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リミット・オブ・ペイシェント  作者: 岡由秋重
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大瀛呑みて

「終わりました。どうぞ」

2人は再度、部屋の中に入った。

「で、どうでしたか」

「一言で言うなら、的確な作戦であるという結論に達しました。しかしながら、作戦の存在意義がないということでした」

この返答に勇は不快感を覚えた。

「どういうことでしょう」

勇の不快感が行動になる前に翔は先手を打って意図を確認した。

「このようなことは起こりえないということです。作戦目標として、意味がないということでした」

この発言に堪忍袋の緒が切れたのか、勇は間髪を入れずに言い返した。

「そういうことになるということは、OJINに作戦を組み立てるための情報量が少なすぎるのではありませんか」

「情報が完璧な状態はあり得ません。その中で最善を尽くした結果です」

「その判断そのものが不完全ではないかと思いますが」

「それは私に対する侮辱と受け取ってもよろしいでしょうか」

「自分があなたを侮辱したというのならば…」

どうも、勇と万知は折り合いをつけられないらしいと翔が思い至り、仲介に入ることにした。実際先程から、仲介しかしていないような気がしていた。

「まあまあ、落ち着いてください。つまり、この作戦が想定する状況が起こった時、この作戦案は機能するということで良いですね」

「そうです」

先程の言い争いのことを感じさせずに万知は即答した。まあ、不承不承という感じを翔は受けたが。

「つまり、この作戦案に対してOJINからは、否定しないという結果が出たということで報告して結構ですね」

「いえ、ですから…」

「このような状況が起きないと、OJINは断言できますか」

「それは無理です」

「では起きる可能性があると言い切れますね」

「…はい」

誘導尋問をしているようで、軽い罪悪感を翔は覚えたが、ここで引き下がると勇がまた先程の続きをする可能性があったのでそのまま続けた。

「つまり、この作戦案を立てる意味は全くないわけではなく、必要になった際には最善の策であるということでよろしいですね」

「…その通りです」

「では言質が取れたということで。行くぞ、只見一佐」

そういうとともに翔は立ち上がり、勇を引きずるようにして作戦部の部屋を出た。

後には呆気にとられた顔をした万知が残された。


「統幕長、報告します。OJINによる解析の結果、作戦としての成立が見込まれました。以上です」

勇が抑揚のない声で、報告に行ったのはその2分後だった。

「わかった。午後の統合幕僚会議の議案に入れておく。下がって良し」

「失礼しました」

そういって、勇は、部屋の外に出た。

「よし、ヤマは越えたぞ」

そして、部屋の外の壁に寄り掛かっていた翔に言う。

翔としても、ここからが正念場になりそうだった。

「後は…、そうだな、第5独立即応旅団の幕僚を緊急で集める必要があるか。時間がないからな、急ぐことにしよう」

「そこはこっちでやろう。副官だしな。旅団長閣下の仕事じゃない。で、いつにする」

「明日だと早いな。明後日にしよう。午前11時から国防省の本官の部屋で行う。今回の作戦のブリーフィングも兼ねる。こんな感じで行くか」

「細かいところはやっておく。で、呼び集めるのは具体的に誰なんだ?お前のことだ、もう決めているだろうが」

「それはだな…」

ちょうどその時サイレンが鳴った。時報である。

「…昼ごはん食べながら、話すことにしよう」

「そうすっか」

2人は、国防省の中の食堂に向かった。

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