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リミット・オブ・ペイシェント  作者: 岡由秋重
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鴻鵠の志

勇が家にたどり着いたのは、それから更に1時間後だった。

「ただいま」

「おお、帰ったか」

家では、父の(やすし)が待っていた。靖は極限環境微生物の放射線環境の影響を研究し、国立原子力研究開発機構に長年勤めていたが、数年前に退職。現在は家で研究や、機械工作に(いそ)しんでいる。もっともろくなものを作ったためしがないが。腕が確かであることが惜しまれる。

「母さんから何か連絡とかはなかったですか」

勇は荷物をソファの上に投げ出しながら尋ねた。

母の理枝(りえ)は爬虫類学者で、研究のために、6年以上前から海外で、研究活動をしていた。

「中米のジャングルの中だ。連絡を取ろうにも衛星電話すら持っていないからな…。持っていると研究の邪魔になるらしいしな…。手紙が一週間前に着ただろうが」

靖が椅子から立ち上がりキッチンに行く。

「1ヶ月前に出された手紙でしたけどね…」

「…それより、どうだった?高校は」

夕飯の味噌汁をつぎながら靖は尋ねた。

「この家のことも結構知られているようでしたよ。ごく一部ですが、軍の情報部には嗅ぎつけられていました」

「それはいいさ。何せすべての原因は婆さんだからな…」

そして、ご飯と一緒に、テーブルの上に置いた

「父さんにも少し責任があるとは思わないのか?」

昔の話を勇は蒸し返すことにした。十年前のあの微生物の発見さえなければというのは、家族がみな思っていた。

「少し後悔はしているぞ。あの時、ケースの存在を忘れていなければなあとは思っている。忘れずに一ヶ月前に回収しさえしていれば、あんな生物は、二度と見つからなかっただろう」

完全に気にかけている様子はなかった。

「…もういいです。…それは置いておくとして仕事のほうもあるのでこれからは忙しくなりそうです。そういえば風紀委員会というものに勧誘されました」

2人は早めの夕飯をとりはじめた。

それから、黙々と食べ始めて2分ほどたったころ、靖が口を開いた。

「なんだそれは?」

唐突すぎて、勇には一瞬何のことかわからなかった。

「…早い話学校の警察ですよ。ほとんど機動隊レベルの実力がありますが」

「何でまたそんなものにお前が勧誘されているんだ?」

「その委員長というのが、情報部の人間だったんですよ。おかげで学生生活ぐらい平凡に過ごせそうなのがおじゃんです」

「人生万事塞翁が馬といったところか」

「…父さんがそれを言いますか」

「まあな。まあ情報部には逆らわんほうがいい。古今東西みな言っている」

「恐ろしいところですからね…」

「そういうことだ。まあ頑張ることだな。ところで、内情(内閣情報調査局)のほうはどうだった?」

「役にはたちそうですね。アクセス権も上がりましたし」

「ならいいな。明日は予定は何もないか」

「はい」

「じゃあ、祖父さんのところにでも挨拶に行くか」

「…そうですね」

「まあ、仕事のほうも頑張れよ。手伝えることがあったらしてもいいぞ」

「いくら父さんでも、特定機密保護法違反で逮捕されるぞ?」

「冗談だ。あと約束のものがあるから後で私の部屋に来なさい」

「分かりました」

夕飯はあっという間に食べ終わった。

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