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リミット・オブ・ペイシェント  作者: 岡由秋重
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隙行く駒

7時前に2人とも作業が終わり、後は会議まで待つだけになったのだが、やらなければならないことがあった。

一応、2人とも高校の新入生である。つまり、授業は始まっている上に、それを受けていない状態がある。

国防省の厳重に警備された部屋の中で、教科のデータを端末で開いて勉強をするということもなかなかできない体験ではあったが。

8時前になって、2人は、幕僚会議室に入った。

「さて、会議を開く前に、4月1日付で幕僚に就任したものを紹介する。まず、(はら)富雄(とみお)君の後任として、陸軍西部方面軍から鳥野(とりの)大誠(たいせい)陸将。また本年度より、国立高等学校から幕僚として、大河内翔特務将補を迎えた。前回の緊急会合の時に紹介ができなかったため、ここで、紹介した」

冒頭は、統合幕僚長の話から始まった。

次に、運用部長が立ち上がった。

「今回の議題は、前回に引き続き、東亜共和国対策になっています。全員の手元に資料があると思います。基本的には、これに、従うということになっていますが一通り確認をしたいと思います。今回の作戦案は、昨年度国防省に導入された作戦支援システムOJINによってたてられたものです。その点として初めての実戦となるので、忌憚のない意見を取りたいと思います」

そこまで言い終えると、着席し、次に生体兵器対策本部長が立ち上がった。

「本計画は主に、尖閣諸島周辺の海域の制海権を握ることにある。敵が投入する戦力は、戦略兵器3つという莫大なものになる。そして、各個撃破されるという愚を避けるために、集中投入されることも想像に難くない。これより、我々に許されうる最大の戦力を投入する必要があると判断された。そのためにまず、デモンストレーションが必要になる」

ここまでの説明に要領を掴めていないような顔をした者が半分を占めた。

「中川本部長、それはどういうことでしょうか」

「それについては私から報告があります」

立ち上がったのは、背広姿の初老の男性である。服装から、国防軍ではなく、国防省の人間であることが窺われた。

「装備開発局局長の吉岡(よしおか)と申します。えー、その件につきまして、10年前より民間の研究機関との共同開発を行い、一昨年、新型の爆薬を完成いたしました。威力につきましては、実物を用いて細かい試験をしなければわかりませんが、理論上5000kgで、広島型原爆1発分に相当する代物という結果になっております。現在の名称は『マルと』としております」

会議室が喧騒に満ちた。なかなか信じられないことだからである。

「確認するが、それは、核爆弾ではないのかね」

「いいえ、全く別物です。反応前後に、放射能を含むものはありませんし、放射性残留物等も残りません。まったく最新の兵器とお考え下さい」

更に会議室の中が騒がしくなる。

それを遮るように、中川本部長が話を続けた。

「この新型爆薬を弾頭に詰めたミサイルを、第八艦隊の護衛艦に積み込んでいる。封書命令が同封されており、実行直前にあけるように指令を出すだけでいい」

「しかし中川本部長、テストするには、どのような被害が及ぶのかの綿密なシミュレーションが必要で…」

「事態は一刻を争う。日本が新型兵器を配備したことを相手に知らせる必要があると考える。新型爆薬のテストは、南鳥島東方沖で行うようにしている。これを、東亜共和国の出撃前夜に実行し、東亜共和国及び、アメリカへの牽制とする」


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