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リミット・オブ・ペイシェント  作者: 岡由秋重
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浮かぬ世界に

出ていく直前に、翔は腕を掴まれたのである。

驚いて振り返ると、にやにやしながら黒木陸将補が立っていた。

他の幕僚はどんどん部屋を出ていき、後には、統合幕僚長、陸海空の幕僚長、清水運用部長、中川本部長、黒木陸将補、明石情報部長そして、翔とそれについていた勇が残された。

「黒木君、君は、どうしてあの場面であんなことを言い出すかな…」

会議室の扉が閉められた途端、立見統合幕僚長は第一声に、こう口を開いた。

「軍人たるもの、可能性を否定することはできませんから」

黒木陸将補はそう嘯いた。

「組織が大きくなると何を気を付けなければならないか、防諜だよ」

明石情報部長が合いの手を入れた。怖い顔をして、なかなか付き合いがいいかもしれない。

「まあそういうことだ。身内でも信用できる奴は限られている。今ここにいる連中が一番信用できるレベルということだ」

後の発言は、翔と勇に向けられたものだったらしい。つまるところ、不用意な発言はするなということらしい。

「ところで、黒木君、言いかけたことは何かね」

「………尖閣諸島だけを、東亜共和国が狙うというのは考えにくいということです。私が言いたかったことは」

「そんなことは断じて無い、と言いたいところだがが、今回ばかりは少しおかしいから笑い飛ばすこともできん。ただ、積極的に肯定できるものでもない」

明石情報部長が返答した。

「黒木陸将補、質問してもよろしいですか」

「ん、何だ?」

翔が、この際聞いておこうと思ったことがあった。それは、

「もし、尖閣諸島が主目標でないとしたら、主目標はどこだと考えていますか」

「そりゃあ、南西諸島の先島諸島と、沖縄本島を除いたところ、つまり、奄美かトカラ列島ではないかと思う」

その発言に、立見統合幕僚長、清水運用部長、陸海空各幕僚長が頷いた。

「そこを防衛する必要性があると考えているのですか」

重ねて勇が質問する。

「動かせる部隊があるならね。そこはどうなんです?」

確認を求めるように、秋沢(あきさわ)(きよし)陸上幕僚長に尋ねる。

「いや、現状そのような部隊はなかったと思う。よしんばあったとしても、敵に悟られずに陣地を構築するのは至難の業だから。無茶はできない」

答えは否であった。

「つまり、動かせる部隊さえあればあとはどうにかできますね?」

ただし、ここで、翔と勇は引き下がるわけにはいかなかった。

東亜共和国の出方を2人は理解しているからである。ほぼ反則的ではあるが。

そして、翔の発した言葉に、幕僚全員が顔を見合わせた。

「……君たちの中に動かせる部隊があるとでも言うのか?」

「現在、指示されていた第5独立即応旅団の設立準備を進めています。これについて現在、陸軍および、海軍の統合まで終わりました。現在本官の指揮下にある部隊として、必要な書類を揃えておりますので、一応、明日にも発足させることは可能です」


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