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リミット・オブ・ペイシェント  作者: 岡由秋重
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滄溟の泡沫

「それは誰だ」

「名前は確か立花(たちばな)といったと思う。十七か国語を操る才媛だという話を聞いているが」

「立花ねぇ…誰かいたと思ったんだが……。!!そうだ思い出した。あの人か」

「勇、知っているのか」

「ああ、今の第1師団長が立花(たちばな)修一(しゅういち)さんだったが、大叔父からその一人娘が相当な秀才だと聞いたことがある。多分間違いないだろう。そうか一高にいたのか」

「確かその通りだったと思うよ。また明日、この件について説明をせざるを得ないか」

「作戦前に外務省に漏らすのか…、避けたほうがいいと思うぞ」

「外務省から漏れることを心配しているのか?それはするだけ無駄だろう。今の情報対策はしっかりしているはずだが。そっちの父上からかなり脅かされているのが効きすぎてはいないか」

実際、その通りであった。靖の口から外務省に対して出てくる言葉は、情報漏洩に対する愚痴であったし、実際に身にしみてその恐ろしさを勇は体験している。

「何度か外務省の失態で、死んでもおかしくない目にあわされた身としては、十分心配の種になりうるのだがな」

「まあ、向こうもかなり反省はしているんだよ。ただ相手の情報収集能力が上回っていただけで、………………確かに、迂闊なことは言えないな」

「漏れたときに危険なのは、お前とこっちだけじゃなくて、400人だからな400人」

「よく考えると、外務省に交渉させた時点で漏れてしまうか…。駄目だねこれは。諦めて、マルとの試験に託すか」

「それでいいんだよ」

「下手の考え休むに似たり、か。結局、一周巡って元に戻ってしまったな。こうなったら、作戦の確度をあげるしかないな」

「さっきからこっちが言っているはずだが」

勇の言葉を無視して翔は続けた。

「しかし、お前の立案した作戦の完成度は高い。正直に言って改変の余地がないからな、どこをどうしたものか」

「お前が今から空軍の幕僚長のところに行って、第5独立即応旅団の空軍部の設立の説得に向かってくれれば、すぐに解決するが」

「それは無理だ。各方面の反対が強すぎる」

「各方面ってどこだよ」

「背広組だよ、背広組」

「あそこは、国際法の遵守と、政治家と、外国の反応にしか興味がない。有無を言わせず、強引にしてきたらどうだ」

「そういうわけにもいかない。どこで何をされるかわかったものじゃないぞ。お前も知っているだろう。何故、対馬は死守されずに、後日反攻という形になったのか」

「…そうだった」

2036年に発生した対馬戦について、何故、自衛隊が一度全住民を連れての撤退となったのかというと、当時の前線指揮官が、背広組の一部と折り合いが悪く、増援がすぐに送られなかったためであった。国民にはこのことは秘匿され、当時のことを知る者には箝口令が敷かれているものの、このことは、制服組の記憶に深く残っている。

結局、背広組が法的に根拠を与えなければ、国防軍としても動きは取れないのである。

「まあ陸軍に関係するところの作戦はこれ以上変えようがない。つまり必要なのは、海軍に関係するところだ」

「しかし、旅団として海上戦力を動かせるのは護衛艦1隻だけだ。これ以上はどうしようもないんじゃないか」

「海軍は比較的、今回の作戦の重要性がわかっている。協力的な態度を見せているから、少しくらいは要請も聞いてくれるんじゃないか。被害が出ない範囲で」

「……お前、まさか機雷を使う気じゃないだろうな」

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