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リミット・オブ・ペイシェント  作者: 岡由秋重
20/82

後顧

家を出ると、玄関に黒塗りの車が1台止まっていた。

本家の方から来た大型の送迎車である。

見た目は普通の高級車だが、軍用車両並みの防弾性能を誇る。

「お迎えに上がりました。どうぞ」

運転手の出迎えを受けて、2人は車に乗り込んだ。


車で3時間ほど走った先は、山奥の巨大な邸宅だった。

邸宅の門の前で2人は車から降りた。

潜り戸から、初老の男が出てきて、2人をとりつぐ。

敷地内は広いが、無駄に広いというほどでもない。ただ、和風建築の中にあるヘリポートが異彩を放っていたが。

玄関に至って、秘書がとりついだ。

「旦那様は、奥の応接間でお待ちです」

「わかった」

靖が答えて、2人は長い廊下を進んだ。

邸宅の一番奥と言って差支えのないところにある部屋に2人は入った。

「来たか。元気そうにやっとるな」

中にいた、和服姿の老人が声をかけた。しっかりした声である。発した者の体格もよい。只見(ただみ)(あきら)である。

「お祖父(じい)様も元気そうで何よりです」

靖が返答する。

「まあそこに座りなさい」

章に指示されて、2人は、用意されていた座布団の上に正座した。

靖から用件を言うことにした。

「本日は、息子が国立第一高等学校に入学する運びとなり、その挨拶に伺いました。お祖父様におかれましては、その件につき、多大なるご援助を賜りましたことを感謝申し上げます」

「そんなに固くなるな。実際わしは何もしておらん」

芝居がかった口調で述べた靖に、章は苦笑いで応じた。

「しかしながら、提唱者の意向を無視するのは、なかなか難しいことですし…」

「まあそれは、1つの理由だな。出来の良い曾孫で、一安心したところだ。護のほうもこうなるといいのだがな」

明らかに、話がまずい方向に走り始めたので、この話をやめる方向に章が誘導し始めた。

「ところで、勇、本来のお前の仕事はどうだ、護るべきモノはわきまえているな」

「はい。()()()()()は何もないです。まあ、これからなのでしょうが」

「ならいい。ここに来たついでだ、手合わせでも久しぶりにするか。10年ぶりになるかな」

「いえ、それはまた別の機会に…」

章は、剣道を幼いころからしており、勇にも、昔は相手をしていた時期がある。そのころが、勇の一番のトラウマでもあり、曾祖父を恐れる最大の理由でもあった。

それが思い返されるのは、避けたかったのである。

「そうか、残念だな…。2人ともここまで来たんだ。今は、国会も閉会中で、護も戻ってきている。ついでだ、挨拶してきたらどうだ」

残念そうな顔をして、章は2人に暗に挨拶をしに行けと、命令したのだった。

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