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リミット・オブ・ペイシェント  作者: 岡由秋重
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骨肉相食む

統合幕僚監部情報本部副部長室

「それで、海軍は何で今頃こんなことでごたごた言い始めるんだ!こんなことを今頃言い始めるくらいなら余程自信があるんだろうな!今更こんな寝言など聞けるか!!」

海軍の内部で交わされた通信の傍受記録を机に叩きつけながら、明石情報部長が激怒していた。記録されていた内容は、沖縄本島から先島諸島周辺に配備するだけであった艦隊を、さらに1個艦隊を増派して、吐噶喇周辺に当たらせることにするというものだった。しかも増派される艦隊の主力は、巡航ミサイルを搭載した攻撃的な側面を持つ艦である。

「部長、こんなことになることはわかっていたでしょう。海軍の強硬派が静かだと油断していたのがまずかったのは認めます。しかし、統合幕僚長が、あの時の対応を間違えなければ、こんな事態にはならなかったと思いますがね」

「横井君、言っていいことと悪いことがあると教わらなかったのか!?あのような奴は飛ばされて当然だ。もう二度と一緒に仕事はしたくない!」

「納得しない人もはるかに多いんですよ。少なくとも海軍はほぼ彼のシンパでしたから」

先ほどから明石情報部長と話し合っているのは、横井情報部副部長だった。

「なんで、奴が今頃動き出すんだ?」

「次の選挙に出るという動きもあるらしいですよ」

「冗談じゃないよ!こんなことを政治の場に持ち込むつもりなのか、あの外道め!」

「まあ、噂ですから…」

「そんなことは知らん!とにかく、この話の真意を問いただしに行かねばならん。海上幕僚長につないでくれ」

そういうと、情報部長は座っていたソファーから立ち上がり、持っていたコーヒー缶を握りつぶしてごみ箱に投げ捨てた。

それを横目に見ながら、横井情報部副部長は海上幕僚長に連絡を取った。

「情報部の横井です。藤枝さんは今そちらにおられますか?うちの部長が今すぐに話し合いたい件があると言っているんですが。…ええ、そうです。成程、あとどのくらいになりますか。わかりました。ではまた後程」

そういうと、横井は受話器を置いた。

「どうだ」

「どうやら居留守をつかわれたようですね。会話の向こうから、複数人集まっている音がしました」

「フン、舐められたものだな。もういい、直接乗り込む。横井、お前はどうする」

「私は、太平洋方面の情報収集の仕事がありますので行けません」

にべもない返答ではあったが、実際に切羽詰まっていることでもあったので、情報部長も無理に言うことはできなかった。

「代わりに誰か暇な奴はいないものかな」

「情報部で遊んでいる人員なんていませんよ。あ、本庄君なら暇かもしれません」

「今、授業中でいないだろう。それに高校生にこの内部事情を知らせる気にならない。もうあきらめて1人でいく。身の危険を感じるがしょうがない」

「どのくらいで戻ってきます?」

「1時間くらいをめどにしよう。戻ってこなかったときは、呼びに来てくれ」

「わかりました」

そういうと、明石情報部長は自室に戻って服を整えると、そのまま、海上幕僚長の部屋に向かった。

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