第三話
続き〜茶屋にて
「笛の吹きすぎで貧血とは…侮れませんね!笛!!!」
「侮れないのはおまえの頭だから!!何入ってんだ!!スポンジか?鈴か??」
「失礼ですね〜これでも法師ですよ。ありがたーいお経やら説法やら、欲のない綺麗な心がけでが詰まってます」
「食欲に倒れた方が何をおっしゃいますの?」
「ねーちゃんいいケツしてんなー!!」
会話を無視し店員に絡み始める笑鬼。
「うふふ。熱ーいお茶はいかがですか?」
「ぬわっ!!!頭から飲めってか!!脳天から湯気立つわ!!!」
店員の攻撃。
「何をやっているのですかしら?笑鬼さん」
「ちょ…近い近い!!!わーったわーったよ!!お前のケツでがま…ぐぇっ!!」
お盆で殴られて流血事件。賑やかな一行である。
「ごほんっ!話を元に戻しましてですね、実を言いますと私、困っております。」
話が進まないので法師が痺れを切らし、そう切り出した。
「飯食う金がなくてか?」
「…額の血を拭いてください。」
しゅるりと立香が懐から布を取り出すと丁寧に顔を拭ってやる。
「はぁ〜お仲がよろしいのですね」
「おうよ!!な、相棒!!!」
「まぁ、同じ布団で眠るくらいには。」
「…さいですか」
「冗談だよ冗談!!!そーゆんじゃねーから!!!ベストフレンドってやつよ!なははは!!!」
「まぁどうでもいいんですがね。本題に入ります。あなた方の腕を見込んでぜひともお力添えを承りたく」
本当にどうでもいいというように、適当に流し無理やり本題に話を戻す。
「ただでか!?御奉仕しろってか??いやーーーだね!」
「報酬は何らかの形でこちらで用意させていただきます。現金、となると難しいところなのですが」
「ふーん、………じゃあさ……」
笑鬼の眼から笑みが消える。いつもの人懐こさからは想像もできないような貌で、さながら獲物を前に歓喜した鬼のような貌でささやく
「懐のもん、頂戴?破壊僧さんよ」
立香は表情一つ変えず退屈そうにどこか違う方を見ている。
「…お気づきでしたか」
やや躊躇しながらもガタリと懐から出したものは、二丁のゴツい拳銃
「おお!!!あっさり認めんのか!!お前面白れーな!!!」
「もとより隠すつもりもありませんで。協力してほしい、と言いましたでしょう」
法師の顔に陰が落ちる。
「これを差し上げるわけにはまいりません。というより、あなた方には扱えないはずです」
「ふぅん…確かに弾いれるところがねぇなあ…普通の武器じゃねーっつーことか」
ひょいと手にとってカチャカチャといじると立香の方に投げる。立香は片手でクルクルと銃をもてあそぶ。
「そういうことでして。詳しいことは話せませんが、妖怪の巣を叩くのにどうしても人手が必要なんです」
「…妖怪、ねぇ…」
顔面の左側だけを器用にゆがめると、まるで人のものではない犬歯がのぞいた。
その表情に法師はゾクリとしたものを隠せなかった。
「いーね!!!のった!!!いいだろ?相棒!!!」
「止めても無駄でしょう。最近血に飢えていますし」
「ハハハハハ!!!そーゆこった!!!場所は?どこだ??早く言え!!!」
法師は驚きの表情で固まる
「よ…よろしいのですか?この条件はあなた方にとって不確定要素が多すぎるのでは!?」
まともな神経の持ち主ではない、そう感じてはいたがまさかここまでとは…これもまさか、冗談なのか?
「あん??難しいことはわかんねーよ!!!頭脳労働はこいつの仕事だ!!!俺は暴れるのみっつーこと!!!」
「…確かに不確定要素は多いですわ。
でも、不利な条件より、そのリスクより、この人は貴方とこのミッションを面白いと感じた。
それだけでもう充分なんですの。You see?」
わりと言い発音でヨコモジを扱う立香
「ユーシー?じゃありませんよ!!面白い、じゃいくつ命があっても…」
「あんだようっせーな!!!手伝って欲しいのか!!そーじゃねーのか!!!どっちだ!!!!」
「…お願い…します」
複雑な表情で、でも確かに真摯な態度で法師は頭を下げる。
どこかこの人たちなら大丈夫だ、と確信した自分がいる。
「おうよ!!!任せろってんだい!!ダチ公!!」
「?」
「今日からお前も友達ってやつだ!!友達のピンチにはかけつけないとなあ?相棒!!!!」
「仰せのとおりに、ですわ」
「…」
なぜか微笑んでいる自分がいた。なぜか暖かな気分にさせられた自分がいた。
あぁ…こんな感情はなんて久方ぶりなのだろう…法師は心で呟くと目を閉じた。




