第二話
そもそもの事の始まりは、町で二人が変な虚無僧に絡んだのが原因だった。
結局はこれもある女の陰謀だったわけだが。
「おい!!!あれ見ろよ!!虚無僧だぞ!!」
面白そうな奴にはとにかくがっつり食いつく笑鬼。
「…だからなんですの?」
抑揚なく答える立香。
「なんか変じゃねーか?あいつ?」
「…ふら付いてますわね、若干」
「シシシw声かけてみようぜ!!」
「…ご勝手に。」
いつものことなので放っておこうという方針のようだ。
「おうおうおう!!!そこのピーピー笛鳴らして歩いてる奴!!!」
「…(ピッ)!?」
面をかぶり笛を吹きつつふらふら歩く不審者は反応を示す。
「ピッ?じゃねーよ!!!笛はずせや!!!コラ!!」
「…(ピーピピピッピピピッピーーーー)!」
不審者は笛で答えているようだ。
「ばかにしてんのか?おい!!!おもしれーぞこいつ!!!ハハハハハ!!!」
怒っているのか笑っているのかよく解らない表情を表わす笑鬼。
「…(ッピ〜ヒョロロロ〜ッピッピッピオ)!!!!」
「ピ?ピピピッピ??ピヨ〜」
「てめーも口笛で対抗してんじゃねー!!!つか上手いな!!!」
近づいてきたと思いきや、若干こ憎たらしい顔で口笛を吹く立香。
「…!!(ピオ!!ピピッピピー!!ヒョロピー!!)!」
過剰反応する虚無僧。相変わらず足元がおぼつかない。
「ピーピピーピ、ピーピピ!!」
「何?何これ???会話?わかんねーよ!!!二人の世界かよ!!!俺も混・ぜ・ろーー」
笑鬼の突っ込み空しく、二人の会話は結構弾んだという。
「あ〜あ。なんか打ち解けちゃったよ。がっしり握手してまー…」
「そうですか、旅の方なんですか。確かにお二方ともお強そうだ。」
突如面を外し、涼しげな笑顔でご挨拶始める法師殿。笑鬼がビビっている。
「喋れんのかい!!!つか、なんだ!!ホントに会話できてたよ!こいつら!!」
ずいと、笑鬼に向き直り、いざ先ほどの通訳を始めようとする立香。
「彼は名前をジョンジョリーヌと申しまして、駆け落ちの途中、紫色の大型犬に足をなめられ
気づいたら記憶が無くなっていたそうですわ」
こちらも涼しい顔でとんでもないことを言い始める。
「違いますね。一っつたりともヒット無しですね。」
と、法師は爽やかに顔を引きつらせている。
「…一方的に会話成立してたんかっ!?」
もー半分どうでもよくなっている笑鬼さん。
「そのようですわ。それでわ、ごきげんよう法師さん」
さようなら、という風に優雅に手を振り、あとずさる立香一行。
「ちょっ…ちょっと待ってください!!!日本語で説明しますから!!聞いて!!俺の話を聞けーーーー!!!!(ゼイゼイ)」
「一人称変ってますのよ。」
「俺、面倒な奴に声かけちゃった?」
「…ですわね。」
涼しい目で笑鬼を見下ろす立香。
「あんでいあんでい!!見下した眼で見下ろすなってんだい!!!
兄ちゃん!言いたいこととやら、とっとと話せやコラ!!!っておい!!」
法師は見事にぶっ倒れている。顔面から。
「おおおおお俺か?俺が悪いのか??」
「うろたえてはなりませんわ、みっともない。こういう時は、ですわね、」
笑鬼に法師を背負わせる立香。
「人気のない所でこっそり埋葬して差し上げ…」
「生きてますからね」
そう青い顔でうなだれながら背負われた者は声を絞りだす。
「た…食べ物を…」
…は?何いってんの?という間が流れる。
「…こいつバカなの?俺よりバカなの??なぁ!?」
「知りませんわ。バカなんじゃありませんの?空腹と貧血でお倒れのようですし。」
そんなこんなで適当な茶店に腰を落ち着ける3人なのであった。
もう少し「コトの始まり」の話は続きます。