第23話 僕はカトレアを見送る
朝からヤることをヤったあと、ムタくんと最後にキスをして別れる。
「……姉ちゃん、すげかった」
行為が始まると部屋から出て行ってくれたレンが、僕を上目遣いで見る。
かわいい。
「レンとはまだできないのかなー」
「す、すぐにでっかくなる!!」
「楽しみにしてるよ」
レンが真っ赤な顔をそらす。
「そろそろ時間だよ、姉ちゃん」
「うん?」
「ほら、カトレアが後方基地ってとこに行くやつ」
「あー! ごめん、忘れてた! すぐ行こう。……で、どこだっけ?」
「はぁー……ボーっとしすぎだ! 一度教会に集合していから行くって言ってたから、教会に行けばいいと思う!」
レンに言われるいまのいままで忘れていた。ムタくんとの行為が思いのほかよくて、思い出していたのだ。
キースさんは無理やり犯す感じで、そこに愛は感じなかった。ただ性欲のままに犯されていた。けれど、ムタくんは違う。
性欲ももちろんあった。キースさんとの違いは、愛があるかないかだ。ムタくんはたっぷりの愛情を感じる行為をしてくれた。どちらもいいものだけど、女としてはムタくんとしたい気持ちが強い。
やっぱり、愛してくれている人とするのが一番なのだ。
教会に到着すると、すでにカトレアとほか数人の孤児、それからリーデルハイトさんと成人間近の男性が3人ほどいた。全員で9人になる。
あの3人がリーデルハイトさんが連れていくメンバーなのだろう。
「お待たせしました」
「統治官殿は下半身の世話もしてくださると評判ですな」
「まったくだ。我らの世話もしてほしいものだが、兄弟が増えるのも考えものだしなぁ」
リーデルハイトさんの部下であろう3人のうち、2人が僕の体を嘗め回すように言い放つ。
もう1人は気まずそうに視線をそらし、リーデルハイトさんは「まったく」と言いながら部下たちに注意してくれた。
「統治官殿、そろそろ出る。あまりふしだらな生活はせぬように。不祥事があれば送り返そうとする勢力は、いまも健在なのだ。その身が惜しければ慎め」
「はい。ご忠告、痛み入ります」
「ァ、アカリ様! 行ってまいります!」
リュックを背負ったカトレアが、僕に駆け寄ってきた。
「行ってらっしゃい。気を付けるんだよ」
「は、はい!」
昨日よりは自信がついているように思う。
これなら大丈夫そうだ。リーデルハイトさんと一緒、イシュリーゼ族のほかの人が一緒ということで少し不安だったけれど。
みんなを送り出し、僕は自室に戻って産業革命の計画を立てることにする。レンはひと段落ついたから、と言ってジュリアとセーラに会いに行くらしい。何か、大事な話があるそうだ。
「告白は順序が大事だよ」
「ち、ちげーし!! 姉ちゃんが一番だから!」
「ありがとね、レン」
いつものようにレンの頭を撫でると、レンが真っ赤になった。おもしろい。
「~~! い、行ってくる!」
「気を付けてね!」
「うん!」
一人になり、部屋に戻った。
しなければいけないことをまとめた紙を見て、唸る。
「やること多すぎるし、ハードル高すぎるんだけど」
まず一つ目。
戦争を終わらせる。
無理難題すぎる。
二つ目。
奴隷を解放する。
無理ゲーすぎる。
三つ目。
帝国と渡り合えるような国に独立する。
うん、これが一番無理。
帝国なめてんの? ……それはないか。
帝国を相手にして対等に渡り合いたいというのが、議会の結論だった。
だから僕は、それに向けて全力を出す。
そのためには、ファミリア系国家で起きている産業革命を、こちらでも引き起こす必要がある。後方基地からの情報を見れば、トルーダ帝国でも産業革命が起きている可能性があるのだ。産業革命は必須。
ならどうすればいいか。まずは工場労働者人口の確保。だけど、農業革命が起きていないからそれも厳しい。この辺りはトルーダ帝国からしても、アトラス教からしても辺境のようなものだ。
トルーダ帝国はこの地域を抜ければ、あと少しで港が手に入るから攻めているのだろうけれど。
ここを抜けてゼァガルド王国を落とせば、総本山であるピスパニア市国を直接狙えるのだ。
アトラス教を本気で落とそうとしている。
だけど、そんなことはさせない。
「よし。まずは農業関係だ。幸い農業用重機は作り方を知っているし、蒸気機関だってわかる」
何より、列車砲はロマンだから絶対作りたい。
工科大学生だったのだ。このくらい朝飯前なのだ。
「姉ちゃん、入るよ」
「レン? とジュリアにセーラ。どうしたの?」
「アカリお姉ちゃん! 私もレンと一緒に軍隊に入る!」
「私も!」
セーラとジュリアが詰め寄る。
でも、女の子だよ?
「えっと……?」
「レンだけずるい! 私もお姉ちゃんを守るために頑張りたいの!」
「私も!」
「あー……その、軍隊に入るから、その間は姉ちゃんを頼むって言ったらこうなっちゃった」
なるほど。
……なるほど?
「事情はわかったけど、2人はいいの?」
「うん! 絶対生きて帰ってくる!」
「お姉ちゃんとの約束、守るから!」
レンとした、生きて帰って来る約束のことかな?
正直送り出したくないけれど、意思が固くて説得できなさそうだ。それに、軍隊にはゼルさんがいる。あの強面のところで訓練するなら大丈夫だろう。
さすがに、小さな子には優しいと思いたい。僕には厳しかったけれど。
「じゃあ、早速行こっか」
ゼルさんとキースさんに任せた軍隊育成は、西にある平原でしている。既存の銃の対処法、帝国が使ってきた大砲への対処法、それぞれのアトラスに沿った戦い方の伝授などなど……様々なことを教えている。もちろん、基礎訓練も忘れていない。
愛車に三人を乗せて、僕たちは出発した。
お久しぶりです。
久しぶりなので、ちょっとまとめも入ってます。
少し短いですが、キリがいいのでここで投稿させていただきます。
とりあえず、やっぱり第一章完結くらいまでは持っていこうと思いました。
次は久しぶりにゼルさん視点です!
そして、キースさんとムタくんとしている噂がすでに広まっている感じです。はぁ、どうなるんだろう……((おい
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