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リミット・オブ・ペイシェント  作者: 岡由秋重
23/82

池に潜む身

日曜日は何事もなく終わり、あっという間に月曜日であった。

(いっぱい色々なことがあったように思えて、まだ高校に登校するのは、2回目なのか)

勇は、そんなことを思いながら、窓の外を見ていた。

今は、学校になれるために、校内を案内されている最中である。

一応、それなりに判っておけばいいし、そんなことは、情報端末をのぞけば、わかることでもあるので、積極的に、好奇心を丸出しにして、眺める気は毛頭なかった。


あっという間に午前中も終わり、勇は、翔とともに教室で昼食をとることにした。もちろん大介と高司も一緒にである。

ところが、それを邪魔する者がいた。

「只見勇、いるか」

風紀委員長の本条遥だった。

いやそうな顔を作って、勇は席を立った。

「何か御用ですか」

「いやー、ちょうどよかった。とにかく、委員会室まで来てくれ」

嫌味を完璧に無視されて、勇は、遥に連行されていった。3人は、ただ見送ることしかできなかった。

あっという間の出来事すぎたのである。


連行された本人はおとなしくついていった。

それを遥に訝しく思われながらも、入学式と同じところに座らせられた。

「ところで、先に聞こう、風紀委員会に入る気は起きたか」

「うんと言わせるまでこうするつもりでしょう……はい、そうですね」

「ならよろしい、さて、早速尋ねたいことがあるのだが、君はどこまで、この学校のシステムをわかっている?」

「本当にどうでもいいことのような気がするのですがね、行政の雛形がこの学校であることですか」

「よくご存じで。では、あと一つは何だ?」

「為政者に対して、頭をあげることができない人物を作り、独裁を防ぐことですかね」

「その通りだ。知っての通りのことだが、それを遵守するために、生徒会及び各委員会が存在している」

国立高等学校を設立するにあたって、優秀な人材を過度に集めることは、それらの行動にブレーキを付けることができなくなるのではないかという危惧があった。その危惧が現実のものとなる前に、複数の安全装置を作ることにしたのである。一つ目が官僚的思考の植え付けである。早い話が、越権行為を絶対にしない人材を作り上げることである。そのことを打破するための国立高等学校制度だったがっそれよりも優先されるべきことがあると判断されたのである。そして、それを権限超える人材が、存在することは確実なため、そのような人物に対して、ストッパーとなる役割が存在させるようにするということも課せられることになったのである。

「そのようなことと自分が、風紀委員会に入ることに何の因果関係が?」

「ない」

はっきりと遥に言い切られた。

「君の場合は、純粋に、能力で決められたと思ってほしい。この環境の中でも、特殊な立ち位置にあるようだしな」

「恐縮です」

「能力は高く買っていても底が知れんな。君は何者なのか。情報部で調べても何も出てこないとはね、極秘文書でも、なかなかそんなことはないのだが、人となると更に珍しい」

「いえ、秘密にするほどのことは何もないですがね」

「その程度のことじゃない。人には隠さなければならない暗部が必ずある。お前には、それが全くなかったんだな」

「あけっぴろげな人間として、処理はされませんか」

「そんな人間本当にいるわけがないからな」

遥の目に剣呑な光が混じり始めた。

「この話は終わりにしましょう。()()()()()。二度と蒸し返さないでください」

それは、勇も同じだった。

ただその目に宿っていたのは、剣呑も威圧も通り越して、殺伐としたものだった。

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