ぎをすること。

学校はどこから入れて、どこに隠し通路があるかということ。

を教えた。

それだけ。


どの時代の、どの世界でも世界統一を夢見る勢力と言うのは居るわけで、

更に、光の巫女なんてレアキャラを手に入れた国なんてどこも欲しいわけですよ。

なのに、口説くのに夢中で警備を怠るなんてやっぱり三流国です。

光の巫女の、皆仲良く、平等に、暴力ダメよ。

なんて美しい言葉では国は守れないのですよ。

いや~、それにしても、会場の皆さんの視線がきっもち良いですわ。

全員私をガン見。

裏切り者って目で見てます。


「皆様の働きあってこその結果でしょう。私は征服された国の一市民、私への賛辞は不要ですわ。そんなことより、これからこの国を、この人達をどうするかお話し合いがあるのでしょう?どうぞお仕事続けて下さいな。」

そう言うと将軍は笑いました。

「では、早速そうさせて頂きますかな。ご令嬢はどのような希望ですか?」

「私?特にないですわ。この国が終わればそれで良いのです。ただ、この場で処分されるのであれば女生徒もおりますから、退場させてあげて欲しいですわ。その際、良いところに引き取って下されば尚良いのですが。」

「ほぉ。」

将軍はニヤリと笑いました。

「帝国のしきたりでは属国の貴族は奴隷コースなのでしょう?」

そう言うと悲鳴が上がった。

「ならば、名のある騎士の褒賞として下賜されてアクセサリとしてそれなりに大事にされた方が良いですものね。」

そう言うと将軍はまた笑った。

「宜しいのですか?ご学友でしょう?」

「別に。」

「でしたら、ご令嬢も奴隷と言うことになりますが、宜しいのですか?それとも今回の働きに免じて自分だけ自由になりますか?」

私を試すように将軍が言います。

「外にいらっしゃったからご存じでしょう?私は、さきほど貴族から平民に落とされた所ですわ。」

そんな言葉遊びをしている所に拍手をしながら私のお父様、悪党の代表が入ってきました。「いや、我が娘ながら良い働きしますでしょう。将軍には娘をもっと評価して欲しいですな。」

なんて言ってます。

全く、場違いです。

「将軍、あのゴミを先に奴隷にして落として下さい。」

将軍はニヤリと笑って命令を下しました。

見せしめとして、服を剥ぎ取られ下着姿で捕縛されてお父様は連れ去られました。

それを見て失神する者も現れました。

現実にモデルケースがあると自分の身に起こることも想像し易くなりますものね。

王もガタガタ震え始めます。

全く胆力が足りません。

最初に私の父が奴隷落ちをしたことで皆一斉に静かになりました。

そして、将軍に問われるままに私が一人一人の名前と官職、身分を答えて行きます。

その度に将軍はその者達の処遇、行き先を即断で決めていきます。

悲鳴を上げて、連れ去られる○○子爵令嬢。

その父親。

公爵令嬢・その父親、母親も同様です。

そうやって、一人一人、身分あるものが連れ去られていきます。

奴隷と、言っても、身分をそれなりに考慮されます。

土木工事なんかにかり出される人もいるかもしれませんが、体力ないのわかっているので軽作業から始めてくれる約束です。

女性達、男性達も愛されるはずです。

多分ね。


最後の方に残った攻略対象者達を将軍に紹介してあげました。

さすがに彼らは位が高かったので将軍も即決はされませんでした。

後で、纏めて。

と、言われて、連行されていく前に私は彼の横に跪いて囁いて上げました。

「殿下。最下層に落ちると良いですわ。せめて愛されて幸せになられますようお祈りしていますわ。」

そう言うと殿下は、もの凄い顔でこちらを見ました。


その顔は、もの凄く凄絶に美しくて、記憶が戻ってから、私、初めて、王子の事でキュンと胸がときめきました。


やっべ。

あの顔追いかけたい。


だから、いっそっこの国を出て野垂れ死にしようと思っていたんですけど、将軍の奴隷に立候補しました。

そして、王太子始め攻略対象者が落とされ、愛されていくかもしれない過程を楽しむことにしました。





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― 新着の感想 ―
[一言] 「すげぇよ お前 素敵だよ」 楽しい時間をありがとうございました。
[気になる点] 国全体がお花畑でびっくり。 騎士団とかないのかな? [一言] 面白い着眼点であまり類を見ない作品でした。 国が転覆する計画が令嬢一人の動きで尚且つ1週間で完了するなんて斬新‼
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