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第十一話

翌日、珍しいことに笑鬼のテンションが低い。



「うい〜〜〜最悪の朝だなっ!」



いつも以上にぼさぼさな頭を強引にまとめ、着物をだらしなく着て、だるそうに法師に手を振る。



朝、宿屋を出発しようと法師は2人の支度が終わるのを外で待っているところであった。




「なんでですか?そんなに嫌ですか?」



そんな笑鬼の様子に少なからず嫌悪感を抱きつつ法師は言葉を返す。



「嫌だね!!お前も会ってみりゃわかるさ!!!」



「じゃあ誘わなければいいでしょう?」



「いや、他に強え奴しらねーし。つか、強いやつって総じてこう…自分ワールドっつーか、変態っつーか…」



「あなたが言いますか。」



さらりとちゃちゃをいれる法師。



「おー俺なんてまだまだ全っっっ然まともな方だっつーの!!!



あぁ…早くお前に会わせてやりてーわ!!!」



「そう言われると会いたくありません。」



ふいと顔を反らし遠くを見つめる法師。



「じゃあ帰れ!!!いや!!俺が帰る!!」



テンションが上がってきたのかかなりオーバーなアクションを交えつつ笑鬼は叫ぶ。



「いい加減にされてはどうですの?」



突如現れたと思いきやしれっとなじる立香さん。



「子供じゃあるまいし、やれ、あれがやだ、これがやだと…」



「じゃあお前はどうなんだよ!!!」



「厭ですわ。心の底から。」



「だーーーくそっ!!!」



「嫌ですが、仕方ありませんわ。多分言われたからには二人では無理なのでしょう?私。無駄死になんて御免ですの。」



「黙って他人ヒトのいうこと聞くお前じゃねえだろ!?」



「私、人を見る目くらい御座いますわ。その法師、嘘は言っておりませんもの」



立香は目だけをつい、と動かし法師のほうを見やる。



「うぐっ…わーったよ!!!わーったつーの!!俺も男だ!!腹ぁくくったぜ!!ちきしょ!!!」



「…話はお済ですか?」



あきれ顔で法師は二人を交互に見た。



この二人、なんだかすぐに話が脱線するなぁ。と、深いため息が自然ともれた。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



一旦先ほどの町を出て数十里。一行は隣の山を登山中である。



季節は秋、麓は紅葉が綺麗であるが上り始めると景色を楽しむ余裕もなく、



整備されていない急勾配にただ黙々と足をかけていく。



ただ在るに任せている木々は、各々好き勝手な場所を陣取り、



人の足場にもなるが、同時に通行の妨げにもなっているのだ。



「どの辺だっけーーーー!?」



一人でづかづかと進んでいた笑鬼は中腹辺りまで来たところで後ろを振り返って叫んだ。



「多分この辺りですわ。」



女物の着物だというのに裾を全く汚さずして、息も切らせずすぐに追いついた立香は辺りを見渡す。



「あいつは?」



「法師様なら…」



立香が遥か下を指差す。



「先ほど休憩されていましたわ」



「…まいっか!!!」



構わず辺りの詮索を続行する二人。そのころの法師…



「足が…棒で…動きませんよもう…っぜーぜー」



ゴールまでの距離を目算しながら体力の違いを身をもって実感していたり。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「笑鬼、ありましたわ。」



二人の前方にはボロボロの木造建築。荒れ寺である。



斜めになって半分土に埋まっている鳥居、苔むし、ひび割れた石畳、



屋根瓦はすでに見た目寂しい感じになっており、屋根の穴の開いた箇所には



申し訳程度に木の板が打ち付けてあるが効果はなさそうだ。



「あいっかわらず…人の住処じゃねえええ!!!」



「化け物屋敷ですわね」



「ま、確かにある意味化け物か!!…いくぜ?」



「仰せのままに。」



と意気込んでみたものの、笑鬼は一歩踏み出したところで立ち止まった。



「…やっぱ帰らね??おいーーーー!!!」



そういう笑鬼を無視しずかずかと歩みを進める立香さんなのであった。




そのころの法師



「あ〜日が…暮れる……ふふふ……先が見えないのですが……まさか…野宿…ぜーぜー」



まだまだ道は長い。







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