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リミット・オブ・ペイシェント  作者: 岡由秋重
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野晒の露

勇は、教室の窓を飛び降りた後、急いで、校内から出た。

あの風紀委員長のことである。自分のことを諦めている素振りはなかったため、何かをしてくると考えられた。校門を抑えられていたら、窓を飛び降りた意味もなかったのだが、幸いそのようなことはなかった。

しかし、翔たちがまだ残っているのが気掛かりだったため、校門が見えるところで待機しておくことにした。

翔と一緒に国防省に行く予定にしていたということもあるが。


その頃翔は、生徒会室にいた。

風紀委員長に、理由も説明されずに連れてこられたのである。

ほとんど強制連行であったが。

「急に呼んで申し訳ない。大河内君」

目の前には、生徒会長が座っているのである。入学式のリハーサルの時に顔を合わせているので、知らないというわけではないが、こころなし、翔は緊張を覚えていた。

「用件は何でしょうか、今村会長」

この時の生徒会長は、今村雅充という3年生であった。高校生にして、内閣官房の中枢を担うなど、優れた人であるといわれている。

「察しがついていると思うが、君に生徒会に入ってほしい。これが1点目だ。これは、例年のことなので、承諾してほしい」

「わかりました。それに関しては、加入させていただきたいと思います」

「よろしい。そして、2点目についてだが…、只見勇に、風紀委員会入りを了承させてほしい」

これは、翔も予想していなかった。まさか、生徒会長から、直接そのような話があるとは思ってもみなかったのである。

「それはさすがに…。本人から、既に断ったと聞いていますが」

「そこを曲げてお願いしたい」

こうなると、一官僚として、キャリアを積んできた者と、今まで、中学生であった者の違いである。翔は折れるしかなさそうだと判断した。

ただし、腑に落ちないこともあった。

「なぜそんなにあいつを必要とするのですか」

「今からいうことは、黙っておけるか?」

「本人以外には、黙っておきましょう」

「……まあいいだろう。現在、第一高校内には、政治勢力が存在する」

「公務員が特定の政治勢力に肩入れすることはできないはずですが」

「公務員ではないものもたくさんいる。公務員でないものは特に、私人の政治信条の自由は保障されている。それはいいのだが、昨今の政治的不安定を基にして、極端な意見が世に出回るようになっている。そして、それらの意見は、極端なナショナリズムかその逆の考え方だな。そして本校でも、そのような集まりが存在するということになるな」

さすがに聞きかねた翔は、話の腰を折った。

「それがどう関係してくるのですか」

「まあよく聞け。本校内において、2つの相反する政治勢力が存在し、双方ともに過激化の兆候が見られる。このような状況は、どこかしこも似たようなものだが、本校では特にひどい。意見が対立する2つの勢力が、学内で衝突、もしくは、実力に訴えて、事件を起こしたら大変なことになる。それを抑えるために、本当に力のあるものが必要とされている、そういうわけだ」

「つまり、学内での、抗争を抑えるのに、あいつが必要な人材であるということですか。……わかりました、本人を説得してみますが、あまり期待はしないでください」

「頼む。後、生徒会の詳しい仕事内容については、明日説明する」

「わかりました。失礼します」


とにかく、翔が知りたいことは分かった。

しかし、このことがのちに大きなことを引き起こすことになるとは、想像もしていなかった。

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