第七話
「負けたよ。負けた!!完っっ膚無きまでにな!!!」
そう言ってケタケタと豪快に笑う笑鬼。その笑みにはいってんの曇りもない。
「あなたが負けてどうなったんですか?」
半信半疑だが続きを促す法師。
「そっれがよくわかんねーんだよな!!!俺、死んだーと思ったら目が覚めたら布団の上で。んで、あいつが横に座ってた」
「…」
「んで、お前はもっと強くなるぞ!!そうか!!んじゃ弟子にろ!!ってな!!なぜか突然女装に目覚めたがようわからん!!」
「笑鬼さん流にアレンジしてますね?」
「まー大体そんなところっつーこった。」
「弟子?あなた方の関係は一体何なんです?一見彼女…いえ、彼はあなたに従事しているように見えますが。」
「だからぁ友達だよ、と・も・だ・ち。あいつに剣の手ほどきを受けてたのはもうだいぶ前だ。
今は俺の方が強いんじゃねーの??なはははは。…嘘だがな!!!!」
「嘘なんですか。」
「嘘だよ。俺は、多分、一生、あいつにはかなわない」
「…意外ですね。こんなことは言いたくありませんが・・・妄信なのでは?」
「俺、あいつが今まで本気だしてんの見た事ねえ。俺がどんだけ本気でかかっていっても、だ。」
「ほう…」
「頭も切れる、単純に力比べだってかなわねぇ。俺あいつに勝てる部分なんて一寸もねえな!!!!ハッ」
そう言い切る笑鬼の顔はどこか誇らしげである。
「それでは……そうですね。彼を男性として、見たことはないのですか?」
「あん?あいつは女だろ。もう。」
「もうって…では逆に、女として慕う気持ちはないのですか?」
「女として…ねぇ〜〜〜いや、俺そっちの趣味は無ぇし!!!」
「あぁ。そうなんですか。なんか面倒くさいんですね。
でもこう、年頃の男女がこうも毎日寝食を共にしていればなにかあるでしょう?」
「無ぇよ。なあんにも無え!!!そんなんじゃねんだよ。長年の友達ってやつだ。互いに男友達みてぇなもんさ!!」
「そうですか。」
笑鬼はそうだとして…立香はどうなのだろう、そんなことをふと思う法師なのである。
「…いや、しかし風が気持ちいいねぇ…」
笑鬼が3本目のタバコを吸い終わったところで立香が帰ってきた。
「全く…手がすっかり血なまぐさいですわ。」
「悪りー悪りー!!!ははは!まぁ座れや!!!!なんかこいつが話したいことがあるんだと!!!」
三人で向かい合う形で腰を下ろす。冷めた目つきで法師を見つめる立香。
「…大変失礼なこととは存じておりますが、少々あなたがたを試させていただきました。
正直に申しあげまして、今回の一件は本題ではございません。」
「でしょうね。あなた一人で十分殺れる相手でしたもの」
あの程度の術を見せただけで自分の腕を見抜くか…この男…
「仰せのとおりでございます。実は私、ある方からあなた方のことは伺っておりました。」
「誰でい!!!俺っち回りくどいのは嫌えなんだ!!!」
「神…といったら信じていただけますか?」
「「…はぁ?」」
綺麗に二つの声がハモった。