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リミット・オブ・ペイシェント  作者: 岡由秋重
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立てし心の撓みなく

「作戦に失敗して、マスコミ攻勢にあったときに尻尾きりに会うのは俺たちだからな。まあ、そんな目にあわないようにするしかないか」

勇のボヤキに翔も続けた。

「一応、作戦案は立てて認可されたからな。ここまで来たら国防軍も一蓮托生なんだが」

「切り捨てられても別に実害はないからな。どちらかというと、こっちを切り捨てたとき国防省のほうの被害のほうが大きくならないかな」

さらりと問題発言をした勇だったが、翔は気にせず無視した。

「ま、そんなことは二の次だ。勇、真面目に考えて、どの程度作戦がうまくいくと思ってる」

「作戦は三段階に分けられる。洋上、水際、陸上戦だな。洋上と水際がどれほど成功するかに、この作戦はかかっているからな…。一応、文書内に対応チャートと、作戦経過の図上予測を数パターン添付してあったはずだが」

「…俺の個人的な意見を言わせてもらおう。コンピュータの計算で作った作戦経過予測は当てにならん。一応、OJINに通したのは、客観的に見える裏付けを取りたかっただけだ。お前の直感は何と言ってる」

「はっきり言って、先が見通せないというのが正直なところだな。部隊の士気が大きく戦局を左右することになるだろうな」

「お前もそう思うか…。まあ、戦闘回避に走れば、それに越したことはないわけなんだが」

「おいおい翔、交渉でどうにかなることだと思うか?もともと、多民族国家である東亜共和国が国内の不平分子の矛先を変えるため、向こうが起こしたことだからな」

「まあその通り難しいだろう。しかしながら、さっき言ったとおり今のままでは五分五分の作戦の可能性を、六分四分までは持っていきたい。そのためには、無駄と思えることであっても、開戦までの時間を引き延ばしておきたい」

翔の提案に勇は反論した。

「一応対応策は、上層部でも考えてあるという話だったろう。マルとの実験がそれだ」

「勇、少し考えろ。あの話は、アメリカの生体兵器の介入を止めさせるだけのことしかできない。そもそも脅威を覚えるのはアメリカだけだ。もし、東亜共和国が脅威を覚えたとしたら、猶更振り上げた拳を振り下ろしてくるだろう」

「特大サイズの本物の拳だな。拳がヒトのものとは限らん」

勇の冗談に、付き合う気は、翔には毛頭なかった。

「冗談じゃないよ。相手にとってそれを使うには、こっちが守るところが狭すぎて使えないのは、こっちにとっては不幸中の幸いだったがな。そんなことはいい、問題は、こっちの開戦の日付を遅らせる必要があるということだ」

「そんな工作をしたところであまり変わらないんじゃないか。出来ることは限られているだろう」

「運び込めるものが違ってくれば、大幅に違ってくるぞ。個人的には、梱包爆薬を使えるといいと思っていたところだったからな」

「作戦案を大幅にいじられると困るんだが…。敵の宣伝になるようなことをしてくれるなよ」

「そうなったところで、我々は領土を守れる。敵は戦力を失う。いいことずくめじゃないか。その後のことは、外務省がすることだ。こっちが関知することじゃない」

「まあその通りだがな」

「兎に角、時間を引き延ばせば引き延ばせただけ、こちらの勝率をあげることはできる。そうだな?」

「そうだ」

「そこでだ、工作の要請ぐらいはしておくことにするよ。何もしないよりましだ」

「どこに頼むんだ」

「何のために国立高等学校に入ったと思っているんだ、新しいコネを作るためだろう。つまりだ、同級生で、外務省の人づてに頼もう」

「そんなに、重要な役職についてる人でもいるのか?」

勇の疑問に翔が答えた。

「1人だけだが、同じクラスにいたはずだ」

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