九ノ瀬兄が頑張る非日常
昨夜夜遅くまでこれまであったことを話しながら泣きじゃくっていた所為か普通なら登校する時間にも関わらず寝ているあやめ。
僕はというとそんな妹の為に普段起きない時間に眠気と戦いながら起きている。
今日はいつもより1時間遅く来るように先輩達に言ってあるため充分に時間はある。
家中にチャイム音が響いた。さあ、珍しく兄として動いてみようじゃないか。
玄関ドアを開けるといたのはあやめの担任と思われる男。
僕を見るや顔つきが一変した。
「どうも初めまして、あやめさんの担任の鶴屋と申します。あやめさんにお話しがあるので呼んでいただけますか?」
ああ、コイツ僕の嫌いなタイプの人間だ。
「妹ならどっかの誰かに強制的に学校に連れていかれている所為で今部屋に引き籠ってます。
すみませんが僕とお話しませんか、先生。」
僕は取り敢えず鶴屋をリビングに連れて行き、コーヒーを出した。
「まずはですね、妹にやった事を全て認めていただきたい。」
「あやめさんにしたこと?僕がですか?そんなの、証拠も無いのに勝手に言わないでいただきたいです。」
「逆に問いますけどあなたの言う事が全て事実という証拠はありますか。」
"やりにくい"とでも感じたのか少し眉間に皺を寄せた鶴屋。
ここからが本番だ、僕がへましたら全てひっくり返されてしまう。
「車内での暴言、学校でのセクハラ、点数の捏造、他生徒との差別、他にも色々ありますが面倒なのでこのくらいにしておきます。」
「先ほども言いましたが証拠はあるんですか?あやめさんが嘘を吐いているとは考えないんですか?」
残念ながらこっちは人生のほとんどをあやめと過ごしてるんだ、たった数ヶ月のお前なんかと一緒にされては困る。
「あやめはバカだから嘘の吐き方を知らないんですよ、そんなこと言っても証拠にはならないのでこんなものを用意したわけですけど。」
そう言って僕が取り出したのは僕が昔使っていたボイスレコーダーだった。
ちなみに今現在このボイスレコーダーはあやめに持たせている。
ボイスレコーダーの再生ボタンを押せば証拠には充分な程の録音が流れた。
「これを聞いても証拠不充分と言いますかね、先生?」
悔しそうな顔をして立ち上がろうとする先生を止めて僕は経験も含めた話を始めた。
「僕もそうですけど学校に馴染めない人っていっぱいいるんですよ、原因はそれぞれですけどあやめの場合は小学校の時にあった出来事が原因です。
話す義務が無いので話しませんけど、心に傷を負っている生徒を更に傷つけたところであなたが楽しいだけですよ。
無理矢理連れて行かれた教室で陰口を言われて、学校に味方がいないあやめがこの先自殺をしてもあなたは平謝りするだけだろうから言っておきます。
あんたに教師の資格があると思うな、あんたみたいなのがいるから僕達みたいに苦しむ人が増えるんだよ。
この先教師を辞めることになっても当然の報いだと諦めて大人しく辞めてくださいね、人生諦めが必要なんだから。」
憤慨して僕に襲い掛かってきた鶴屋は、見慣れた影によって床に押し付けられた。
「夏月先輩…なんで…」
「手錠なんて初めてはめます~。」
「京先輩いいなぁ~、反対私にやらせてくださいね?」
「朱雀先輩に水橋先輩…それに高月まで…みんななんで…」
本当ならもっと遅くに来るはずのみんなが勢揃いしていた。
朔先輩はあやめにもう大丈夫だという事を言いに行ったらしい。
「朔が珍しく心配してたからいつもより早めに来てみれば案の定だ、ボディーガードくらいつけとけバカ。」
「すみません、流石に常識ある大人だと買い被り過ぎてたようです。」
夏月先輩はそのまま外に出て鶴屋をどこかに連れて行った、ボイスレコーダーも持っていかれたから恐らく交番だろう。
「お兄ちゃんっ!!」
泣きそうな顔をしてあやめが抱き着いてきた。
何年振りだろうか、こんな妹。
「ありがとう…っ。」
「別に、兄としての義務を全うしただけ。」
その後あやめは学校を休んで、僕は流れで休もうとしたら見事に連行された。
学校で何故か褒めちぎられたれたから少しだけ恥ずかしかったことをあやめに言うと笑われた(爆笑された)ので取り敢えず殴っておいた。