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リミット・オブ・ペイシェント  作者: 岡由秋重
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春風の吹く

新入生代表挨拶も恙なく終わり、入学式も終わった。

各クラスへの移動となり、勇と翔は、1年3組の教室に移動した。

移動中、勇は、翔に聞いていなかったことを聞いた。

「お前は、省庁選択、どこを選んだんだ?」

「国防省になった」

「こっちも国防省なんだが、お前も逆指名されたか?」

「そんな感じだ」

「お前のことだから、少しぐらい圧力かけさせると思ったんだが」

「いちいち使っていたらキリがないぞ」

国が、省庁選択を指定してくるのは稀なことである。2人して、ずば抜けて相当優秀らしい。

しかし本題はそれではなかった。

「ところでさっき、俺が遅れてきたろう?」

「そうだったな」

「遅れてきたのは、実は、上級生に(つか)まっていたからなんだが…」


今から約1時間前


勇は、学校の正門のところにいた。そこで、体格のいい男子生徒に横から声をかけられた。

「1年の只見勇か?」

「ええ、そうです」

「ちょっと来てもらいたい」

「拒否すると言ったら?」

「骨が折れるな……無理やり連れていくが」

「わかりました。ついていきますよ」

連れていかれた先は、案に相違して、生徒会室だった。もっと正確に言うならば、その先にある、風紀委員会室だった。

「座れ」

連れてきた男子生徒に言われ、勇は、ドアの近くの椅子に座った。部屋の真ん中には机が置いてあり、反対側に立っている生徒に向き合う形である。

「今年度風紀委員会委員長、本庄遥です。あなたを連れてきたのは、副委員長の児玉君です。只見勇君ですね?」

「はい」

勇は、心の中で考えていた、何でここに連れてこられてきたのか、と。今まで起こした問題は、解決していたつもりであった。が、心配は、杞憂に終わった。

「国立高等学校は、通常の高校に比較して、非常に強い裁量権が生徒に与えられています。学校は、半独立国のような状態であり、予算や、活動など、ほとんどの学校運営等が生徒によって行われています。警察権も存在し、学内に置いて起こった違法行為は、学内で処理されます。その実動部隊が風紀委員会に当たります」

「すみませんが、何故自分はここに呼ばれたのでしょうか」

勇は、これ以上時間がたっていくのに耐えきれなくなり、口をはさんだ。入学式まで時間がないのである。本来ならば、もう体育館についていなければならない。

「単刀直入に言いますと、あなたに風紀委員になってほしいと考えています」

「……他に適当な人がいるのではありませんか?」

予想外の発言に、勇は言いよどんだ。いきなり風紀委員会に連れてこられて、このような話である。驚かないほうが難しい。結局、当たり障りのない返答を選んでしまった。

「風紀委員は、例年、国防軍または、国防省に所属する生徒から選ばれています。特に、普通科や、防諜部の生徒が数多く選ばれています。」

「自分は、国防省の中でも、装備開発局の人間です。最も関係ない部署のように思えるのですが」

いろいろと、問題を起こしてきている勇は、できる限りこの場から離れられるようにした。しかし、これは藪蛇だった。

「只見君、私たちがあなたについて何も知らないと思いますか?」

「……」

勇は絶句した。一番痛いところを突かれたのである。沈黙のままの勇を見て、遥は話をつづけた。

「君の父上である只見靖氏は、原子力研究機構に勤めており、研究室を受け持っていた。しかしながら、国防省に、あるレポートを提出した後、下野。そののち、他国の、諜報組織にたびたび狙われている。余程のことをしたらしいが、よくわかっていない。諜報組織に、自宅の襲撃を受けることは日常茶飯事であったため、徹底的に対策を行っていた。君にも、戦闘的なことについては、教えられているはずです。」

もう完全に呆れる他なかった。図星だったのである。もう認めるしかなかった。

「先輩がおっしゃったことはすべて事実です」

「それはよかった。実戦経験はあるのですね?」

勇は、委員長の目が少し、泳いだように見えた。

「間違えましたね。今から聞くことに気分を悪くしないでほしいのですが…。」

委員長の口調ががらりと変わった

「今まで、何人()った?」

ここまでは、さすがに閉口した。身に覚えがありすぎるのである。ここまで調べられているとは思ってもいなかった。国防省内部でも一部の人間しか知りえない情報であったためだった。

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