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リミット・オブ・ペイシェント  作者: 岡由秋重
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金帰火来

衆議院安全保障委員会


「それでは会議を始めさせていただきます。えー動議にありました通り、南鳥島沖の我が国の排他的経済水域内において、戦略兵器と思われる、高エネルギー兵器が使用された件につきまして、調査を行いたいと思います」

只見(ただみ)(まもる)安全保障委員会委員長代理の挨拶で、安全保障委員会は始まった。

いつもはほとんどいないに等しい報道陣も、今日に関してはかなりの数が詰めかけていた。シャッター音が響き渡る中、只見護は話をつづけた。

「本日は参考人として、国防軍幕僚監部作戦部黒木(くろき)亮一(りょういち)君、国防省装備開発局局長吉岡(よしおか)(のぼる)君、及び、株式会社大河内(おおこうち)総合研究所下北(しもきた)特殊研究所統括官時田(ときた)明美(あけみ)さん、以上3名の方々にご出席いただいております」

ここで、議員たちの話声が大きくなった。国防軍が説明をするのはわかるが、装備開発局が何の説明をするのか、ということである。大河内総研については、使用された兵器の民間による分析の報告だと思われていた。

そのあと、ごたごたとした話があり、その後ようやく本題へ入っていった。

「まず、黒木参考人よろしくお願いいたします」

促されると黒木陸将補は立ち上がり、マイクに向かった。これから報告する事の重大さに、膝が震えていた。

「おはようございます。国防軍の黒木です。本日、皆様方に、今日午前0時35分に行われた、新兵器運用試験の概要についてお知らせいたします。対生体兵器用に開発を進めておりました、新型爆弾について、現在運用されております五八式対艦誘導弾の弾頭として実地運用試験を行いました」

ここまでの説明に、議員のほとんどがはっとした表情を浮かべた。

「試験は、南鳥島北東沖140kmの海上で行いました。事前に国際法に則り、船舶への警告、海域からの離脱を促し、他国の艦船につきましても、国際周波数で、警告を行いました。その後、()()()()()()()()()()()、船舶等がいないことを確認しております。実地試験の正確な結果につきましては、国防上の機密に該当するために申し上げられません」

議員たちは、顔を見合わせて、口々にしゃべり始めた。新型爆弾、排他的経済水域内での実験、高エネルギー兵器、ここまで聞いて、これらを結び付けられないものはいなかった。

「しかしながら、北アメリカ合衆国の機動部隊が、偶然実験海域に居合わせ、度重なる警告を無視し、その海域に居座ったことで、甚大なる損害を受けたとのことです。現在実験を行った部隊である、第8艦隊がその支援に向かっています」

そして、彼らの想像が間違っていなかったことが裏付けられた。一部の報道陣は部屋を飛び出していった。委員会室の喧騒はピークに達し、議員の一部からは、怒号が飛んだ。

「静粛に願います!静粛に願います!」

只見護が声をあげて、事態を収拾しようとしたが、すぐに収まりそうにもなかった。

諦めて、委員会室隅のほうにいた、松田に顔を向けると、彼は椅子に座って瞑目していた。深く考え込んでいるようであったが、只見には松田が何を考えているかよくわかった。

(どうせ寝ているだけだな)

そう思うと、失笑が思わずこぼれそうになったが、今の自分の立ち位置を済んでのところで思い出し、自分の職務を果たそうと、再び声を張り上げた。

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