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リミット・オブ・ペイシェント  作者: 岡由秋重
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春雷轟く

次の日、国防省地下1階の会議室には20人弱の高校生が集まっていた。

勇と翔は、全員が集合したことを確認すると、室内に入った。

室内の話声が一斉に収まり、敬礼を受けながら入ったものの、全員が顔をあげた途端、騒ぎ声が大きくなった。

当然である。彼、彼女たちにとって今まで見たことがない者=1年生が自分たちの上官として迎えられたことになるからだった。

「これより、第5独立即応旅団幕僚会議を始めます」

そんな状況を無視して勇のこの挨拶から会議は始まった。

「まず初めに自己紹介をします。自分は第5独立即応旅団副旅団長只見勇一佐です。次に、1人ずつ挨拶をしてもらいたいと思いますが…、その前に、この場に銃器類を持ってきているものは机の上に出してください」

一応国防省内の建物に入るときには検査があり、銃器類は全てそこで預けることが義務付けられている。

つまりここに銃器類がある時点で規則違反というわけだが、机の上に銃器を置いたのは2、3人ほどいた。

「正直者がいたわけだが、見たところあと4人いるようだな。まあいい、憲兵隊に引き渡すのは後にして自己紹介に移ろう。では旅団長から」

数人が顔色が真っ青になったものの、犯人捜査を後回しにすることにして、予定通りに話を進めようとした。しかし、1人の者が挙手をして立ち上がった。

「質問は許されるのか?」

「どうぞ」

心の中で舌打ちをしながら勇は返答した。

「どういった経緯で、君たちがその席にいるのか?」

この質問が予測できていたからである。

高校生とはいえ、国防軍の幹部に選ばれることになろうという人材の集まりである。それなりにもう訓練をくぐってきたような猛者が居並ぶ中、どこの馬の骨とも知れないような者を頭にいただこうとは考えられないのである。

律儀に経緯を説明しようとする翔を、勇が抑えて返答した。

「内閣総理大臣によって承認され、国防軍統合幕僚長より拝命しました。それが理由です」

それでもかなりの部分を端折ったものではあったが。勿論それで納得されるはずもなかった。

「具体的には、どのようなことがその意思決定に反映されたのですか」

言葉尻は丁寧になったが、言葉のうちの険は取れなかった。

「実力です」

対する答えも素っ気ないものになった。

それに対して、全体から発せられていた殺気が一段と密度を増した。

「実力に関しては、我々も劣るものではないと自負しているのですがね」

空気がまた険悪になり始めた。

勇にも相手の言いたいことが分かってきた。

「つまり、君たちよりもこっちのほうが実力が劣っていると君は言うのかな」

「そうなるな」

「証明して見せられるか」

これ以上言いたい放題にされるのは我慢がならなかった。勇は今までの態度をかなぐり捨てた。

「副旅団長、落ち着け」

「旅団長、止めないでください」「証明して見せようじゃないか」

職能上、翔は2人の言い争いを止める立場にあるため、声をかけたものの、双方ともそれを拒絶、または無視した。

「いい加減にしろ!これ以上ない時間をさらに削るつもりか」

日頃温厚な翔も付き合っていられる状況下ではないため怒声をあげた。

勇と、因縁をつけてきた相手も黙り込んだ。

次に口を開いてきたのは、また別の者だった。

「旅団長、副旅団長、我々は、あなた方の実務能力に、疑念を抱いています。その疑念を解消する場を用意していただきたいのですが」

しかしそれもあからさまな挑戦だった。

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