第九話
相変わらず倒れたままの立香を差し置き、二人の会話〜
「で、何だったんだ?結局??」
「私にも何が何やら…と、とにかくですね!もっと強いモノがいて、倒してほしい、ということなのですよ」
「ふぅん…ま、いいけどさ…お前…」
また獲物を狩るときの顔付をする笑鬼。
「なんですか?」
また背筋が凍る法師。
「お前…人殺したことあんだろ。」
「何故です?」
「目がな…10年…いや、まだ7、8年つったところか。一人や二人じゃねえ。ざっくざく人を殺ってた目だ。」
「…隠せないものですね」
そう自虐的に笑む法師。
「隠せねえさ。死ぬまでな。」
淡々と返す鬼。
「昔ね、出家する前のことですが。盗賊だったんですよ。」
「ほう…意外だねぇ。それにしちゃきれいな顔してやがる」
野盗などは職業柄顔に傷を負う者も多い。だが法師の顔は頬に傷一つない。
「体の方は傷だらけですよ。」
胸に手を当て尚も自虐的に独白は続く。
「酒も、金も、女も…それこそ飽きるほどありました。実際飽きていたんでしょうね。
スリルも分の悪い賭けですら飽き飽きでした。命なんていつ無くなってもよかったんです。」
「バカだな。」
「バカでしたねぇ、ほんとに。そんなとき出会ったのが彼女です。」
「彼女ってあの神さんかい」
「そうです。…一目惚れでした」
盛大にずっこけた笑鬼。おいおいおい
「しかもなにやら不思議な力をお持ちでしたので!もう骨抜きにされまして!!」
「それで改心したっつーのかい」
「それはもう。」
「今はどーなんでい。無欲、じゃねーのかい?」
「今は、まあ尊敬というのでしょう。下心はありませんよ。」
「神様に欲情ってのもな。ま、あいつは確かに人間臭えがな!!!」
「一回いいところまで行ったんですがね〜逃げられちゃいまして〜」
「うっせーよ!これ全年齢対象だから!!!やめい!!!」
「…うるさいですわ」
むくりと立香が起き上がる。
「何やらひどい悪夢を見ていた気がしますわ。気分が悪い。」
「おう!!すっきりさっぱり忘れちまえってこった!!!ハハハハ!!!」
「なぜか腹が立ちますわ。ええ、なぜか。」
「それより!あれだ!!!次はどいつを殺せばいいんだ??法師さんよ!!」
だんだん二人のやり取りに慣れてきた法師は思う。あぁこの方々、確かに恋愛云々の関係ではないな。
「えぇ。その事なんですがね。改めてお二人に確認を取らなくてはなりません。あなた方は…」
二人に向きなおり、真剣な面持ちで切り出す。
「あなた方は「神」を殺す事ができますか?」




