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リミット・オブ・ペイシェント  作者: 岡由秋重
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百難排して

「そこでです。この作戦案を一度OJINに通していただけませんか」

「わかりました。しかし条件があります」

「何でしょう」

「そちらのほうの暴言を取り消していただくだけで結構です」

万知のこの言葉に、勇はカチンときた。さすがに言いすぎたかもしれない、と思うようなことは何一つ言っていないからである。

「自分が何か暴言に当たるようなことを言いましたか」

「OJINの能力を疑う発言をしました。これを今すぐに撤回して下さい」

「わかりました。客観的な判断をするために今すぐソースコードを見せてください。情報の取り扱いに関しては心配しなくて結構です」

さすがにそのような応答は予想外だったらしい。鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしたが、一瞬で、元の能面のような表情に戻った。

「…そんなことが部外者にできるわけがないでしょう。しかし、今の発言はあなたの主観によるということがわかりました。主観のみで判断したことは謝罪を要求します」

「OJINは作り上げられてからの期間が短いという事実を述べただけです。そのことを謝罪する必要は感じられません」

「その事実を述べたときに、あなたは、OJINは不完全であるという意図をもって発言をしました。その意図は、あなたの主観によると指摘しているのです。よってその点の謝罪を要求します」

これ以上言い合いが続くとこれからに支障をきたすため翔は勇に助け舟を出すことにした。

「勇、議論はまた後でやれ、いったんここで折れろ。相手のほうが手札が多いし、今は非常時だ」

相手に聞こえないように、声量と方向を絞って勇に囁いた。

「……わかりました、先ほどの発言は後日よく吟味したうえで、撤回するかどうか考えます。軽率に発言したことを謝罪します」

「…まあいいです。こちらとしても大人げない対応を取ってしまい申し訳なく思います」

相手も折れたので、翔は最初の要求をもう一度言った。

「ではやってくれますか。どの程度かかりますか」

「そうですね。早ければ10分ほどで終わると思います」

「ではよろしくお願いします」

翔が立ち上がり、連れて勇も立ち上がる。そして、深々とお辞儀をして、作戦部の部屋から出て行った。


「なんでお前は、当たりがそんなに強いんだ?いちいちそんなことをしていたら、敵を作るだけだぞ。お前の昔からの悪い癖だ。大体、あれが胡散臭いと思っていても、心の中だけでとどめておけ、そう思っているのはお前だけじゃないんだから」

出てきた直後から、説教の雨霰に勇は会うことになった。

「最悪、上のほうから手を回してもらえば、運用止められるだろう。コネは使うためにあるだろうが」

勇にとって、最後の言葉だけは看過できなかった。

「堂々とこの場で言うことか。そりゃあ大叔父の知り合いから手を回してもらえばどうにかできるだろうが」

「そんなことはどうでもよろしい。兎に角ここで言い合いをするほど無駄なことはないからやめろ」

「…すみませんでした」

逆に翔から一喝された。まあ、翔の言っていることに理があるので、勇も納得するしかなかった。

「まあ済んだことはいい。しかし、OJINにも重大な欠陥があるといえる。情報に変なバイアスをかけられた時、それを判断する能力がない。いや違うな。あるのだろうが、それが機能しないほど巧妙な偽の情報をつかまされるとどうしようもないといえそうだ」

「逆に、情報部とかで運用するとよさそうだがな」

「そういうことだ。統幕長にでも意見具申しておくか」

そうこうしているうちに、10分は経過したらしい。

部屋から万知が出てきた


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