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リミット・オブ・ペイシェント  作者: 岡由秋重
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風吹き荒ぶ

「…君はどこからそう考えたのかね」

明石情報部長が尋ねた。

「1週間ほど前にハワイに生体兵器を2体、アメリカは移送しています」

「その件は我々も把握している。年に2回の定例の演習だ」

「ええ、それだけならばまだ良いのですが、どうやら太平洋艦隊が、燃料及び弾薬を満載しているらしいということがわかりました」

これは、情報部のほうでは掴んでいなかったらしい。

「本当か!…」

「只見一佐、その情報は、どこで手に入れたのか」

さすがに情報部の怠慢と言われる可能性のあることは無視できなかったらしい。立見統合幕僚長が助け舟を出した。

「それはお答えできません」

「では、情報の信憑性はどの程度なのか?」

「確実です」

「わかった。…明石情報部長、たった今の報告の裏付けを取って下さい」

報告が正しいかどうかの判断がつきかねたのだろう。統合幕僚長は、情報部に確認を求めた。

情報部長は、傍らの電話を取り上げて、10秒ほどでそれを切った。

「担当の者が、30分後に報告に来ます」

「よろしい。只見一佐、アメリカの件は飛ばして、生体兵器そのものの情報を説明しなさい」

「わかりました。東亜共和国の海洋型生体兵器は3体存在します。うち、1体が初期の海上型、2体が後期の海中型です。移動速度は、海上型がおよそ50ノット、海中型がおよそ60ノットと見積もられています。海洋型の生体兵器は、ご存知のように、体当たりによる船舶の破壊を目的にしています。重量がおよそ4万tほどとみられており、衝突すれば確実に沈没します。ここから先は、可能性の話になりますが、海上型は上陸及び、陸上の設置物や建築物に重大な被害を及ぼすものと考えられます」

「今まで東亜共和国が生体兵器を使用した事例があるか」

「生体兵器の存在意義は、抑止力にあります。今迄に東亜共和国が実践に使用したことはないと考えています。使用した事例は世界的に見ても、アメリカが第三次世界大戦末期に東亜共和国に対して使用したという1回だけです。その際、兵器がコントロールを外れ、暴走。我々がそれを破壊しています」

「うむ、よろしい。さて、藤枝海上幕僚長」

幕僚長などの自衛隊の機構は、国防軍にそのまま移行された。そのため、国防海軍となった今でも、陸上、海上、航空の呼び名は使われている。

「現在、南西諸島に展開している戦力はどの程度だ」

初老の男が立ち上がった。藤枝(ふじえだ)泰弘(やすひろ)海上幕僚長である。

「南西諸島方面には現在、第六艦隊及び、第七、第八潜水部隊が展開しています。現在は、吐噶喇(トカラ)列島周辺海域において、訓練を行っています。生体兵器による攻撃が行われた場合、尖閣諸島及び南西諸島の防衛は、困難です」

「中川本部長、君のほうから動かせる部隊はないか」

中川(なかがわ)正彦(まさひこ)統合幕僚監部生体兵器対策本部長。若いながら抜擢されたエリートで、立見統合幕僚長の右腕と目されている人物であることを、翔は思い浮かべていた。

「今現在動かせるのは、くさなぎ型護衛艦の『とつか』、かいりゅう型潜水艦の『こうりゅう』および、『せいりゅう』です」

少し考え込んだ後、立見統合幕僚長は口を開いた。

「わかった、『とつか』と『こうりゅう』を東シナ海へ移動。『せいりゅう』は、対馬で指令を待機させよう。異議のある者はいないか?」

この場にいたもの全員が頷いた。

その時、会議室の扉がノックされた。

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