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リミット・オブ・ペイシェント  作者: 岡由秋重
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進取尚武

2時間後、第5独立即応旅団の幕僚で使用していた部屋には、4人が残っていた。

大河内翔、只見勇、中野寿一、江田広郷である。

「まあ、仕事の話はこれくらいにして、親睦でも深めましょうか」

会議の延長で殺伐としていた雰囲気が、只見の一言で少し緩んだ。

「それはいいと思う。お互いのことはよく知らないからな」

それに、江田も同調した。

それに中野も深く頷いた。

「それではそういうことで」

そういって、勇は自分の荷物からトランプを取り出した。

「ポーカーは皆さんできますかね」

全員がうなずく。と、同時に、翔がにやりと笑った。

「では、ポーカーで負けた順に、自分のことを話していくということで」

翔のそんな表情に気付き、それを意図的に無視しながら、そう言って、勇はトランプを配り始めた。


30分後、ポーカーは翔の1人勝ち状態になった。何度やっても何度やっても、他の3人の役よりも1つ上の役ができているのである。

「旅団長いいですか」

中野が机に突っ伏しながら言った。

「いいです。あと、ここでの会話は、学校の先輩後輩の会話ということで」

「なぜ、そんなにポーカーが強い。絶対イカサマしとるだろう!」

真剣な顔をして、中野は翔に突きかかった。

「中野先輩、こいつは昔からこうです。こいつに引っ付いて、いっぺん長崎に連れていかれたことがありましたが、ぼろ儲けでしたよ」

只見が横合いから援護射撃をした。

しかし、やはり、顔を真っ青にした江田が横やりを入れた。

「ちょっと待て、長崎でポーカーというと、カジノじゃないか。お前その年で中に入ったのか?!」

「いえ、ちょっとした伝手がありまして」

カジノにも年齢制限はある。未成年者は入場が制限されていたはずであったが、どうやら、翔と勇は裏口から入ったようだった。

「いや、そこは問題じゃないな。勝ったのか?あそこで?それは無茶苦茶だろ」

そもそも入場の制限は法律によって制限されている。つまり、未成年で中に入ることができるのは、()()()()の家格があった上で、少々の法律違反は咎められないような人種だけである。そして、カジノの内情を未成年で知っているとなると…、中に入ったことがある者しかありえないのである。

そこで、翔は、少しカマをかけることにした。

「先輩も行ったことがあるんですか?」

「ああ、まあ1回行っただけで懲りたがな。中野君はあるのか?」

「自分の地域でカジノと聞くと裏社会の印象が強くてな…、誘われたことはあるが行く気にはなれんかったな」

2人ともあっさりと前科もしくは未遂があることを認めた。

「それで、結局、1番負けが込んでいるのは誰でしたっけ?」

話の流れを元に戻すために、勇は尋ねた。

「…私だな」

江田が言った。

「名前は知っての通りだ。第6高等学校の風紀副委員長をやっている。…賭け事は苦手だ。年の4分の1は海の上で過ごしている。それぐらいかな」

「他には何か特技などないんですか?」

「…強いて言うなら、艦の係留ぐらいかな」

江田以外の3人は、なぜ、江田が艦長に選ばれたのかよくわかった気がした。

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