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リミット・オブ・ペイシェント  作者: 岡由秋重
29/82

西方の妖雲

作業を始めたものの、その日のうちに終わるわけもなく、2人はそれぞれ家路についた。

勇が家にたどり着いたのは、間もなく、日付をまたぐような時間だった。

家にたどり着いたときには、家に起きている人は誰もいなかった。父の靖も、自室で眠りについているようである。

かなり遅い夕飯にしようと、リビングの机の上を見ると、何やら紙に印刷された、書類が置いてあることに気付いた。

一枚目に、マル秘と大きく書かれている。なんとも大仰な書類だった。作成者の欄にYとだけ大きく書いてあった。

(Y機関の調査資料というわけか。この時期ということは、東亜共和国がらみの何かか?)

次のページに目を通すと、そこに書かれていたことは、きょう翔と話し合ったことと殆ど同じだった。

(まあ情報の裏付けが取れたと思っておこう。特筆すべき内容も無さそうだしな)

ただ、更にその次のページを開いた瞬間に、その考えは吹き飛ばされることになった。

そのページに書いてあることは、意味不明な暗号のようなものだった。いや、暗号だった。

一見、世界各国の言語をごちゃまぜにして、乱雑に並べ直したような紙を持って、勇は自室のスキャナーに駆け込んだ。

スキャナーにプリントを読み込ませて、画像に変換したものを、これだけのために作られた処理機に通す。

そこから出てきたデータをさらに、パソコンの専用のソフトを使って、解読して、やっと元のデータが出てきた。

そこに書かれていたのは、東亜共和国の作戦要綱であった。今回の侵攻作戦は、今まで研究されてきた作戦案の一つであったということである。

しかし疑問に思われることもあった。

今頃、この資料が出てきたことである。

その思索は、打ち切られることになった。電子音とともに軍用回線を通じて連絡が入ってきたのである。

すでに遅い時間だが、急いで受話器を取り上げる。

「はい、もしもし」

「識別番号を」

電話は、相当重大な案件らしい。翔との連絡にしか使っていなかったため、重要性を忘れていた勇にとって、少々驚かされる事態だった。とにかく、伝えられていた識別番号を言う。

「32384626」

「只見一佐、明日、緊急の幕僚会議が開かれますので、8時にお願いします」

「了解しました」

通話はそこで途切れた。

(1つ目の識別番号で済んだか。大した用件じゃないな)

様々な理由で、識別番号を複数保有する自分にとって、別の意味で、それは有利に働いた。

ただ、今はそれよりも、とにかく布団につかないと、床にぶっ倒れそうだった。


朝の5時に叩き起こされて、勇は昨日机の上に置かれていた書類を持って家を出た。乱暴に起こした父を恨みながら、国防省の建物に向かう。

昨日していたことを、今日の会議前に終わらせる必要があったため、目覚ましをセットしていたのだが、起きなかったらしい。少々痛い目にあわされて、起こされたのである。

守衛にカードを見せて建物の中に入り、翔にあてがわれていた部屋へ向かう。

認証コードを打ち込み、指紋、静脈認証をして、やっと部屋の中に入る。

すると、部屋の中の、翔の机の上に書類があった。

何の気もなしにそれを見ると、紙の上に書いてあったものは、

「尖閣諸島周辺海域防衛計画(案)」

であった。

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